プロ野球球団はいま、地域密着化が進んでいる。


ファンの地元意識を刺激して熱量を上げ、「おらが村のチーム」として寵愛してもらおうという構図だ。近年では楽天ソフトバンク日ハム 、古いところでは阪神 もその例といえよう。

さてそこで、我が埼玉にフランチャイズを置く埼玉西武ライオンズ について考えてみたい。


行雲流水
結論から言ってしまうと、まぁ~これがビックリするほど地域に根付いていない。

埼玉県民の中に、ライオンズを「おらが村のチーム」という意識でとらえている人は極めて少ないと断言できる。

もっと言えば、所沢市民にさえその意識は定着しておらず、〈ライオンズ⇔所沢市〉の一体感は皆無に等しい。

これには背景があって、チーム名に「所沢」を冠せず「埼玉西武」としたことが、市民のチーム愛に水を差したと見る向きもあるようだ。


この寒々しい実情の原因、それは「西武」にあると思う。

そして唯一の解決策は「大宮 に拠点を移す」こと。

これ以外に道はない。

西武は所沢に線路を敷き、マンションを建て、遊園地をつくり、プロ野球チームを招致した。高度成長からバブルの波に乗って、所沢を「西武の街」に仕立て上げようと目論見んだ。

しかし、様々なトラブルや不祥事で業績は悪化の一途をたどる。スキー場は潰れ、デパートは倒産し、ホッケーチームは消滅した。

90年代以降、西武グループには誰の目にも明らかな斜陽が差し込んだ。

一方、JRが注力する浦和・大宮を中心としたさいたま新都心エリアの発達には目を見張るものがある。

埼玉の中心はあくまで浦和・大宮だとばかりに、駅を新設、路線を増設。周囲にはさいたまスーパーアリーナ等の「箱」も次々と建設され、首都高速も伸びてきた。


元々大宮は新幹線が乗り入れる駅であるから、アクセスは抜群に良い。

もちろん、プロ野球の規定を満たす球場もある。23年前から夏にはライオンズが主催試合をする大宮公園球場 だ。

逆に西武ドームは、埼玉県民にとってアクセスがあまりにも悪い。ボクなどは東京ドームからの方が早く帰宅できるくらいだ。

大宮に拠点を移せば、アクセスがよいから選手も移動が楽。ファンも足を運びやすい。周囲にはホテルや商業施設も多いので、経済効果も見込めるだろう。

何より、ファンになり得る人口の埋蔵量が違う。所沢市の人口は34万人、対するさいたま市は120万人を超える日本屈指の大都市である。

浦和レッズ はよい成功例だ。

あの真っ赤に染まる埼玉スタジアムは、Jリーグでもダントツと言われるサポーター力の象徴である。ライオンズだってさいたま市に根付けば、市民の愛は惜しみなく注がれ、球場をライオンズブルーに染めることだろう。


西武グループに、ライオンズを売却しろとは言わない。ただ、所沢に閉じ込めるのだけはもうやめてくれないか。

「埼玉西武」と冠するなら、埼玉県民・さいたま市市民が最も楽しめる舞台を用意してはくれないか。

過去、ライオンズはたくさんのスター選手を生み出してきた。清原・秋山・松坂・菊池・中村などなど、数えあげればキリがない。

「近代野球最強」、といわれる強さを誇った時代もあった。

そういうエキサイティングな喜びを「おらが村のチーム」という感覚で享受したい。

そう思う埼玉県民は、きっとボクだけではないはずだ。


行雲流水