ちょっとご無沙汰してしまいました……。

食道腺癌の話です。前回お話したように、一般的にバレット腺癌と言われる癌ですが、伊達政宗がそうだった可能性はあるのでしょうか? 

可能性はありますが、極めて低い、と思われます。

と、いうのも、そもそも日本人にはバレット食道そのものの頻度が低いのです。これは、以前にも書きましたが、ヘリコバクターピロリ感染率が高い、ということにも関連しています。ヘリコバクターピロリ感染を起こした胃は一般的には胃粘膜からの酸の分泌が低下します。そうすると、食道に逆流する酸も減ってバレット食道になりにくいのです。当時はヘリコバクターピロリの感染はかなり高頻度だったことが想像され、また、ヘリコバクターピロリ感染が減っている現代においてもバレット食道、バレット腺癌の発生頻度はかなり低いのです。あくまで確率の問題ですが、伊達政宗がバレット腺癌であったとは考え難いです。

バレット腺癌の頻度が低い、ということですが、実際の臨床の場においてもバレット腺癌と聞くとおおっとなります。最近になってヘリコバクターピロリの感染が低下し、逆流性食道炎の頻度が増加しており、今後バレット腺癌の頻度も少しずつ増加することが予想されています。ただ、患者さんをみていると、逆流性食道炎=バレット腺癌と言う訳ではなく、かなりヒドい逆流性食道炎を数十年無治療で放置した場合に、まれにバレット腺癌が発症する、という印象です。

ということで、やはり噴門部癌と考えるのが妥当でしょう。

次回は噴門部癌について……