こまつ座 第九十四回公演・紀伊國屋書店提携
『父と暮せば』
8月20日(土)
14時~
14列8番
紀伊國屋サザンシアターにて
■おことわり
最近、スランプなのか(←作家でもないのにアホか。( ´艸`)ププッ)全然気の利いた観劇記が書けません。
『父と暮せば』のような作品でおちゃらけ文を書くのも不謹慎だし、もとより書く気はありません。
そこで、苦肉の策として2010年に書いた観劇記を掲載させていただくことにしました。
ルール違反ではありますが、どうかご容赦下さいませ
原爆投下から3年後の広島。
図書館に勤める福吉美津江は23歳。被爆者である。
真面目で一本気な性格ゆえ、自分が生き残ったことを責め恥じてひっそりと暮らしている。
そんな美津江の姿を見かねて父・竹造は積極的に人間らしく女性らしく生きることを諭すが、彼女の心は頑なまま。
そんなとき、美津江はひとりの青年に出会う。
淡い恋心を抱くも諦めようとする美津江に竹造は・・・。
辻萬長さんと栗田桃子さんの二人芝居。
濃密な空間の中、一組の親子の哀しくも愛情溢れる物語が語られる。
恋愛どころか生きていること自体が罪だと自分を責める美津江の姿が痛々しくて切なくて、私は思わず顔を覆ってしまった。
父を見捨てて逃げなければならない辛さ、悔しさはいかばかりだったろう。
想像するだけで胸が痛い。
でも、人間は生きなければならない。
ましてや、あの原爆の中を生き残った人間は生きてその悲劇を伝えなければならない。
生かされていることはそれだけで意味があることなのだから。
劇中では父がそのことを美津江に訴える。彼女が生きて幸せを掴むために懸命に訴える。
死してもなお、父は美津江に諭すのだ。ここに私(たち)は親子の、いや、人間の深い愛情と責任を見るのである。
それにしても、辻さんと栗田さんの演技は素晴らしい!
観客はお二人の一言一句を聞き逃さないように、一挙手一投足を見逃さないようにまばたきもせず舞台を見つめている。
緊迫したシーンでは息を呑み、和やかな場面ではほっこりし、舞台上の親子を見守っている。
久しぶりに客席と演者の一体感を肌で感じた舞台だった。
*(注)劇中では竹造は既に亡くなっており、幽霊として登場しています。