Ⅶ 構造主義と人間の問題 中村雄二郎(1925年) | mitosyaのブログ

mitosyaのブログ

個人誌「未踏」の紹介

イメージ 1

哲学 Ⅲ 岩波講座

 

10 09 09

 

 

人間の哲学

 

 

Ⅶ 構造主義と人間の問題
―想像力論との交錯において―

 

 

中村雄二郎(1925年)

 

 

構造主義による人間の解明の問題――想像力、イマージュ、人間や世界の了解・認識の方法について。 はじめに クロード・レヴィストロースの「人類学的構造主義」、ジャック・ラカンの「精神主義分析的な構造主義」、ルイ・アルチュッセルの「構造主義的マルクス主義」、ミッシェル・フーコーの「構造主義の立場に立っての新しい人間の科学の綜合」。 ●人間や文化の解明において「構造」ということが問題になることの意味について ●部分としての人間や文化でなく、全体としての人間や文化の対象化 ●構造主義と解釈学の問題 一 イマージュ・概念・構造 S・K・ランガーの『シンボルの哲学』 ~ <論理弁論的シンボル体系>と<現示的シンボル体系> H・ルフェーヴル ~ イマージュによる把握とイデーによる把握 芸術 ~ 生存のリズムの確認 哲学 ~ 存在の根本原理への問い レアリスム(実念論)に対するノミナリスム(唯名論)の登場 デカルトの「普遍数学」、ホッブスの「機械論哲学」、パスカルの「形状と運動」 概念は特殊に人間的であるのに対して、 イマージュは<世界そのもの>である。 近代哲学の課題 ~ いかにして「概念」の厳密化、非実体化をおしすすめながら、しかもイマージュ的な全体をもった人間と「世界」とを立ち入って解明していくか。 ヘーゲル哲学 ~ 観念的実在を内容(素材・質料)とした高度のフォルマリスム マルクス主義 ~ 物質(マチエール)を実在とした科学の指向。弁証法論理と「反映」の理論、構造の問題化と、曖昧さ ~ 構造主義へ マックス・ヴェーバー「イディアル・ティプス」、フロイト「精神分析学」、ゲシュタルト心理学、サルトル、メルロー=ポンティらによる現象学的考察、パーソンズ、シルズらによる行動科学理論。 二 想像力と解釈学の問題 ジルベル・デュラン ~ 「回復的解釈学」「還元的解釈学」 レヴィ・ストロース ~ 「社会学的解釈学」「構造的人類学」 C・G・ユング ~ 「アニムス―アニマ」 G・バシュラール ~ 「詩的象徴の現象学」 P・リクール ~ 「構造的人類学は科学であって哲学ではない」 人間的・社会学的事象の「科学」的把握、「人間の科学」とは、人間的・社会学的事象に対する新しい「客体化」の方法の発見――そのことを可能にしたのも「哲学的思考」であったとわたしは考えるのだが――と、そうしたそれぞれの領域における構造的モデルを手がかりにしての、素材(マチエール)に即してのかくれた法則と意味の発見・解明――これにも自由でディアレタティックな「哲学的思考」は参与する――とから成りたっているものとしてとらえなければならない。そしてここに「構造主義」という新しい「人間の科学」が、モラリスト的な柔軟かつ醒めた人間観察、素材(マチエール)あるいはフィジック(物質的、有形的なるもの)に即しつつそれを超えた自由な思考としてのメタ・フィジックの伝統のあるフランス思想の土壌に生れたゆえんもある。

 

 

中村雄二郎

 

 

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

 

中村 雄二郎(なかむら ゆうじろう、1925年10月13日 - )は、日本の哲学者。 

 

 

来歴・人物
東京都出身。第二東京市立中学、成城学園を経て、東京大学文学部卒業後、文化放送に入社。その後、明治大学法学部教授を長く務め、現在・明治大学名誉教授。西洋哲学をはじめ日本文化・言語・科学・芸術などに目を向けた現代思想に関する著書が多数あり、主要著作は『中村雄二郎著作集』(岩波書店、第1期全10巻・第2期全10巻)に収められている。山口昌男と共に1970年代始めから雑誌『現代思想』などで活躍、1984年から1994年まで「へるめす」(岩波書店)で磯崎新、大江健三郎、大岡信、武満徹、山口昌男とともに編集同人として活躍し、『かたちのオディッセイ』や『悪の哲学ノート』に結実。「講座・生命」vol.6以降、その動静が伝わってこない状況にあったが、岩波書店で編集者として長年中村雄二郎に伴走してきた大塚信一が『哲学者・中村雄二郎の仕事 <道化的モラリスト>の生き方と冒険』(トランスビュー)を執筆の際に東京にある中村宅を訪問。中村自身が2度の大病を経て、現在も平穏に暮らしている事が明らかになった(『哲学者・中村雄二郎の仕事 <道化的モラリスト>の生き方と冒険』(トランスビュー)のあとがきより)。

 

 

学説
代表作は、後掲『魔女ランダ考』である。中村は、王子が魔女である母ランダに迫害されるというストーリーのバリ島の野外演劇において示される、愛すべき母と憎むべき魔女という二重の背反した関係をあるときは服従しつつ、あるときは争いつつ克服することによって示される単なる理性的な知識を超えた身体・共通感覚に基づく実践的な知である「演劇的知」をもって「近代知の解体」を目指した。

 

 

浅薄な理解による構造主義批判などせず、構造主義の遺産を正当に評価したうえで、ことばへの関心と交錯させながら、人間の感覚にまで、測鉛を下ろして根底的な思索を進めている。

 

 

共通感覚とは
中村が『共通感覚論』なる自著で、用いた用語。「常識」のことを英語で「コモン・センス」というが、これはアリストテレスの哲学用語である「センスス・コムニス」が語源である。前者は「社会の各構成員の間に共通な感覚」という意味だが、後者は「五感の統合様式」という意味合いだった。両者を綜合しようという試みが本書でなされており、刊行当時に流行していたパラダイム論を身体論的に捉え直そうとしたものとみられる。

 

 

主な著書・著作
『講座 現代の哲学VI』「現代世界における合理と非合理」
毎日ライブラリー『人生論』「近代市民の倫理と行動様式」毎日新聞社 1958
世界文学大系13『デカルト パスカル』筑摩書房

 

 

1960年代
『現代情念論』勁草書房、講談社学術文庫
『日本文化の焦点と盲点』河出書房新社
山崎正一 / 田島節夫編『哲学研究案内』有斐閣
『パスカルとその時代』東京大学出版会
『日本の思想界』勁草書房
森本和夫、栗田勇『ことばと世界』
『近代日本における制度と思想』未來社
『哲学入門』中公新書
『言語・理性・狂気』晶文社
『言葉・人間・ドラマ』講談社

 

 

関連人物

都市の会
 
市川浩
大塚信一
河合隼雄
多木浩二
前田愛
山口昌男(「へるめす」同人でもある)

 

 

「へるめす」同人
磯崎新
大江健三郎
大岡信
武満徹

その他
梅原猛
井上ひさし
青木保
松岡正剛
金子郁容
栗本慎一郎:栗本を明治大学に招いたのが中村であった。

 

 

キーワード
パトスの知(深層の知 演劇的知 臨床の知) 汎リズム論 述語的世界 生命論の新しい展開

 

 

参考文献
大塚信一『哲学者・中村雄二郎の仕事 <道化的モラリスト>の生き方と冒険』(トランスビュー)