アイスカフェラテ | 春永昼猫のブログ、小説

春永昼猫のブログ、小説

時々ふと思ったことをブログに書いたりしています。
最新短編小説、カフェ&バーMITSUもよろしくお願いします(*^^*)

アイスカフェラテ

 

ちょっと暑い初夏、ミナは高校2年生、音楽が大好きでピアニストを目指している。

今日は週に一度のピアノのレッスンの日、しかし

 

ミナさん、しっかりピアノに集中していませんね、どうしたのですか?ほかの子たちと比べてもグレードが遅れてますね、そんなでは音大受験に間に合いませんよ」とピアノの先生に叱られ

 

「はい、すみません…。」とがっくりと肩を落とすミナだった。

 

ミナは家への帰りがけに、カフェ&バーMITSUの前をを通ると、窓際で二匹の猫達がお昼寝タイムをしていた。

その猫達は、カフェ&バーMITSUの看板猫のねねと、そこまで迷わず安全に来れるようになった三毛猫のユメだった。

 

「うふふ、か~わいい。」

 

ねねとユメを見てもっと一緒にいたくなったミナは、お店のドアをギ~ッと開け、一歩中に入ったら、チリンチリン♪という小気味よい音のカウベルとともに

「いらっしゃいませ~」笑顔のみつが出迎えた。

 

店内の奥には古ぼけたピアノ。

ミナは、

「ちょっとピアノ弾かせてもらっても良いですか?」

とみつに断ると、

 

「何年も調律していませんが、いいですよー」

と元気な返事が来たので、ミナはピアノを弾くことにした。

 

ミナの奏でる優しい子守唄の調べ

ねねとユメはのどをゴロゴロ鳴らしてくつろぎ、コップを洗っていたみつも手を止め聞きこんでいました。

 

でも、何を思ったのか途中でぷつっと演奏をやめてしまったミナ。

 

「あら?どうしたんですか?」

みつが問うと、

 

「怖いんです、ピアノを弾くのが…ピアノも音楽も好きなんですけど、ピアノを弾いてて怒られるのが嫌で…。」

ミナが恐る恐る言うと、みつはこっちにおいでおいでとカウンターテーブルに手招きし、

「そんな時は一休みしましょうよ。」と言ったのでした。

 

みつは、氷の入った背の高いコップにエスプレッソと牛乳をそそぎ、キャラメルシロップを混ぜて、キャラメル味のアイスカフェラテを作りました。

 

「どうぞ、飲んでみてね」

みつはミナの前にハチワレ猫の顔の形をしたコースターに乗ったアイスカフェラテをトンと置くと、ミナはストローでチューッこくんとそれを飲みました。

口いっぱいにキャラメルの甘さと、コーヒーのほろ苦がさが広がって

 

すると…ポン!煙が立ち、目の前にト音記号やヘ音記号、シャープ、フラット、四分音符、八分音符など沢山の音楽記号や音符が出てきました。

 

「ふわぁ~!!音符さんたちがいっぱい!!」

ミナが歓喜の声をあげると、音符たちはみんなで愉快にこう歌い始めました!

 

♪音楽はクラシックだけじゃないんだぜ!

ロックにジャズにJ-POP

演歌に民謡K-POPもある!

アニソン、ゲームミュージックで夢見よう!

楽しく気軽に歌おうぜ!!

 

ミナは、カウンターから少し広いフロアに移動すると、音符たちの楽しい歌に合わせてくるくる回ってスカートをひるがえしながら踊りました。

お昼寝をしていたねねとユメも、むっくり起き出してミナと一緒にぴょこぴょこ踊り出しました。

 

ねねはおもむろにカウンターにやってくると、

 

「何よ何よ、楽しいじゃにゃい、楽しいついでに、みつ、アレやりにゃさいよ」

ねねがみつに言うと、みつは恥ずかしそうに

 

「アレ?いいの?やっちゃって」みつがねねに聞くと

 

「今日ぐらいは解禁するにゃんよ。」ねねがそう言うと

 

みつは、エプロンを脱ぎ、すたすたとピアノの方へ向かうと、ピアノの椅子に座り、ちょっとぎこちない仕草ながらもピアノを弾きましたそしてそれに合わせて大声を張り上げて歌うのでした。

「え?え!?」ビックリするミナとユメ。

それもそのはず、みつが弾いているのは、クラシックではなくて、ロックの弾き語りでした!

 

♪新しい明日にGo Go Go

昨日のことなどBye Bye Bye

歩いてこないぜ明日はDon’t work

自分たちで走っていくのさRun together

明日よ待ってろよ Happy Tomorrow

 

ピーピー!!音符たちの高らかな口笛にパチパチパチ!!ミナの温かい拍手!!

 

「すごいにゃん!!みつさんこんにゃ特技があるにゃんて!!」ユメの驚きの言葉。

 

「そう、私も実のところクラシックは苦手でね、覚えられなかったのさ。左手だってヘ音記号が読めなくなって、コードで弾いてるのさ。」みつは言った。

 

「そうだったんですね、自分なりに努力されたんですね。」ミナは言うと、

 

「そうそう、自分のための努力は惜しまないとね。」みつは言った。

 

「なんだか、歌の歌詞を聞いて私にも新しい未来があるんだって希望がわきました、みつさんありがとうございます!!」ミナは喜んでそう言うと

 

「いえいえ、私はピアノを弾いて歌っただけだよ。」と返事を返した。

 

「ミナちゃん良かったじゃんか、問題が解決してさ!!じゃあ、俺らは帰るよ!今度は譜面で会おうな!!」

ポン!煙が立ち音符たちは帰っていきました。

 

「みつさん、ありがとう!明日からまたピアノのレッスン頑張ります!」

ミナは、意気揚々というと、

 

「疲れたらまたおいで~」ニコニコしながら言うみつだった。

 

ピアノのレッスンも楽しくなり、どんどん自分の好きなアーティストの曲も覚えていったミナは、数年後…色々なジャンルの音楽を手掛ける作曲家となったのであった…。