与田準一 「光と影の絵本」  | mitosyaのブログ

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個人誌「未踏」の紹介

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 日本児童文学体系
 
 与田準一

 

 少年詩篇

川は流れている

川は流れている。

あるときは
クチナシを流したように、きいろに。
あるときは
はにかんだ少年のように、バラ色に。

川は流れている。

川しものほうからふいてくる風がある。
水のおもてをさかなでしたり、
とんぼがえりさせたりしているときがある。
いちめん、ちくおんきの針をこぼすように、
雨がブスブスつきささっているときがある。
そんなときも川は流れている。

水と空気が一つにすんでいる。
おだやかな日にしても同じだ。
流れがとまっていないことをためすためには、一枚の木の葉を投げさえすればいい。

川は流れている。
まえへまえへと流れている。
(銀河 昭和二二年一月)

 

 

 実死なず
 
秋風がふいている。
その家に、おとついまで、一人の少年と、
少年のおかあさんが住んでいた。
 
秋風がふいている。
その家に、きょう、ひとりの少女と、少女のおかあさんが越してきた。

庭土に----ふかれている。白いちょうのはね----いや、それは、少年がわすれていったらしい小さな手帳だった。
越してきた少女は、ふと、それをひろって、あけて見た。

○月○日
かあさんが、きょうも、ぼくに聞いた。
「信太のたべているそのくりの実が、もしもこの世にさいごの一つなら、信太はそれをたべる?それとも庭にうめる?」

 

 

童話篇

「光と影の絵本」

 カ ラ ス

戦争は、終わった。
どんなかたちで、いつ終わるものやら、いや、終わりなどということは、考えられもしなかった戦争が、アッケなく、おしまいになったのである。
日本は、手を上げたのであった。
バンザイの、手ではない。
バンザイをしたあの手を、声なく、空へむかって、

空は、----そうだ、この山の美しい空を、そうして、わけもなく、あおぐことのできるのは、何年ぶりだろう。
夏の太陽が、ボアッとてっている。
 糸子も、桂吉も、未知も、糸子のきょうだいたちも、山下さんも、そのおくさんも、十作さんも、そのおくさんも、そうして、シラハエのおじいさんも、山下さんの屋敷うちのみんなが、山の空をあおいで、「わ、が、く、に、は、ま、け、た。」と、

カラスはゆっくりと、みんなの頭上を旋回する。なにをねらっているのだろう。
カラスにとっても、このしずかな、ボアボアッとした空は、ひさしぶりなのだろう。
 ゆっくり、ゆっくり、空中につばさをうかせて、なんと気もちよさそうな、あの飛行ぶり----。
 (小学生全集 筑摩書房 昭和二八年六月)

 

 

与田凖一
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

 

与田 凖一(よだじゅんいち、1905年6月25日[1] - 1997年2月3日)は日本の児童文学者・詩人。昭和期の日本の児童文学界において指導的役割を担った。福岡県出身。作詞家、橋本淳の父。與田凖一の表記もある。

 

 

経歴
1905年、福岡県山門郡瀬高町(現在のみやま市瀬高町)上庄に浅山与太郎、スエの次男として生まれる。翌年、親戚の与田家の養子となり、以降、与田姓を名乗る。養父母を相次いで亡くしたため、実家である浅山家で育つ。

 

 

筑後市で小学校教員として働きながら、同郷の北原白秋に師事した。健康上の理由で職を辞して上京し、赤い鳥の編集を担当。巽聖歌らと親交を結ぶ。その後、本格的な執筆活動を開始し、1929年、初の童謡集「旗・蜂・雲」を出版する。

 

 

1950年から1960年まで日本女子大学で講師として児童文学を講じ、1962年より日本児童文学者協会の第6代会長を務めた。1967年、「与田凖一全集」でサンケイ児童出版文化大賞、1973年、「野ゆき山ゆき」で野間児童文芸賞を受賞。門下にはまど・みちおをはじめ、岩崎京子、生源寺美子、あまんきみこらがいる。日本ペンクラブ会員。

 

 

郷里のみやま市瀬高町の清水寺には与田の詩碑がある。また、毎年10月には「与田凖一児童文学祭 むっきっきまつり」が催されている。[2]

