昔勤めていた職場で、私はマインド・コントロールを受けていた。

 私は依存心が強いほうなので、人に対して心理的に依存しがちだった。今でもそうだろう。

 それで、私はある上司に依存していた。当時は、そのような意識は特になかったのだけれど。

 それで、その上司は、私をよく利用していた。

 具体的には、自分の社会的なペルソナを維持するために、私をよく揶揄っていた。ようするに、私をいじめることで、相対的に自分の強さを、周囲に示そうとした。これは、ヤクザが、脅す相手の前で、部下に手を上げる手口と似ている。

 そして、私と二人きりになるときは、その上司は私に対して優しくなった。二人きりのときに、私をいじめる必要がなかったからだろう。それにいじめ過ぎると、私が彼から離れていってしまうという理由もあっただろう。アメとムチの使い分けだ。

 マインド・コントロールには、一つのサイクルがある。相手を攻撃する期間があり、そして、やさしくする期間とがある。後者の期間は、相手に逃げられないためにある (あるいは、相手に対して、「私がいないとダメなんだ!」と思わせる期間だ) 。先にも挙げたように、アメとムチだ。

 それで、私は本やネットの記事を読んで、そのことにやっと気がつき、その上司から心理的にも物理的にも、距離を置き始めた。そうすると、その上司は、今度は私を脅しにかかった。やさしくして、引き止められないのなら、脅迫で引き止めようとする魂胆だった。これは、本にも記事にも、そう書いてあったので、私はそれを予測していた。私は彼のその脅しを無視した。

 そうして、私は彼のマインド・コントロールから抜け出したのだった。