私が生まれたのは、熊本県に近い小さな集落。
未熟児で生まれた私は寝たきり。
私が未熟児で生まれたのは、母のせいだと父方の祖母に責められたと言う。
私が生まれて間も無く両親は、私を連れて更に山奥の開拓地へと移住。
そして、私の一番古い記憶は、そこから始まった。
ふと気づくと私はフワフワと宙に浮いてた。
そして空中から下を眺めている。
私の目には、私の両親、母の兄弟姉妹等が映っていた。
皆仕事の合間の休憩をしている。
何か話しているようだが声は聞こえない。
やがて皆動き始めた。どうやら休憩も終わったようだ。
叔父(母の兄)も、吸っていた煙草を足元に捨てると、足で踏みにじり火を消していた。
皆はそれぞれに持っていた鎌などで枯れ草を刈り始めた。
少ししてからだったと思う。
叔父が消したはずの煙草の火が、枯れ草に燃え移り、その火は見る見る燃え広がった。
それに気づいた皆は、慌てて坂の下の川からバケツに水を汲んで来ては火にかける。
またある者は燃え広がらないように、周りの杉の木の枝や枯れ草を切る。
何とか山火事にまでならずに火は消えた。
と、
私の記憶はそこで消えていた。
この話を、私が中学生の夏に、お盆で集まった母方の親戚の前で話した。
すると、その話を聞いていた母方の祖母が、
「何を言うか、あの頃お前はまだ2歳で、家(祖母の家)に寝て居たから分かるはずないやろ」
と言った。
そこで私は、
「そうかなあ? じゃああれは夢だったのかなあ」
と言うとそこに居た皆は、いや確かにそのことはあったと言って私を不思議そうに見ていた。
後で分かったことだが、これが私の初めての不思議な体験、幽体離脱だったのだろう。
この後、現在に至るまで、不思議な体験はずっと続いている。