弥勒世 | Karte

Karte

日々の食生活と たまの映画 そしてスローペースな読書


奄美出身でありコザの英字新聞社で記者をしている伊波尚友は、CIAの局員から反戦活動に関するスパイ活動を迫られ承諾
情報を集めながらも、同じ施設で育った照屋仁美と再会、と同時に比嘉政信がヤクザのマルコウと準備を進めている "ある計画" を知り賛同、行動を共にすることになる

返還前の揺れる60年後半~70年までの沖縄が舞台
ベトナム戦争下、出撃基地となったコザの街は外国人による犯罪や事故が多発、基地内では毒ガス漏れ...地元住民の不安や不満が燻り、遂に "コザ暴動" へと発展しまう
フィクションの犯罪を用いて沖縄の悲劇の歴史に迫る

読み応えある上下巻1,200頁の中身は濃く、当時のうちなんちゅーの混沌とした気持ち、街の雰囲気のリアルさは取材と資料、費やした時間の多さが窺える
書名の『弥勒世(みるくゆー)』とは "神々に祝福された豊穣の世界" という意味の沖縄の言葉
その3文字は基地のフェンスを想像させる表紙のように手が届かないのか!?

弥勒世 上・下(小学館・08/02)★★★★☆