認知症の人をかかえる家族って、本当に大変だと思う。ひと口に認知症といっても質や程度は様々だけど、いわゆる介護にかかる肉体的な負担より、精神的な苦労の方がはるかに大きいだろうと察する。

アルツハイマー型しかり老人性しかり、中等度以上の認知症患者は基本的にワガママになる。前頭葉の抑制が効かなくなるためか、社会性という概念は消滅し、本能と欲求がムキ出しになる。加えて、卑屈になったり被害妄想にとらわれたり攻撃的になったりする。
そして何より学習することができないから、周囲の人が矯正・教育していくのは極めて困難だ。
結果、家族は振り回される。

介護者の精神的ストレスについて考えたとき、キーワードになるのは「第3者の目」ではないだろうか?


ハチャメチャな言動を繰り返す認知症患者に、優しく柔らかく誠実に接すること。

3分間だけなら誰でもできる。

接するのがその時限りなら、1時間くらいは「うんうん」と正面から受けとめることもできるだろう。
しかし、生活を共にしている家族は違う。場合によっては24時間、そしていつまで続くのかもわからない。その状況の中で、優しや誠実さを維持し続けることは並大抵のことではない。つっけんどんになったり、ぞんざいな対応をしてしまったり、時には声を荒げてしまうことだってあるだろう。本当に仕方のないことだと思う.そしてその一面だけを見た刹那の第3者から、「冷たいわねぇ、ひどいわねぇ、虐待でもしてるんじゃないかしら?」的な目線を向けられたとき、介護者のストレスは頂点に達する、とボクは思う。


認知症患者を差別する気は毛頭ない。なりたくてなる人などいないわけだし。

しかしその人を介護している側の多大なストレスにも、もっと目を向けてあげて欲しい。

計り知れない苦労を抱えているのだろうと、察してあげて欲しい。

第3者だからこそできるほんの一瞬だけの上っ面な善意で、介護者を責めるような目線を向けるのはどうかやめてあげて欲しい。


刹那的な善意やその場限りの優しさは、必ずしも正義ではない。
そして弱者は、必ずしも患者側とは限らない。