東家一太郎雷門会4/21 | みつ梅の古今東西かべ新聞

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浪曲、歌舞伎を中心に観劇の感想を書かせて頂いております。
拙い文で恐縮ですが、よろしくお願い申しあげます。


「東家一太郎雷門会」
~シーズン5~
◎2017年4月21日(金)・19:00開演。
◆於、日本浪曲協会広間。

『銚子五郎蔵』
東家一太郎、曲師…馬越ノリ子
『野狐三次・大井川の義侠』
東家一太郎、曲師…東家美
※終演後、茶話会あり。

隔月で開催をされている若手浪曲師東家一太郎さんの『雷門会』。一太郎さんが『雷門会』をスタートされてから5年目となり、一回一回に掛ける意気込みが一層強くなっているのを伺えます。

今回は『銚子五郎蔵』と『野狐三次』という師である東家浦太郎師匠の十八番であり、東家の御家芸に挑まれましたが、これが抜群に良かったです。


『銚子五郎蔵』は五郎蔵と芝居を巡るいざこざから対立することになった那古の初五郎との出会いの場を読まれましたが、九十九里での対面の描写に圧倒されました。
子供の頃に家族と一緒に九十九里に旅行したことがあります。九十九里を訪れたのはその一度きりですが、どこまでも続く砂浜と青い海が深く心に刻まれております。一太郎さんの芸と馬越ノリ子さんの三味線が舞台に九十九里を鮮やかに浮かび上がらせ、物語に奥行きを出しました。これは節、台本を読み込まれる力、所作、三味線が一体となられた賜物です。
五郎蔵と初五郎の演じ訳も上手く、実は二人が兄弟とわかる所も予定調和を排し、そうだったのかと聴く者に感動を与えました。


『野狐三次』は上方に養父磯五郎を探しに向かう三次が大井川で三代目尾上菊五郎の難儀を救う件を読まれました。
茶屋での三次と菊五郎の出会いから、大井川の渡し場で川越人足達に困らせられている所を助ける所など、人物の描写が生き生きとしており大変良かったです。
菊五郎が座頭の役者の貫禄を意識して描写しており、細かい考証に目が行き届いているのも素晴らしいです。
茶屋の女中さんが錦絵で見た菊五郎に一目惚れをし、恋い焦がれていたら、実物の菊五郎とあまりに違うのでショックを受けるエピソードはほのぼのとした笑いに包まれ、一服の清涼剤となりました。
一番の山場となる大井川の渡し場での大立回りは気を吐かれ、往年の阪妻の映画を見るようでした。
東家美さんが三味線がこれまた素晴らしく、物語に彩りと深みを付けておられ、名伴奏でした。あくまでも浪曲師が主役とわきまえており、その上で持ち味を出しておられますので、強く印象に残ります。
以上のことから、今回はとても良い会と思いました。


7月には芸能生活十周年の記念公演を控えられ、師匠からの芸の継承や新しい浪曲を作ることに力を入れておられ、頼もしい限りです。
これからも益々の飛躍をご期待致します。