羽仁進監督『初恋地獄篇』 | みつ梅の古今東西かべ新聞

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浪曲、歌舞伎を中心に観劇の感想を書かせて頂いております。
拙い文で恐縮ですが、よろしくお願い申しあげます。


『初恋地獄篇』
◎1968年羽仁プロ+日本ATG作品。配給…日本ATG
■パートカラー、スタンダードサイズ、108分。
監督 …羽仁進
脚本 …寺山修司、羽仁進
製作 …藤井知至
撮影 …奥村祐治
録音 …久保田幸雄
照明 …鎌田勉
編集 …羽仁進
スチル…沢渡朔
高橋章夫
石井くに子
満井幸治
福田和子
宮戸美佐子
湯浅実
額村貴美子
木村一郎
支那虎
浅野春男
スージー・トランブル
安西愛子
安念むつ子
上島チズ子
松島フジ子
島田幸子
島田こずえ
宮原紀幸
協力…宇野亜喜良、金子国義、武満徹、矢代秋雄、TBS、天井桟敷、他

高校生の頃にガールフレンドと見た思い出の作品です。手さえ握らない清い関係の方でした(笑)
スクリーンで見るのは初めてですが、今見ても古さを感じさせない映像美とモノクロの美しさに感動しました。どんなに技術が発達し、映像が綺麗になっても映画館のスクリーンでフィルムで見る感動には敵わないと思いました。

共同脚本の寺山修司の大ファンで、高校生の頃に見た時は寺山らしいエピソードも織り込まれていると思いましたが、羽仁進監督のトークショーに行かれた方のお話を伺いましたら、寺山は脚本に一切関わっていないそうで、プロットを読んで絶賛したのと撮影を見に来たぐらいとの話にそれもまた寺山らしいと微笑ましく思いました。

ヒロインが想いを寄せる中年の紳士で名優湯浅実さんが出ていて、若い頃から渋い方だったと感じました。

歌謡曲や浪曲、本編とは関係ない街の人の話し声を流したりと細かい所まで目が光る羽仁監督の演出に脱帽です。

ヒロインの友人が作る八ミリ映画の部分だけカラーであり、初めて見た時に色がついていると驚いたのを思い出しました。青年の実らぬ初恋を描いたセンチメンタルな内容で、カラーにすることで本編のドキュメントタッチと対照を出し、現実と理想が描き別れているようでした。

主人公の青年がヒロインを文字通り命がけで守るラストは悲しいながらも美しく強い衝撃を受けました。初恋とは大部分の人が儚く終わるものなのだろうななどと思いながら席を立ちました。