恋は月夜に香る
月を見ると
思い出す恋がある。
もう二度と戻らないのに
匂いみたいに、
記憶だけがふっと蘇る。
そんな
記憶を綴っています。
※ほぼノンフィクションですが
少し手を加えています
※noteで先読みできます
【猫の匂いがした彼】
「たしか、あっちゃんだよね?」
「あっちゃんは、父、わたしは亜希だよ!」
わたしは父から一文字もらっていて
父は亜司(あつし)、父がちゃん付けで呼ばれることが多いせいか
よく間違われていた。
そんな身内ネタが通じることにさえ
親近感が湧いてしまって
にーちゃんのただの勘違いなのに
運命的にさえ感じてしまう。
「俺のことは、亜希ちゃんは知ってるんだろうけど
ソラちゃんだっけ?は知らんよね?・・
てか。なんでソラちゃんなの?」
「あ・・わたし苗字が「宇田川」なので、宇宙ぽいから・・」
「ふ〜ん・・かわいいじゃん」
・・・?
胃のあたりがもやっとする。
・・た・・ただの・・あだ名の話じゃんか・・。
そう思うのに
わたしの心はすでに言うことを聞かない。
早い、早すぎるって。
にーちゃんを意識してるんだっていうのを
突きつけられてるようで、苦しくてしかたない。
「俺が、圭介、こっちの無口なイケメンが直人ね。」
駅では深々とキャップを被っていたけど
今目の前で髪をくしゃくしゃっとする彼はたしかに
誰もが認めるようなイケメンだった。
整った顔と切れ長な目が
ちょっとヤンキーっぽいくせに・・
表情がどこかあどけないし
無口で人見知りっぽいところが
ヤンキー特有のオラオラ感を払拭してて・・
さらには、白Tから
ちょっとだけ筋肉質な腕が伸びていて、すこし日焼けしてる。
ワイルドすぎない男っぽさも相まって
いわゆる平成のモテ男子そのもので
当時の女子の大半は、ああいう男の人に弱かった。
「ちなみに、俺はフリーだけど、直人は彼女いるからね〜」
そう言うと
前髪をかきあげながら、わたしたちに目を合わせてきた。
・・・こ・・このフリは、完全に
で、君たちは?
のフリだよね・・・?
ごくり・・
・・口に入れたばかりのミートソーススパゲティを
わたしはそのまま飲み込んでしまった。
即答で答えられなかった理由は一つ。
わたしにはその時
彼氏がいたからだった。
「・・あ・・わたし、いるよ〜・・彼・・」
バカ正直に言ってしまうわたし
18歳の経験値なんかそんなもんだ。
「もう、・・別れようって思ってるけど」
心が暴走して、今、それを決めていた。
前の席に座っている圭介にーちゃんが
ちょっと天井に目をやって
上から見下ろすように私を見たあと・・
左手で頬杖をつきながら
「ソラちゃんは?」
と声をかける・・。
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