神 統 記  ヘシオドス | mitosyaのブログ

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個人誌「未踏」の紹介

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世界文学大系

ヘシオドス

神 統 記  

広川洋一 訳

ようこそ、ゼウスの娘らよ、さあ麗わしの歌を恵み給え。常磐にいます不死の神神の聖い族を称えよ、大地と星散乱える天さらに暗い夜から生まれ、鹹い海に育まれた神神を称えよ。語り給え、まずはじめに神神と大地が、また諸河と大浪寄せる涯しない海が、また輝く星辰、高く広がる天空とこれから生まれた、善の与え手なる神神がどのようにして生まれたのかを。   一一五

まず、原初に、カオスが生じた、さて次に〔雪を戴くオリュンポスの山頂に宮居するすべての不死の神々の〕常久に揺ぎない座なるタルクロス、さらに不死の神神のうちでもことのほかに美しいエロスが生じた、この神は四肢の力をゆるめ、すべての神神とすべての人間どもの胸うちの心と考え深い思慮をうち拉ぐ。さてカオスから幽冥と暗い夜が生じた。次に夜からアイテールと昼日が生じた。〔夜が幽冥と情愛の契りして身重になり生みおとしたのである〕さて大地はまずはじめに彼女自身と同じ大きさの星散乱える天を生んだ、天が彼女(大地)をすっかり覆い、至福の神神の常久に揺ぎない座となるように。また大地は鬱蒼とした山山に棲む山の精の女神たちの楽しい遊山の場所、高い山山を生んだ、  一三八

さてそのときからというものゼウスはこの企みのことを決して忘れることなく、もう疲れを知らぬ火の勢いを、奏皮の樹でもって与えようとはしなくなった、地上に暮らす死すべき身の人間どもには。だがシーアペトスの秀れた息子は彼(ゼウス)の裏をかいて、疲れを知らぬ火の、遠目にも著るき輝きを中空の大茴香(の茎に)入れて盗んだ。すなわち高空で轟くゼウスの心底を刺したのである。人間どもの間に火の遠目に著るき輝きを見たとき、彼の心は激怒した。すぐさま彼は火の代償として人間どもに禍悪を創った、すなわちその名も高い両脚曲がりの神(ヘーパイストス)がクロノスの御子(ゼウス)の意を畏んで、土から花恥ずかしい乙女の姿を創った。   五八四

神統記

提供: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

神統記(しんとうき、古典ギリシア語:θεογον?α、Theogonia、テオゴニアー)は、紀元前700年頃の古代ギリシアの詩人ヘーシオドス作の叙事詩である。ヘクサメトロス(長短短六脚韻)1022行からなる。冒頭の記述からヘーシオドスの処女作とされ、30代前半の作品と推定される。原題の「テオゴニアー」は「神々の誕生系譜」を意味する。

原初の混沌=カオスからの世界の創造、神々の系譜とその三代にわたる政権交代劇を描き、ギリシア神話の宇宙観の原典とされる。

特徴として、ゼウス政権の正統性、無謬性を強調する事(そのためティーターノマキアーやプロメーテウスの説話に若干矛盾が生じている)、女神ヘカテーを強く賛美している事などがある。

作品中には後世の挿入と見られる箇所もあり、965行から後を、元来は別の作品(『女傑伝』)であったと推定する研究者もいる。

神々の系譜
作者はまず前置きとして詩神ムーサへの賛歌から始め、オリュンポスの諸神と歴史を語り起こす。そしてオリュンポスの始まりと神々の誕生、ウーラノス - クロノス - ゼウスの三代にわたる政権交代劇を説き起こす。

原初の神々
最初に カオス(混沌)が生じた。その次にガイア(大地)とタルタロス(冥界)、そして エロース(愛)がともに誕生した。カオスからは エレボス(幽冥)と ニュクス(夜)が生まれ、両神が交わってニュクスは ヘーメラー(昼)と アイテール(清明な大気)を産んだ。

これらの原初の神々からは、人間のありようをめぐる概念の擬人化・神格化とも言える多数の神々が生まれたと、ヘーシオドスはうたう。ニュクスからは、夜の子供に相応しい、ヒュプノス(眠り)やオネイロス(夢)、またタナトス(死)やネメシス(復讐)、運命の三女神らが生まれている。

