ライヒ - スティーブ・ライヒ (Steve Michael Reich; 1936-& | mitosyaのブログ

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個人誌「未踏」の紹介

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ライヒ - スティーブ・ライヒ (Steve Michael Reich; 1936-; アメリカ)

略歴

ライヒは1957年にコーネル大学哲学科で学士号を取得した後、1958年から1961年までニューヨークのジュリアード音楽院に在籍し、ウィリアム・バーグスマらに師事。1961年から1963年までは、カリフォルニア州のオークランドにある、ミルズカレッジでルチアーノ・ベリオとダリウス・ミヨーの元で学び、修士号を取得した。ライヒの作品、特に『ドラミング』(1971)では、アフリカ音楽の影響が色濃く、ライヒは特にAM・ジョーンズによる、ガーナのエヴェ族に関するアフリカ音楽の研究から影響を受けていた。やがてライヒは、ドラミングの研究のためにガーナを訪れるようになり、1970年にはガーナ大学アフリカ研究所でドラミングを集中して学んだ。また、ライヒは1973年から1974年にかけてシアトルでバリ島のガムランの研究も行った。さらにユダヤ人としての自らのルーツを探るようにヘブライ語聖書の伝統的な詠唱法を学ぶことで、「言葉が生む旋律」を再発見していく。

『ドラミング』以降、ライヒは自分自身が先駆者であった"フェイズ・シフティング"の技法から離れ、より複雑な楽曲を書き始める。彼は他の音のオーグメンテーション(あるフレーズやメロディの一部の音符を一時的に増幅させ、繰り返したりすること)のようなプロセスを用いる方へ移行する。『マレット楽器、声およびオルガンのための音楽』(1973)のような作品を作曲したのはこの時期である。

特に『フォー・オルガンズ』では、オーグメンテーションが用いられており、1967年に作曲された Slow Motion Sound はそのプロトタイプともいえる。この曲は演奏されたことはないが、録音された音や声を、音程も音質も変えずに、音を元の長さの数倍になるまで遅く再生するアイディアは、『フォー・オルガンズ』でも採用されている。その結果、4台のオルガンがそれぞれ特定の8部音符を強調しながら、11thの和音を奏で、マラカスがテンポの速い8部音符のリズムを刻む立体的な音の空間を持った曲が出来上がった。リズムが変化し、繰り返される手法が使われている。この曲は、初期のライヒの作品が循環的であるのに対し、直線的である点が異質で特徴的である。

1974年には、ライヒはライヒを知る大多数の人々から重要であると位置づけられる作品、『18人の音楽家のための音楽』を書き始めた。初期の作品の持つ作風へ戻りつつも、この作品には多くの新しいアイディアが含まれている。曲は11のコードのサイクルを基本としており、それぞれのコードには短い曲がそれぞれ割り当てられ、曲の終わりには元のサイクルへと戻っていく。セクション(楽曲内の区切り)は"Pulses"、 Section I-X、再び"Pulses"と名づけられている。ライヒにとっては、大人数のアンサンブルのために書いた初の試みであり、演奏家が増えることによって音響心理学的な効果はより大きなものとなり、その効果に夢中になったライヒは「もっとこのアイディアを探求したい」と語っている。また、ライヒはこの作品は過去に書かれたどの作品よりも、最初の5分間に含まれるハーモニーが豊かであるとも語っている。

同じ年に、ライヒは彼自身の哲学、美学、1963年から1974年の間に作曲した作品についてのエッセイが収録された本"Writings About Music"を出版した。2002年には"Writings On Music (1965-2000)"として、新しいエッセイが収録された本も出版されている。

1976年から1977年にかけては、ライヒはドイツ系ユダヤ人である自らのルーツを探るように、ニューヨークとイェルサレムにて、ヘブライ語聖書の伝統的な詠唱[要曖昧さ回避]法を学ぶ。1981年に作曲された『テヒリーム』は、ヘブライ語で詩篇もしくは賛歌を意味するタイトルが示す通り、ヘブライ語のテキストを女声が歌い上げる、4部に分かれた曲である。

1988年には、クロノス・カルテットのために『ディファレント・トレインズ』を書き下ろす。この作品においてライヒは、インタビューで録音された古い肉声を使用しており、その肉声が奏でる音程に合わせて弦楽器のメロディーが反復され、加速するといった新しい手法を用いている。曲は3部に分かれており、第二次世界大戦前のアメリカ、第二次大戦中のヨーロッパでのホロコースト、戦後のアメリカにおける汽車の旅が、汽笛の音を散りばめながら描かれている。1990年に、ライヒはこの作品においてグラミー賞最優秀現代音楽作品賞を受賞する。

