まじすげー




 「本は紙である」という環境で育ってきた僕らに、電子書籍はどんな未来を見せてくれるのでしょう。

 『WEB本の雑誌』は電子書籍について真剣に考え、ブック・コーディネイターの内沼晋太郎さんとともに、電子書籍に関わる方々、あるいはきっとこれから関わることになるだろう方々に、お話を聞いてきました。

 第1回のゲストは「iPad」の発表会でも、日本からの参加を許された数少ないジャーナリストの西田宗千佳さん。最前線での取材を繰り返す電子書籍のスペシャリストの目に、2011年現在、電子書籍の未来はどう写っているのでしょうか。


【いま電子書籍端末を買っているのは熱心な本読み】

内沼 昨年12月末に出版された『電子書籍革命の真実』(エンターブレイン)を読ませていただきました。日本国内の電子書籍事情について、これほど丹念に取材され、詳しく書かれた本はなかったと思います。

西田 昨年3月、iPadの発売前に『iPad VS. キンドル』という本を出したんですが、年末までの間に、まるで状況が変わってしまいました。毎日のように新しい動きがあるので、情報が蓄積されるスピードも速かったですね。あと、ニュース性の高いネタは"鮮度"が大切。ですから12月2日に校了だというのに11月30日まで取材をしていました(笑)。

内沼 2010年は「電子書籍元年」とも言われました。2004年にも一度「元年」と呼ばれるべき年がありましたが、結果は失敗に終わりましたよね。

西田 その後、ソニーや松下(現パナソニック)などのメーカーはすべて撤退し、その一方で、いわゆる「ガラケー」と呼ばれる携帯電話向けの電子書籍が少しずつ読者を増やしていきました。そして昨年、iPadの上陸をきっかけに状況が一変しました。

内沼 年末には国内からもシャープのGALAPAGOS、ソニーのReader、KDDIのbiblio Leafなどの端末が発売されました。ここにいま、すべての端末が並んでいますが、西田さんはこれらの端末をどのようにご覧になっていますか。

西田 それぞれに一定の狙いがあるのは感じとれますね。動作が軽快なReaderも魅力的だし、GALAPAGOSに搭載された雑誌をプッシュ配信してくれるというシステムには目新しさもある。ただ「ほしいときにすぐ買える」のも電子書籍のウリですから、本来全機種がbiblio Leafのように3G通信で買える端末であってほしい。

内沼 電子書籍端末とは言い換えれば読書端末です。そうなると「ほしいときに買える」買いやすさはひとつのキーになりますよね。

西田 そう。結局電子書籍端末を使うのは誰かという話になると、どう考えても普段から本を読みつけている「本読み」の人たちなんです。

内沼 それこそこの『Web本の雑誌』の読者は、そういう人たちが多そうですね。

西田 ですよね。本が好きでWebへの親和性も高い。電子書籍端末をまず手に取るのはそういう人たちのはずです。じつは昨年までの日本のガラケーを中心とした電子書籍市場はBL(ボーイズラブ)作品の読者に支えられてきていました。ところがソニーの人に電子書籍販売サイト「Reader Store」の売り上げの傾向を聞いてみると、まったく動きが違うそうなんです。動いているのは文芸とビジネス書で、アダルトめいたコンテンツの動きがほとんどない。しかも発売1~2週間という段階で、10冊、20冊と買っている人が相当数いて、3ケタ買った読者もいるというんです。


【ソーシャル・リーディングという新しい楽しみ】

西田 TwitterやFacebookなどソーシャルメディアの活用も重要になってきています。現段階で電子書籍端末を買っているコア層は、「本読み」のうち新しもの好きな一部の人たち。彼らがたくさん本を購入する動機には、電子書籍の「たくさんの本をひとつの端末に放り込んで持ち歩ける」面白さを実感できるという理由もあるでしょう。

内沼 ただ、今はまだ電子書籍が「本読み」だけのものだとしても、今後、今までは本屋にあまり行かなかったり、行ってもどんな本を読んでいいかわからなかった人たちにまで、本の楽しさを広めていく可能性もある。たとえば僕は、電子書籍を媒介として読み手同士がコミュニケートする"ソーシャル・リーディング"が一般的になってくれば、多くの人にとって本がもっと身近になることもあり得るのではないかと考えています。

西田 そうですね。Amazonのキンドルには既に、同じ本の中で多くの人にマーキングされた箇所がわかるハイライト機能や、自分がマーキングした箇所をTwitterやFacebookに投稿する機能がついています。実用書やビジネス書はソーシャル・リーディングに向いていますよね。ソーシャルで解説や解釈、コミュニケーションが盛り上がることで、より価値が高まっていく。辞書などが典型的ですが、知の集積が価値化されるジャンルは、ソーシャルな性格の強いアプリケーションソフトと近いモノになっていくでしょう。


