先日、「モテそう」と「モテる」の相違には意外と奥深い味わいがあると書きましたが、今日は「臭そう」と「臭い」について検討してみたいと思います。
・mitsuruさんって臭そうだよねー
・mitsuruさんって臭いよねー
どちらも一撃必殺の破壊力を持つ、言われたらしばらく立ち直れないフレーズランキング上位に間違いなく入ってくるであろう恐るべき言葉です。しかしどちらの指摘を受けたときの方が、問題はより深刻なのでしょうか?
数学的に考察してみます。
臭い=χ とします。このとき
臭そう≒χ となるので、つまり
臭そう≠χ ということになります。
すなわちここで証明されるのは「臭そう」とは同時に「臭くはない」の意味を内包する、ということです。
かえって分かりにくくなってしまったおそれがあるので、もう少し身近なケースに例を置き換えてみますと、
誰かが「mitsuruさんってモックンに似てるよねー」と言ったとき、それは同時に「mitsuruさんってモックンではないよねー」という意味を含んでいる、ということです。「モックンとmitsuruさんは別人だ」という証明ですね。
ではこの点を踏まえ、改めて「臭い・臭そう」問題を考えてみましょう。
「臭い」と言われたとき、そこには周囲にそう思わせるだけの原因なり根拠があるはずです。だからその根元を消去しさえすれば問題は解決する。風呂に入る・服を着替える・ガムを噛む等々、原因に応じた対処法はいくらでもあることでしょう。
一方、「臭そう」と言われたとき、問題は極めて深刻です。「臭そう=臭くはない」ので、一見軽症のような気がしますが、逆にいうとつまりは原因がはっきりしていない状態。対処も格段に難しくなります。ありとあらゆる見地から多角的な原因究明が必要になるでしょう。仮に原因を突き止めて対策を打ったとしても、「臭そう」は「実感」でなくあくまで「印象」ですから、それをくつがえすのは至難の技だと言わねばなりません。
従って、誰かに「臭っ!」と言われたときよりも「臭そう~」と言われたときに、より大きなショックを受けるべきです。
そして逆に誰かを効果的に傷つけたいなら、ぜひ確定された要素を含まない印象派の表現を用いましょう。
「貧乏だよね」でなく「何か貧乏くさいよね」。
「鼻毛出てるよ」でなく「鼻毛出てそうな顔だよね」。
そこには想像力の入りこむ余地がある分、相手をより深い負の妄想地獄に陥れることができるでしょう。
完成度の高いCMやプレゼンテーションは、全てを説明しない、と言います。相手に興味を抱かせるように与える情報量をコントロールし、想像力をふくらませてやるわけです。これと同じ理屈ですね。
はい、では今日の検討発表会はここまでにします。
ご失笑ありがとうございましたm(_ _ )m