中島貞夫監督「セックスドキュメントシリーズ」 | みつ梅の古今東西かべ新聞

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浪曲、歌舞伎を中心に観劇の感想を書かせて頂いております。
拙い文で恐縮ですが、よろしくお願い申しあげます。


池袋の新文芸坐で開催中の「祝80歳&監督生活50周年 遊撃の美学 映画監督中島貞夫映画祭」で、封切り以来長い間上映されていない異色ドキュメントを鑑賞致しました。

—上映プログラム—

『セックスドキュメント 性倒錯の世界』
◎1971年、東映京都作品。カラー・シネマスコープサイズ。
監督…中島貞夫
構成脚本…中島貞夫/掛札昌裕/金子武郎/関本郁夫、企画…天尾完次、撮影…増田敏雄、音楽制作…荒木一郎、音楽…グループM、ナレーター…西村晃、他。

『セックスドキュメント エロスの女王』
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◎1973年、東映京都作品。カラー・シネマスコープサイズ。
監督…中島貞夫
構成…金子武郎/中島貞夫、企画…天尾完次/三村敬三、撮影…赤塚滋、音楽…荒木一郎、ナレーター…金子信雄、他。

タイトルはエロティシズムを全面に押し出したあまり口に出せない物ですが、内容は大まじめな人間ドラマでした。

『性倒錯の世界』では画一化されつつある現代において個性的に生きるとは?との問い掛けがあり、また同性愛、サディズム、マゾヒズムを通してマイノリティについての問題が描かれています。

興味本意的なサービスカットは退屈しましたが東郷健さんの日常の取材と性転換第一号の銀座ローズさん夫婦が東京から旭川への帰郷を密着取材は面白かったです。

人と違う生き方をするということは偏見との戦いでもあり、永遠のテーマと感じました。

『エロスの女王』では性を商売にする人達の姿を追っており、小沢昭一先生の本でも紹介された残酷ショーで旅回りを続けるローズ秋山夫妻と100人のヌードモデルを指揮する火石利男さんが特に印象的でした。
御自身の仕事に命を懸けていて、誇りを持っておられる所に感動し、自分もどんな仕事であろうとプロフェッショナルに取り組もうと反省致しました。

ナレーションをそれぞれ西村晃さんと金子信雄さんが担当されていますが、品の良い語りで新劇の匂いがしました。

両作品とも荒木一郎さんの音楽が格好良く、しびれました。映画音楽でも才能を発揮されております。中島貞夫監督は音楽の使い方がとても上手いと思います。ドキュメント第一段の『にっぽん'69 セックス猟奇地帯』でも八木正生さんのジャズが格好良かったと思い出しました。

この映画で取材された人達はその後どうなったのであろうかと気になります。
ローズ秋山夫妻は今もお元気なのでしょうか?
いろいろと考えさせられた優れたドキュメントでした。