"歴史的名盤"
そう呼ばれるアルバムは数知れず。
ただそれは世間一般的にそのような呼称が
つけられただけで
その価値観は人それぞれ。
例えばメタリカのいわゆる
「ブラックアルバム」は名盤と呼ばれるが
僕個人としては「Master of Puppets」の方が
圧倒的に名盤だと思う。
IRON MAIDENなら名曲「Aces High」が
収録されている「Powerslave」よりも
トータルバランスとして優れている
「THE NUMBER OF THE BEAST」が好き
要は曲のクオリティに加えて
個人的な思い入れや好みが加味されて
自分の中で名盤が"歴史的名盤"へと繰り上がる。
個人の好みは人それぞれ…
それを踏まえた上で
初めて聴いたDragonforceの曲は2013年の
「Heart of the Storm」
新ボーカルのマーク・ハドソン加入後の
言わずもがなの名曲。
だがしかしここで僕の食指は動かなかった。
そしてその数年後、
動画を観ていて出会った曲が
「Through the Fire and Flame」
何なんだ!この曲は!
「Through the Fire and Flame」Dragonforce
MVは編集されていて
YouTubeバージョンの5分弱なので
フルバージョンのこちらを聴いていただきたい。
イントロから既に速弾き、
嵐のようなタッピング。
ドラマチックに絡んでくるシンセ
もはや聞き取ることすら出来ない
音速レベルのドラム
時にギターにシンクロするベース
ツインギターの二人はチョーキングよりも
ハーモニクスを多用して臨場感を煽る
正に奇跡の1曲!
そしてこの曲が1曲目に収録されているのが

Dragonforceの3rdアルバム
「Inhuman Rampage」
初期のボーカル、ZPサート在籍時のこれぞ名盤
とにかく途轍もなく速い
リードもリズムもベースもドラムもシンセも
勿論速いことだけが素晴らしいのではない
メロディックスピードメタル(以下メロスピ)は
その美しい旋律と高い技術が融合して
初めてそのジャンルとして成立する
これが僕の持論。
僕はギターでそのメロディを出せないから
打ち込みで追求する
だが彼らは生身の身体で
その凄まじき演奏を体現する。
プロ、なんてレベルは超越している
正に超人、神の領域だ。
そしてこれだけのクオリティが高い曲に続く
2曲目以降はそれなりに…トーンダウン?
なんて思っていたら
とんでもない!
2曲目以降も
美旋律とテクニックのオンパレード。
これは革命だ!
そう思いました。
これこそあのグランジやオルタナティブへの
メタルからの解答…
いや挑戦状なのだ、と。
90年代半ばのメタル衰退期以降、
技術嗜好主義はクールでないと嘲笑され
複雑な構成やドラマチックな曲展開を
良しとせず
"メタルは死んだ"
そう否定し続けてきた音楽シーンも
ここまでやられたらぐうの音も出ない。
歴史を変える名盤
僕は身を以て体感することになったのです。
Dragonforceの楽曲は高い評価を受けながらも
どれも似た曲が多いと
揶揄されることがありますが
言い換えれば逆にどの曲も
クオリティが高いと言う証拠、
フレーズも似ているようで異なる。
恐らくアルバム中のどの曲でも
仮に他のバンドのアルバムに入っているならば
間違いなくリードトラックとなり得る
一切の妥協もないサウンド。
Dragonforceとの出会いは
僕の音楽感も変えました。
メロディックスピードメタルや
シンフォニックメタルを聴くきっかけにもなり
他にもEDGUY、SONATA ARCTICA
RHAPSODY OF FIRE
更には始祖とも言える
ハロウィンの新作をも聴くことになり
90年代に遡ってHEAVEN'S GATEや
ROYAL HUNTを再び聴くようになった。
そして必然的に"あんきも"
Unlucky Morpheusを聴くことになる、
それらは僕自身が作る楽曲にも
大きな影響を与えました。
1曲、7分を越える大作が多いのが特徴ですが
それはギターパートの多さゆえ。
あまりのリズムの速さにメタルファンですら
せわしなさを感じることもあるかもですが
その確実なテクニックとクオリティに
圧倒されながらも
存分にその凄みを体感出来る。
そしてアルバムに必ず1曲収録されている
美しいバラードも魅力のひとつです。
メタルを聴き続け30余年
ティーンエイジャーの頃のような
初期衝動やカルチャーショックは
無いだろうと思っていましたが
まさか10代の頃に聴き始めた
メイデンやハロウィンのような
人生観を左右するバンドに
ある日突然出会うことがあるなんて。
だから幾つになっても
メタルファンを辞められないんですね。

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