ティーターンの誕生
ガイアは独力でウーラノス(天空)とポントス(海)を生んだ。ガイアはウーラノスを夫とし、数多くの巨人や神々を次々に生んでいく。まずティーターン十二神を生んだ。すなわち、オーケアノス(大洋)、コイオス、クレイオス、ヒュペリーオーン(光明)、イーアペトス、テイアー、レアー、テミス(審判)、ムネーモシュネー(記憶)、ポイベー、テーテュース、そして末子の狡猾なクロノス(農耕)が生まれた。

またガイアは一つ目の巨人キュクロープス(ブロンテース、ステロペース、アルゲース)を生んだ。彼らキュクロープスはいずれも雷に関する名を持ち、のちにゼウスに雷を与えたという。そして五十頭百手の巨人ヘカトンケイル(コットス、ブリアレオース、ギューゲース)を生んだ。

クロノスとその子
ウーラノスはガイアとの間に生んだティーターン神族を恐れ、大地の体内に押し込めていた。しかしガイアはそれを怨みに思っていた。ガイアは鎌を用意して子供たちに渡し、一矢報いる策略を練った。ある夜、ウーラノスがガイアに覆い被さると、末子のクロノスがウーラノスを鎌で去勢し、切断された男根を放り投げた。ウーラノスの男根からは原初の美の女神アプロディーテーが生まれた。

クロノスはレアーとの間に光り輝く子供たちを生んだ。ヘスティアー、デーメーテール、ヘーラー、 ハーデース、 ゼウスらの兄弟である。しかしクロノスは、父ウーラノスとガイアから、自分の子供に打ち倒されるであろうとの予言を受けており、それを恐れたクロノスは生まれた子供たちを飲み込んでいった。しかし、ゼウスだけはレアーからガイアに渡され、大地に隠されて岩を身代わりとし、難を逃れた。長い隠遁ののちゼウスは成長し、クロノスを打倒して兄弟たちを助け出した。


参考書籍
ヘシオドス 『神統記』 岩波書店
翻訳
『神統記』 廣川洋一訳(岩波文庫)
ヘシオドス『神統記』私訳


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ヘーシオドス

提供: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ウィキメディア・コモンズには、ヘーシオドスに関連するカテゴリがあります。ヘシオドス(希: Ησ?οδο?、英: Hesiod)は、古代ギリシアの叙事詩人。紀元前700年ごろ活動したと推定される。『神統記』、『仕事と日(仕事と日々)』の作者として知られる。

父親は元は商人であったが破産してボイオティアに住み開拓農家として父や弟と農耕に励んだ。また、しばしばムーサ崇拝の地であるヘリコン山を訪れた。『神統記』によれば、ヘシオドスが羊を飼っているとき、突然にムーサが詩人としての才能をヘシオドスに与えたという。

『仕事と日(々)』によれば、弟との遺産相続をめぐる裁判に巻き込まれた。地元の領主は弟からの賄賂を受けてヘシオドスが自分に忠実でないと難じて遺産である筈の土地を没収して弟に与えてしまった。このため、憤懣やるせなかった彼は旅に出て詩人として生活するようになったのだと言う。

アウリスで詩人ホメロスと詩を競ったとされる。戦争と武勇を讃える『イリアス』を歌うホメロスは聞き手の胸を熱くさせるが、対するヘシオドスは牧歌的な『仕事と日』を歌った為、平和な詩を愛する時の王の采配によって勝利を与えられた。

彼の最期については、古代にすでに異伝があり、トゥキディデスの伝えるロクリスに没したとする説と、7世紀の資料の伝えるオルコメノスに没したとする説がある。

今日ヘシオドスの真正な作品と一致して認められるのは『仕事と日(々)』のみである。『神統記』の作者には論争があるものの、ヘシオドスの様式に極めて近いことは間違いがない。

『仕事と日(々)』は勤勉な労働をたたえるとともに、怠惰と不正な裁判を非難している。また、同書の一部分が世界最初の農事暦であると考えられている。『神統記』は神々の誕生と戦いを描き、ゼウスの王権の正当性を主張している。
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