ちょっと専門的な話が続いてしまいます……ご勘弁を……

胃酸の逆流によって食道上皮が剥がれて、そこに円柱上皮が出現する……というところまで進みました。

その円柱上皮ですが、これが不完全なものなのです。胃の粘膜に比べて不完全という意味です。つまり、胃の完全な円柱上皮ならば、胃酸に強いのですが、不完全であるが故に弱く、不安定なのです。そしてこの不安定な円柱上皮のことを医学用語でバレット上皮、この部分のことをバレット食道、さらにそこから発生する癌のことをバレット腺癌と呼びます。

一度成長してしまった人間の体というのは、そんなに都合良く出来ておらず、食道の中にを作り出すことは無理があるのです。

この不完全な上皮はさらなる胃酸の刺激によって遺伝子変異を起こし、やがてへと変化していくのです。バレット腺癌です。

というのが、今のところ医学会で言われている定説です。多くの動物実験や、臨床データの積み重ねによって、このストーリーは妥当である、と考えられています。もちろん、医学は進歩します。毎年数多くの新しい知見が発表されます。将来この定説が覆ることもあるかも知れません……。

さて、話を伊達政宗に戻します……。我々が食道噴門癌と聞くと上記の機序で発生したバレット腺癌をまず想像します。

ただ……、この食道噴門癌というのも正確な医学用語としては不適切です。正確には食道癌か、あるいは噴門部癌のいずれかであり、食道噴門癌と言う言葉は存在しません。ま、細かいことは良しとして、伊達政宗がバレット腺癌であったという可能性はあったでしょうか……。
逆流性食道炎……

簡単に言うと、胃の酸が食道に戻って来てしまう病気です。

一般に胃の酸はpHが2前後という、塩酸と同じ位の酸なのです。胃の中の特殊な細胞から作られて、胃の中に分泌されます。胃は多量の粘液を分泌しているために、自ら産生する酸に消化されなくても済むのですが、この酸が食道に戻って来てしまった場合……、食道の上皮は粘液を分泌しないため、傷害を受けてしまいます。この時、胸焼けの自覚症状が出現します。

少量の酸ならば食道の細胞も耐えられるのですが、これが多量、長期間となるとそうはいきません。この酸によって食道上皮細胞が剥がれてしまうのです。

そして…剥がれてしまった食道上皮細胞の代わりに出現するのが円柱上皮と呼ばれる細胞です。これは生体の防御反応の一部として考えられています。酸に強い細胞なのです。この細胞に置き換わることによって、酸に対する抵抗性が増強するのです。ところが……

この円柱上皮がくせ者なのです。
次のターゲットは、伊達政宗にしてみます。

ご存知、独眼竜正宗です。

ただ……死因に関しては発掘調査とやらで食道噴門癌と決まっているらしい……。

つまらない……。

ま、でも、食道噴門癌、ちょっと耳慣れない言葉だと思います。この病気について解説していきたいと思います。

逆流性食道炎って言葉をご存知でしょうか?