理学療法の治療場面ではしばしば「視覚的フィードバック」が用いられる。鏡などに自分の姿を映して、それを目で見て視覚的に確認しながら、姿勢の調整や運動学習を狙うというものだ。
わかりやすい例をあげると、野球の投手が行うシャドーピッチング。

鏡に映る自分のフォームを確認すれば、様々な気付きがある。これと実際の投球練習とを交互に繰り返すことで、頭のなかのボディイメージと実際の動きの食い違いを減らしていく。主観と客観の「ずれ」を限りなくゼロに近づけることで、パフォーマンスの向上を獲得する。
単純だか重要で有効なトレーニングだ。

ところで、松浦亜弥はこの視覚的フィードバック訓練を、常人の数百倍はこなしてきたと推察する。

主に顔面について。
松浦は、自分の顔がどの角度からどう見られたとき最も可愛いく映るのかを知り尽している。また顔面の表情をつくる筋肉を、どの程度どの様に動かせば自分がどんな表情になるのかも完璧に把握しており、さらにそれらが見ている側にどう見えているかについても熟知している。
と思う。


これはアイドルとして極めて正しい姿勢だ。正しい努力と言えよう。

主観と客観は見事に一致していて、松浦が「可愛いでしょ?」と提供したものを、視聴者は「うん!可愛い!」と率直に受けとる。

今のところその蜜月関係に「ずれ」は感じられない。完璧だ。

PTのボクに言わせれば、これは圧倒的な時間を費やして繰り返し行われた視覚的フィードバック訓練の効果に他ならない。

おそらく松浦は、もの心ついた頃からヒマさえあれば鏡を見ていたのだろう。朝から晩まで、来る日も来る日も…。強烈なナルシズム。その行動は明らかに常軌を逸したものだったろうと察するが、しかし、松浦は結果に結び付けた。トップアイドルの座に登りつめ、努力の成果を商売道具にした.


たまに、アイドルでもなんでもない、そしてたいして可愛くもない一般の女性からも、この顔面視覚的フィードバック訓練の跡が垣間見えるときがある.

「あ、この娘この角度が一番可愛く見られると思ってんだろうな」.「この表情したらワタシは可愛いって思ってんだろうな」、と.

これは本当に痛い.対処に困るし、放置するのも何か腹立つ.

訓練の跡が好意的に受け取られるのは、それが商売道具にまでできるほどの素材を先天的に持っている極々一部の限られた人間だけだ.

話がそれたが、松浦に今後「ずれ」が生じてくるとすれば、それは「老い」だ.老いてなお現行のままでは、もはや主観と客観の一致はまず得られない.いつか変換を迫られる.スピード重視の本格派投手が、30代後半に変化球とコントロールを信条としたピッチングに変わっていくのと同じだ.過去の自分とは、いずれ別れを告げなければならない日が必ず来る.

松浦が、いつどこで、どのタイミングで戦略を変換してくるか.見ものだ.もし変換が見られない場合、世間の認識と松浦自身の認識は加速度的に離れていき、類を見ない「痛さ」を体現することになるだろう.これもまた見ものである.