武智鉄二監督『紅閨夢』 | みつ梅の古今東西かべ新聞

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浪曲、歌舞伎を中心に観劇の感想を書かせて頂いております。
拙い文で恐縮ですが、よろしくお願い申しあげます。


『紅閨夢』(こうけいむ)
◎1964年、第三プロダクション作品。配給…松竹。
◆パートカラー、シネマスコープサイズ、74分。
●企画・監督・脚本…武智鉄二
●原作…谷崎潤一郎「過酸化マンガン水の夢」
●製作…長島豊次郎、池俊行
●撮影…稲葉直、●音楽…芝祐久、●美術…平高主計、●編集…金子半三郎
●振付…川口秀子、●録音…アオイスタジオ、●スチル…武智俊郎、●照明…大住慶次郎、他。
●出演
柳美那
葵千代
茂山千之丞
後藤陽吉
奈良真養
花川蝶十郎
川口秀延
アンジェラ・浅丘
五月美沙
葵三代
花柳春
K水町
小浜奈々子
川口秀一郎
土方巽
川口秀子(特別出演)

久々に武智鉄二の『紅閨夢』を見ました。
テンポがゆっくりな退屈な長回し、のんびりと台詞回しに最初はイライラしますが、慣れて来ますとおおらかな気持ちになります。

僕が大好きな狂言師の茂山千之丞さんが主人公を怪演されております。武智鉄二と親交があった千之丞さんはこの作品の他に『源氏物語』、『浮世絵残酷物語』にも出演され、怪演を見せておられます。
谷崎潤一郎を思わせるメイクで挙動不審な芝居が見ていて楽しいです。

武智鉄二が取り組んだ前衛舞踊やヌード能も登場し、また夫人であった川口秀子さんも出演され、武智鉄二の世界が全開なのも見所と思います。
舞踊に暗黒舞踏の祖である土方巽さんが出演しているのも興味深いです。

主人公と奥さん、その妹がよく食べること。昼は中華料理をたらふく食べ、夜は鱧や鮎など上方の料理に舌鼓をうちます。食事のシーンがえらい長回しなのですが、武智鉄二のペースに慣れたのか見ていて飽きませんでした。
千之丞さんが喫茶店で三色アイスを食べる場面はワンシーンワンカットで、おかわりまでしているので凄いなと思いました。

この映画の売りであるヌードやエロティックなシーンより、主人公一家の食事シーンや当時の街並みの描写の方が見ていて興味がありました。

武智鉄二の映画は退屈、つまらないという評価がありますが、伝統芸能と同じく見続ければおもしろくなります。しかし、『日本の夜 女女女物語』『白日夢』『黒い雪』『浮世絵残酷物語』『華魁』は死ぬほど退屈に感じ、まだそのおもしろさを理解出来るまで行っておりません。

武智鉄二も歌舞伎を始め古典芸能を私財を投じて守り育てるなど偉大な業績があり、とても尊敬しておりますが、世間一般的にはエロ映画の人で終わっているのが残念です。