【ソーシャル化が読書にもたらす功罪】

内沼 小説などのフィクションでも人物のセリフをきっかけにコミュニケーションが盛り上がったり、あるシーンをイラスト化して画像で投稿するなどソーシャル化によって、これまでとは違う楽しみ方が生まれそうです。マンガなどはとてもソーシャル性の高いジャンルですよね。「このセリフいいよね!」と他者に対してアプローチがしやすいし、伝播力も強い。

西田 そうですね、マンガはアリだと思います。人気マンガは巻数が続くことでビジネスが成り立ちますし。一方小説などでは物語や世界観に没入したい読み手もいるでしょう。ただ、フィクションに代表されるエンターテインメント作品は、本来消費されることで産業として成り立っている面がある。高度にアプリケーション化され過ぎると産業として成立しにくくなってしまうというジレンマは抱えています。

内沼 なるほど、確かにひとつの小説でいろんな楽しみ方ができるようになると、一冊の小説にかける時間は長くなり、消費量は減るかもしれません。ただそのぶん、その楽しみが一般に広がれば新たな読者も増えますし、一人の人が本に割く時間そのものが増えることだってあるかもしれませんよね。

西田 選んだ端末に搭載された機能によっても、楽しみ方が変わってくるでしょうね。その世界観に没頭したい人は完全に読書に特化した端末。一方そのコンテンツについて誰かと語りたい人は、コミュニケーションを重視したソーシャル・リーディング端末を選ぶようになる。そういう進化をしていってほしいですね。


【進む格安端末と豪華端末への二極化】

内沼 その他の面では、どう進化していくと西田さんはお考えですか?

西田 「何でもできる」リッチな端末と「これしかできない」機能が限定された端末の二極化は進むでしょうね。個人的な見解ですが、私は年内に100ドル—*怏~を切る機能を絞り込んだ端末が登場すると見ています。中長期で言うと、5年以内をメドにカラーの反射光端末が4~5万円で発売されるでしょう。

内沼 文字量の多い書籍を読むときには、KindleやReader、biblio Leafなどの反射光端末がラクですよね。そういう本をバックライトつきの液晶画面で長時間読むと、やはり目は疲れるようです。

西田 あと売り方として、あり得るのは作品をバンドルした端末。「端末だけなら2万円。好きな本が50冊入りで5万円」という風にして売ったら、確実に売れますよ。数十巻あるような歴史小説をまるごと入れるなど、さまざまなシリーズが考えられる。黎明期の初期需要としては強いし、電子書籍マーケットの下支えにもなる。販売店ごとに違うものをバンドルさせて、どこで買うかを選べるようにすれば、販売店にとってのメリットも提供できる。

内沼 「あの人が選んだ○冊」というような売り方もできますよね。紙で買えば50冊で5万円しますから、50冊入って5万円なら、実質、端末代はタダという感覚になります。圧倒的に買いやすくなりますね。

西田 そうそう。じつはバンドル売りというのは、電子辞書の成功モデルでもあるので、電子書籍を普及させるには非常に現実的な手段なんです。ただその前に出版界がやっておくべきことは、まだまだある。まずは、紙の本を買ったら電子版が付録になっていたり、ダウンロード権が得られるなど、電子と紙の垣根を低くする仕組み作りを進めでほしい。

内沼 西田さんの『電子書籍革命の真実』も書籍内の袋とじに全文PDFのダウンロード権が入っていますよね。

西田 そういう売り方が特別扱いされずに当たり前になっていってほしいですね。逆側から見れば、そういう土壌があれば、本を電子で読もうという人は確実に増えるはず。電子が紙を食うという発想自体がナンセンスですし、出版社も売れるのであれば形にはこだわらないでしょう。何よりも読者がほしいのは紙だろうと電子だろうと、好きなときに好きなように読むことができる「本」のはずなんです。(了)


西田宗千佳
にしだ・むねちか●1971年生まれ。PC、デジタル関連やネットワーク関連を中心に活躍するITジャーナリスト。徹底した現場での取材活動に定評がある。近著『電子書籍革命の真実~未来の本 本のミライ~』(エンターブレイン)ほか著書多数。共著に『知らないとヤバイ! クラウドとプラットフォームでいま何が起きているのか?』(徳間書店)など

内沼晋太郎
うちぬま・しんたろう●1980年生まれ。ブック・コーディネイター、クリエイティブ・ディレクター。「本とアイデア」のレーベル「numabooks」主宰。著書に『本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本』(朝日新聞出版)

「この記事の著作権は WEB本の雑誌 に帰属します。」




やっほい




 「クラウドコンピューティングの普及により、ありとあらゆるアプリケーションがクラウドの中に存在するようになれば、ネットワークへの依存度はますます高まる。そうした環境の中でもインフラを最適化し、どこにいても透過的にデータを利用できるようにしたい」——。

