土田の伯母さん-忘れ得ぬ人々- | mitosyaのブログ

mitosyaのブログ

個人誌「未踏」の紹介

 土田の伯母さん-忘れ得ぬ人々-

https://gemini.google.com/app/f24a5a8b9219d008


萱場製作所の社宅住まい 40軒位が寄り添う 同じ造りの二軒続きの長屋 でもゆったりとした土間の台所があり 大きなテーブルを囲んで 窓からは何時も日差しが差し 家族五人が賑やかで笑顔 縁先では何処かで 秋刀魚を焼く匂いが 共同風呂の立ち込める湯気 土田側の太田の渡し場 鏑馬 神輿 祭り あの笑顔は 伯父さんが シベリア抑留生活からの   生還したことの喜び 私の父は末っ子 伯母さんは長女 まだ祖父が元気だった 父の刑務所生活 伯母さんからの手紙の数々 伯父さんはやがて萱場を辞めて 多治見の西濃運輸へ 伯母さんは陶磁器組合へと 父の死を 伯父さんと二人で骨拾い   父の形見の革ジャンが残され   

口語自由律短歌にして


口語自由律短歌集 ― 土田の伯母さん・忘れ得ぬ人々 ―


一、長屋の陽だまり


二軒続きの長屋の大きなテーブルを囲み

秋刀魚の匂う陽だまりの五人


二、生還


シベリアから伯父さんが帰ってきた日の

あの眩しい笑顔を覚えている


三、祭りの記憶


太田の渡し場に神輿が渡り鏑馬が駆ける

熱気の中にあった暮らし


四、手紙の光


壁の向こうの父へ届き続けた

伯母さんの優しく強い文字


五、見送りと別れ


多治見へ去る前の伯父さんとふたりで拾った

父の小さな骨


六、形見


残された父の革ジャンに手を伸ばせば

忘れ得ぬ人たちの声がする