YouTubeをぼんやりと眺めていたら、中島みゆきの曲が大量に上がっていた。どれも公式のものだった。そんな事態は、私の知っている限り、これまでに一度もないことだった (中島さんの身になにかあったんじゃないのか?) 。
 私は中島みゆきの隠れファンなので (といっても、ベスト・アルバムに収められているような、有名な曲しか知らないのだけど) 、メチャクチャ嬉しくなって、片っ端から聴いていった。それで久しぶりに泣いてしまった。なんだかスッキリしてしまった。
 私は曲を聴いて泣くなんてことはほぼないのだけれど、中島みゆきの曲を聴いているとわりに泣いてしまう。かなりの高確率で。
 私は高校生のとき、初めて中島みゆきの曲を聴いた。クラスメイトが、ウォークマンを持ってきていて、そのなかに「空と君のあいだに」が入っていたのだ。私はその曲を聴かせてもらった。そして痺れた。何度も何度も聴かせてもらった。私は「空と君の〜」を覚えて、カラオケに行くたびに歌った。(ちなみに『家なき子』は、未視聴だった。世代ではなかった)
 20代の半ばごろ、私は家賃三万円のボロアパートで一人暮らしをしていた。私はAmazonかブックオフで、中島みゆきのベスト・アルバム『大吟醸』を買った。そのアルバムに収録された「空と君のあいだに」が目当てだったのだろう (中島みゆきの曲がYouTubeに上がっていることはまずなかったので。カバーは除く) 。しかしそのアルバムを聴いているうちに、むしろ他の曲に惹かれていった。
 当時、中島みゆきの曲で一番好きだったのは、「あした」だった。当時の私の心境に、それはとてもマッチしていた。夜勤終わりの真夜中、セブン-イレブンの弁当を肴に、ビールやハイボールを飲みながら、よく「あした」を聴いた。そして涙を流した。
 「旅人の歌」もよく聴いた。こちらも当時の私の心境によく合っていた。夜勤帰りの真夜中、原付を飛ばしながら、よく「旅人の歌」を大声で歌った (いい迷惑である) 。
 最終的に「浅い眠り」をよく聴くようになった。「浅い眠り」は今でもとても好きだ。下手したら、中島みゆきの曲のなかで一番好きかもしれない。いや、一番好きだ。
 YouTubeで、久しぶりに「浅い眠り」を聴いたのだけど、やはり良かった。やはり痺れた。というか、その動画で使われている「浅い眠り」のジャケットの中島みゆきが、カッコ良過ぎる。中島みゆきが、赤い彼岸花に囲まれていて、彼女の着ている真っ白な服が、そのなかでとても映えている。美しい。
 私は、女性に対して「カッコ良い」と感じることはまずない。そう思うのは、本当に中島さんに対してくらいだ (あと、『ブラック・ラグーン』のバラライカくらい) 。
 有名な曲をあらかた聴き終えたあとで、「ヘッドライト・テールライト」を聴いた。『大吟醸』には収録されていないけれど、この曲も私はかなり好きだ。テレビCMで使われていたらしいのだけど、TVを見ない自分が、いったいどこでこの曲を知ったのだろうか? (普通にYouTubeだったっけ?)

ヘッドライト・テールライト 旅はまだ終わらない


ヘッドライト・テールライト 旅はまだ終わらない

「ヘッドライト・テールライト」(中島みゆき) より