昨夜の日本テレビ、有吉佐和子「恍惚の人」を観た。

著書の有名さとボケ老人 役を演じる三國連太郎が、夜の貴重な2時間の投資を決意させた。

しかし、感想は「ガッカリ」の一言に尽きる。最初から最後までマジメにちゃんと観たが、妻と二人でやり場のない脱力感に包まれ、しばし言葉を失った。貴重な2時間を返せ。


話の要旨は単純。

「ボケ老人に振り回される家族の苦悩と絆」だ。

ありがちと言えばありがちなテーマだが、あの有吉佐和子の名作をドラマ化するのだから、何かあるのだろうと期待していた。

しかしフタを開けてみれば、まぁひどいもんだった。

ディケア行かせねぇは、ヘルパー断るは、嫁(竹下景子)に世話押し付けて夫(三宅裕司)は介護に参加しないはで、家族は崩壊状態。現代社会が作った老人福祉を片っ端から拒否する典型的な自滅パターンだ。

挙げ句に特別養護老人ホームの空きまで蹴ってしまう始末。しかもこの場面、「老人ホームに預けるなんてひどい!家族の絆の方が大切よ!」みたいな描き方なんだなぁ。後述するが、いつの時代の発想だよ、と。

とにかく老人ホームの話を切ってしまって、さぁいよいよどうすんだ!?って矢先。

何とじーさん風邪をこじらせて死んじまった!

「お世話になったね…」なんて取ってつけたような言葉を残して。都合良すぎだろオイ。

そんで家族は何となくハッピーエンドみたいな雰囲気になっちゃって、「うそっ?」とか思っているうちにエンドロールが流れはじめちゃう。

えーーーっ!

なんじゃあそりゃ!!


そう。結局このドラマ、何にも描いてないんだ。

何のメッセージもないの。何にも解決してないの。「ボケはイヤだね」本当にそれだけなんだ。

有吉佐和子がこの「恍惚の人」を書いた時代と今とでは、老人介護に対する世間の認識も社会の仕組みもまるで違う。それはわかる。でもだからこそ、この物語を現代でドラマ化する意味があったはずじゃないのか?

いや、そもそも有吉佐和子とはこの程度の作家だったってことか?結局「恍惚の人」も、痴呆症という当時まだデリケートだった問題を扱ったというセンセーショナルさだけが売りの本だったのか?原作を読んでないので不明だが、今回のドラマはそう思わせるに十分なガッカリ加減だった。

だってさ、今後加速的に進む少子高齢化社会で、もうディケアや特養のような老人介護施設を否定的にとらえたりしてる場合じゃないでしょ。例えば特養に年寄りを預ける家族は、家族の絆を大切にしない人逹なわけ?今回のドラマではそんな風に描写されてたけど、そんなの全然違うよ。恐ろしく時代遅れな発想だ。

自宅介護における共倒れとか廃用とか不衛生とか虐待とかさ…。その辺りに考えを巡らせれば、家に置いておくことがイコール絆を大切にするってことじゃないことに気付くはずでしょう。


しかし、三國連太郎は本当に芝居がうまい。見事。この人も日本の宝だなぁ。