1993年には、ライヒは妻で映像作家でもあるベリル・コロットとオペラ『ザ・ケイヴ』においてコラボレーションを行う。このオペラでは、彼はユダヤ教、キリスト教、イスラム教のルーツを探っている。ライヒとコロットは、飛行船ヒンデンブルク号の惨劇、ビキニ環礁での核実験、そしてより現代的な出来事、特にクローン羊ドリーを取り上げたオペラ『スリー・テイルズ』(2002)でも再度コラボレーションを行っている。

ライヒの音楽の影響

テクノミュージックやエレクトロニカのアーティストたちにも多大な影響を与えており、ライヒ自身もテクノに興味があることをインタビューの中で述べている。1999年には、ライヒ公認のプロジェクトとして、ライヒの楽曲を9人のテクノのアーティスト達がリミックスしたCD、"Reich Remixed"が発表される。日本からは、竹村延和("Proverb"をリミックス)、ケン・イシイ(『カム・アウト』をリミックス)が参加した。完成された楽曲は一旦ライヒの元へ送られ、曲によっては作り直しも命じられたこともあり、実質的にライヒが監修したCDであるともいえる。

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ライヒ:ディファレント・トレインズ/ピアノ・カウンターポイント/トリプル・クァルテット(ロンドン・スティーヴ・ライヒ・アンサンブル)

REICH, S.: Different Trains / Piano Counterpoint / Triple Quartet (London Steve Reich Ensemble)

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ライヒ:トリプル・クァルテット/エレクトリック・ギター・フェイス/大アンサンブルのための音楽/バーモント・カウンターポイント(吉田ミカ/フラスカ/クロノス・クァルテット)

REICH, S.: Triple Quartet / Electric Guitar Phase / Music for a Large Ensemble / Vermont Counterpoint (Yoshida, Frasca, Kronos Quartet)

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ライヒ:ナゴヤ・マリンバ/木片のための音楽/ヴィブラフォン、ピアノ、弦楽器のためのヴァリエーションズ/クリッピング・ミュージック/6台のマリンバ

REICH, S.: Nagoya Marimbas / Music for Pieces of Wood / Variations for Vibes, Pianos and Strings / Clapping Music / 6 Marimbas (Reich for Percussion)

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ライヒ:ニューヨーク・カウンターポイント/エイト・ラインズ/4台のオルガン(ライヒ)

REICH, S.: New York Counterpoint / Eight Lines / Four Organs (Reich)

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ライヒ:フェイズ・パターンズ/振り子の音楽/ピアノ・フェイズ/4台のオルガン(アンサンブル・アヴァンギャルド)

REICH, S.: Phase Patterns / Pendulum music / Piano Phase / Four Organs (Ensemble Avantgarde)

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ライヒ:フェイズ(ライヒ)

REICH, S.: Phases (Reich)

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ライヒ:プロヴァーブ/ナゴヤ・マリンバ/シティ・ライフ(ヒリヤー/ラブマン)

REICH, S.: Proverb / Nagoya Marimbas / City Life (Hillier, Lubman)

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ライヒ:マレット楽器、声とオルガンのための音楽(アマディンダ・パーカッション・アンサンブル)

REICH: Music for Mallet Instruments, Voices and Organ / Music for Pieces of Wood / Sextet

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ライヒ:2x5 (リミックス)(レオン/ヴァクラ/ミニック)

REICH, S.: 2x5 (remixed)

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ライヒ:エレクトリック・カウンターポイント/武満徹:すべては薄明のなかで

REICH: Electric Counterpoint / TAKEMITSU: All in Twilight

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ライヒ:マリンバ、ヴィブラフォンと打楽器のための編曲集(クニコ・プレイズ・ライヒ)(加藤訓子)

REICH, S.: Arrangements for Marimba, Vibraphone and Percussions (Kuniko Plays Reich) (Kuniko)

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ライヒ:ユー・アー(ヴァリエーションズ)/チェロ・カウンターポイント(ベイザー/ロサンゼルス・マスター・コラール/ガーション)

REICH, S.: You Are (Variations) / Cello Countertpoint (Beiser, Los Angeles Master Chorale, Gershon)

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ライヒ:テヒリーム/砂漠の音楽(ライヒ)

REICH, S.: Tehillim / The Desert Music (Steve Reich)

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ライヒ:ザ・ケイヴ(スティーヴ・ライヒ&ミュージシャンズ/ヒリアー)

REICH, S.: Cave (The) (Steve Reich and Musicians, Hillier)

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ライヒ:スリー・テイルズ(シナジー・ヴォーカルズ/スティーヴ・ライヒ&ミュージシャンズ/ラブマン/レイノルズ)

REICH, S.: Three Tales (Lubman)

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スーパー・オーディオ・コレクション 6

SUPER AUDIO COLLECTION (THE), Vol. 6

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ベスト現代音楽100

100 Best 20th Century Classics

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ディスカバー・ミュージック - 20世紀の音楽

Discover Music of the Twentieth Century

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エッセンシャル20世紀のクラシック

Essential 20th Century Classics