修行僧な男 | 真面目に遊んで飯を喰う(2nd season)
コ~ンコ~ンおじさんから
強奪したトマトジュースを朝昼飯代わりに飲み干したところで、
予定の時間の10分前にこの日の客がやってきた。

色盲検査と見紛うほど原色をふんだんに使ったロジック調のシャツを着て、
赤フレームの眼鏡を額に乗せた男。

私よりちょうど一回り若いその男は少し前に都内で偶然出会い、
名刺交換の後に頻繁に連絡を取る男。
肩書で言えば、フリーカメラマン。

何にでも興味を持ってしまう私にとって
“フリーカメラマン”というオールカタカナの響きは魅力的であり
この男はこれまでどんな被写体を眼にしてきたのか?
下世話な方向ばかり想像を繰り返すほど。

ただ、この男の“詰めの甘い”ところと言うか・・・
私の期待した作品は手掛けていない。

色々な雑誌に登録は有るものの、その全ては出来上がり評価で
それが報酬になるかどうかはクライアント次第。
この男にとってはまだまだこの仕事で飯は食えないと言うのが現実らしい。


実はこの男S也。
6月に私が銀座をブラブラしてる時に声をかけてきた男。
そして私と同行していた“いつも出すチョッカイが未遂に終わる女”を
写真に撮った男。

その日以来、
私が東京遠征する際、食事をする相手が居ない時は必ず連絡する男。

写真もそうだが、絵や書なども文章もそう。
芸術分野っていうのは本人の個性が表現されるもので
それが趣味で終わるか?職業として成り立つか?
これは紙一重で、見る側のセンスに因るところが大きいもので
その作品に賛同する者が居れば金になるもの。

だからと言って芸術分野の制作者っていうのは
自分の表現力を他人に合わせようとしないから独り善がりで終わることも多いもの。
そこには芸術家としての意地もあるだろうし…。

生憎ながらこのS也クンがまだまだ貧乏なのは
彼の作品を偶然評価するものが居ないだけで、
もちろんこの先に大成する可能性は他と平等にもっているはず。

結局のところ・・・
彼がまだまだ素人と同然な立場であることから
彼の作品には何の価値も無く、
不当に自分の作品の値を釣り上げることのできる立場では無いことから
接触したのが私のズルイところ。

WEBページ等を作ってるとどうしても写真は必要になるが
どうしてもそこにはコピーライトって厄介なモノが発生する。

黙って使っててもばれなきゃイイってところもあるがバレたら大変。

そんなことで彼はウチの会社の契約カメラマンになったってわけ。
それも恐ろしいほど安い金額で・・・貨幣価値が違うのか?と疑うほど。

もちろん、安く使えるからという理由だけでは無い。
S也クン…ナイスガイである。
異常に金への執着の無さが修行僧レベル。

ただの立ち食いそばをご馳走したやっただけで
気持ち良いほどの「ありがとうございます」を発する男。

私にとっても、あんな「ありがとう」は初めてかもしれない。


そんな修行僧S也君を連れてと昨日は雨の中神宮球場へ 燕鯉戦を観戦。
雨が異常に嫌いな私は
当然降り出した雨に嫌気がさし、5回あたりで退散。


そんな仙人のようなS也に
私が“ちょっかいを出し続ける女”を加えて、

今日は埼玉スタジアムへ。

野球での雨は辛抱出来ないが
サッカー代表戦は気にしなかったりする私がいる。