 リバーベッドテクノロジーは2010年11月に、パブリッククラウドへのアクセスを最適化する「Cloud Steelhead」と、クラウド型ストレージへのデータ転送を高速化する「Whitewater」を発表した。こうした製品を発表した背景について、米リバーベッドのテクニカルディレクター、オマー・アサッド氏はこのように語った。

 リバーベッドはこれまで、ハードウェアアプライアンス「Steelhead」を中心としたWAN最適化製品を提供してきた。本社オフィスとデータセンター、拠点間の通信を高速化し、ファイルサーバへのアクセスなどをストレスなく行える環境を整えることで、「インフラの最適化」を実現するというものだ。

 こうした既存のアプライアンスを利用しても、データセンター、ひいてはプライベートクラウドへのアクセスを最適化することは可能だ。ただ「こうしたソリューションはディスラプティブ(分断的)なことが課題だ。導入する際にはどうしてもサービスの中断が発生してしまう。また、パブリッククラウドに適用するには自動化が不可欠だ」(アサッド氏)。

 新製品のCloud Steelheadは、こうした問題意識を踏まえて開発された。ニーズに応じてシームレスに、オンデマンドにサービスを拡張できるというパブリッククラウド本来のメリットを生かしながら、インフラを最適化することを目的にした製品だ。

 「オンラインショッピングサイトならば、12月のホリデーシーズンと2~3月とではトラフィック量がまるで違う。伸縮性に富み、ダイナミックにスケールアップ、スケールダウンするパブリッククラウドの柔軟性に合わせて最適化を行う」(アサッド氏)。

 Cloud Steelheadは、自社システム側に導入したSteelheadアプライアンスと対向に設置して利用する。クラウドサービスプロバイダー側があらかじめ、ハイパーバイザに「Steelhead Discovery Agent」というエージェントを導入。エージェントは、仮想マシンに対するトラフィックを途中で捕まえ、クラウドサービスのAPIを介してCloud Steelheadに送り、最適化する仕組みだ。一度目の接続には若干時間がかかるが、継続して使っていくうちに最適化が進むという。

 リバーベッドは先に、仮想マシン上で動作するWAN最適化アプライアンス「Virtual Steelhead」もリリースしているが、これはどちらかというと、自社データセンターで運用している仮想マシン上で最適化を実現する製品という位置付けだ。これに対しCloud Steelheadは、パブリッククラウドサービスとの統合を念頭に置いており、プロビジョニングや課金システムのレベルまで、サービスプロバイダー側と連携するという。

 「仮想アプライアンスのリリースだけで『クラウドReady』と表現するところが多いが、実際にパブリッククラウドを提供しているサービスプロバイダーと連携するには、もっと工夫が必要だ。管理ツールやリソースのプロビジョニング、ライセンス管理ツールなども含めて、透過的に動作する必要がある」(アサッド氏)。

 Cloud SteelheadはまずAmazon EC2に対応する予定で、その後順次サービス範囲を拡大していく方針だ。

●Hadoopで処理するデータを高速に転送

 もう1つの製品「Whitewater」は、これまでのWAN最適化製品とは少し毛色が異なり、クラウド型ストレージサービスへのデータバックアップを支援する製品だ。

 企業にとって重要なデータは、遠隔地に設置したディザスタリカバリ用サイトに保存することが多い。だが一方で、テープなどにデータを保存して運送する手間やコストが課題となっている。

 Whitewaterは、ディザスタリカバリサイトの代わりに、クラウド型ストレージサービスにデータバックアップを行いつつ、処理を高速化する製品だ。もともと得意としてきたWAN高速化機能に重複排除(デデュプ)機能を組み合わせて転送するデータ量を減らし、バックアップに要する時間とコストを抑えることが特徴という。また、転送するデータはすべて暗号化できる。

 Whitewaterは2種類のハードウェアアプライアンスに、仮想アプライアンスを加えた3種類のラインアップ。Amazon S3のほか、EMC Atmos、AT&T Synaptic Storage as a Service SMといったサービスに対応している。

 「クラウド型ストレージサービスを利用することで、高価なテープやディスクへの投資が不要になるし、ディザスタリカバリサイトを別途運用する必要もない。何か障害が発生した際のリストア、復旧も迅速に行える」(アサッド氏)。

 同氏が具体的な利用方法として挙げたのは、分散システム「Hadoop」を利用したデータ解析だ。Hadoopは大量のデータ解析に有効だが、解析の元となるデータをどうやって移動させるかが課題だった。元データをディスクに保存し、配送するだけで数日単位の時間が掛かっていては、何のためのHadoopか分からない。ここにWhitewaterを活用すれば、コスト効率よく、迅速に行えるようになるという。

 本社と支社の間の高速化、最適化から始まったリバーベッドだが、「パブリッククラウド、プライベートクラウドも含め、あらゆる組み合わせをカバーしていきたい」とアサッド氏は述べている。

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