浪曲映画祭─情念の美学2020 | みつ梅の古今東西かべ新聞

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浪曲、歌舞伎を中心に観劇の感想を書かせて頂いております。
拙い文で恐縮ですが、よろしくお願い申しあげます。


浪曲映画祭─情念の美学2020
◎6月27日(土)・12:15 開映
●於、ユーロスペース(ユーロライブ)

浪曲師伝説─二代目天中軒雲月(伊丹秀子)

映画上映
『母の瞳』
●1953年・大映作品
モノクロ・スタンダードサイズ、87分。
監督…安田公義
原作・脚本…八住利雄
浪曲構成…萩原四朗
撮影…秋野友宏
美術…柴田篤二
音楽…大久保徳二郎
主題歌…菊池章子
録音…渡辺利一
照明…柴田恒吉

出演者
三益愛子
入江たか子
伊丹秀子
松島トモ子
見明凡太朗
藤原釜足
橘喜久子
上田吉二郎
大泉滉
星ひかる
伏見和子
丸山修
高品格
加原武門
南田洋子
小山内淳

浪曲口演
『男の花道』
浜乃一舟、曲師…沢村美舟

鼎談「伊丹秀子の記憶」
浜乃一舟(伊丹秀敏)、玉川奈々福

主催:ユーロスペース
企画:ユーロスペース+シネマ5
企画監修:玉川奈々福

昨年に続き、今年も開催をされたユーロスペースの浪曲映画祭。昨年は都合で行けず、周りの大好評の声を聞く度に行けなかったことを後悔をし、今年こそはと馳せ参じました。

どれも魅力的なプログラムで、全部の回に行きたいぐらいでしたが、伊丹秀子特集で三益愛子の母物映画と天中軒雲月先生の浪曲の実演の回を選びました。あいにく雲月先生が体調不良で休演され、伊丹秀子先生のお弟子さんの浜乃一舟師匠が代演されました。雲月先生の休演は残念ですが、一舟師匠の浪曲もまた良かったです。

子供の頃から映画が好きで、古今東西の映画を見ておりますが、三益愛子の母物映画は数十年振りに見ることになりました。
初めての『母の瞳』ですが、今見ても良い映画で、一世を風靡したのもわかります。
三益愛子演じる主人公のおさよが、サーカスの空中ブランコの芸人という設定で、今では見られなくなったサーカスの旅回り一座の様子が興味深いです。
盲目の娘たま子を巡る育ての母おさよと産みの母美津子との対決と、娘の幸せとお互いの心を思いあう所に泣かされます。美津子を演じる入江たか子の演技も良いです。影のある女をやらせたら上手いです。
たま子を演じる名子役の松島トモ子も上手く、僕らの世代では、ミネラル麦茶のCMやライオンに襲われたイメージが強いので、こういう時代もあったかと驚きました。
おさよの亭主三吉を演じた見明凡太郎、座長の藤原釜足、悪親分の上田吉二郎、道化役の大泉滉と脇役も公演を見せている。
おさよの親友という設定で、伊丹秀子が本人役で出演。浪曲とは違う押さえた演技を見せています。
ドラマの盛り上がる所で、伊丹先生の名調子と菊池章子の主題歌が入り、坪を押さえた職人安田公義の演出も良いです。
伊丹秀子が亡き親友おさよを想うという構成も良くて、八住利雄の筆が冴えています。
今では浪曲映画も過去の物となってしまいましたが、今見てもおもしろく再評価されるべきと思います。

浜乃一舟師匠の浪曲は、『男の花道』を沢村美舟さんの三味線で読まれましたが、名優中村歌右衛門と名医土生玄碩の友情を名調子で高らかに歌い上げ、客席を感動に包みました。

玉川奈々福師匠と浜乃一舟師匠の対談では、伊丹秀子先生のエピソードが聞けて興味深かったです。

映画と浪曲の実演、浪曲の全盛期のような番組に昭和にタイムスリップしたような気分になりました。
このような素晴らしい企画をなさった主催者の方に感謝です。