 

 

おもな作品

 

 

作品集
与田凖一全集 全6巻 大日本図書, 1967

 

 

童話

 

 

猿と蟹の工場 版画荘, 1935
幼稚園童話 新生堂書店, 1939
山羊とお皿 第一書房, 1940
土ヲキセタタネ カタカナ童話 大日本雄弁会講談社, 1943
海の少年飛行兵 大和書店, 1944
海のなかの歌 川流堂書房, 1946
レールの歌 廣島圖書, 1949
さんたろうもも 新選童話集 人文書房, 1949
だってさんともしもさん 西荻書店, 1950
ころちゃんとオートバイ 國民図書刊行会, 1950
チューリップの町 國民図書刊行会, 1950
赤い電話器 西荻書店, 1951
五十一番目のザボン 光文社, 1951
ふうせんのおしらせ 福音館書店, 1959
クミの絵のてんらん会 実業之日本社, 1965
なにしているの? 童心社, 1965
あかちゃんのはなし 福音館書店 1967
ビップとちょうちょう 福音館書店, 1967
ピアノのたまご 小峰書店, 1969
小さな町の六 あかね書房, 1972
トムのまめサムのまめ 岩崎書店, 1972
ポプラ星 講談社, 1974-1979
ばらのいえのリカおばさん フレーベル館, 1975
ぼくがかいたまんが 国土社, 1975
長者どんのむこえらび あかね書房, 1975
かえるのあまがさ 童心社, 1977
まいごのとむ あい書房, 童心社(発売), 1977
うみひこやまひこ 岩崎書店, 1977
きかいがしまむかし 喜界島民話より フレーベル館, 1979
ハーヨとおじいさん 童心社, 1981
いたずらぎつね 福岡県 第一法規出版, 1981
はははるだよ 金の星社, 1982
おばあさんとこぶたのぶうぶう ひさかたチャイルド, 1982
ねことごむまり 童心社, 1987
ちくたくてくはみつごのぶただ 童心社, 1990

 

 

翻訳

 

 

まりーちゃんとひつじ(フランソワーズ)岩波書店, 1956
ベルと魔物 ボーモン夫人 講談社, 1963
おひげのとらねこちゃん サムイル・マルシャーク 橋本みさご共訳 童心社, 1968
わたしとあそんで(マリー・ホール・エッツ)福音館書店, 1968
あめのひって すてきだな カーラ=カスキン 偕成社, 1969
ちいさなとりよ M.W.ブラウン 岩波書店, 1978
せんろはつづくよ M.W.ブラウン 岩波書店, 1979

 

 

童謡・唱歌

 

 

旗・蜂・雲 童謠集 アルス, 1933
戦ふ兵隊蟻 童謡集 中央公論社 1941
ヨイコノムラ 農山漁村出版所, 1943.
二つの地球 童謡集 育英出版株式会社, 1947
日本童謡集 (編)岩波文庫, 1957
森の夜明け(作曲:中田喜直)
ことりのうた(作曲:芥川也寸志)
ステンカ・ラージン(ロシア民謡)
野ゆき山ゆき 少年少女詩曲集 大日本図書, 1973

 

 

校歌

 

 

みやま市立下庄小学校
みやま市立上庄小学校
筑後市立下妻小学校
石岡市立園部小学校
碧南市立棚尾小学校
小平市立小平第十小学校
石岡市立国府中学校
秩父市立影森小学校
塩尻市立洗馬小学校

 

 

詩集

 

 

伊勢参宮 詩集 大成出版, 1944
詩集海の少年飛行兵 青少年におくりて 大和書店, 1944
少国民のための大東亜戦争詩 (編)国民図書刊行会, 1944
おひさまがいっぱい 童心社, 1975
ゆめみることば 教育出版センター, 1980

 

 

評論

 

 

童謠覺書 天佑書房, 1943
幼兒の言葉 第一書房, 1943
子供への構想 児童文学論集 帝国教育会出版部, 1942
私達の詩の勉強 広島図書, 1951
詩と童話について すばる書房, 1976
青い鳥・赤い鳥 講談社, 1980

 

 

児童文学者
与田準一の生涯
http://www.geocities.jp/bicdenki/newpage92.htm