行雲流水-遼真


遼真は4月からの転園が認められ、寛大と同じ保育園に行けることになった。
今日が今の保育園へのラスト登園だ。


市長殿への願いが通じたボクたち親は「ヨカッタヨカッタ」と万歳三唱。
「よかったねぇ」と遼真を抱き上げたが、遼真は「やーだよー」と顔をそむけた。

2歳児特有の流行り文句「ヤダヤダ節」がここでも出たかと思ったが、考えてみれば、遼真にしてみれば当然の反応かと思い直した。

ようやく慣れた保育園、仲良くなった先生や人生初めての友達、
どこまで遼真の記憶に焼き付いているかはわからないが、親の都合でそれらと別れさせられ、また新しい社会に突然放り込まれる。
そんな事態を、遼真は強いられるのだ。

そりゃ「イヤ」に決まっている。


これから先も、ボクら親の都合で子供を振り回すこともあるだろう。それは避けられない。

でもそんなとき、子の感情の動きにも思いを巡らせる、そんな心のゆとりを持っていたい。

自分を戒め、「よし!遼真、今日はパパとお風呂に入るかっ!」と頭をなでると、遼真は「やーだよー」と言ってスタコラ逃げていった。