【伝統芸能的音楽グループ】

 モーニング娘。(略:モーニング)は、結成当時、世界的にほぼ前例のない、1つのグループが随時メンバーの加入と卒業を繰り返しながら、同じ楽曲を受け継いで活動を続けていく先駆的な音楽グループである。そして、これまで47名が在籍し、その内39名が卒業した(2026年2月)。

 日本には "伝統文化" や "伝統芸能" と呼ばれる歌舞伎、能楽、茶道、華道さらに大相撲や落語など「昔から続けられている独特な文化や芸能」が多く存在している。「モーニング娘。」もそれら伝統的なモノとして存続しており、現在のアイドルグループの礎を作った。

 

【モーニング娘。時代区分:Periodization of Morning Musume。

歴代CDシングルとメンバー変遷

 これまでメンバー編成による特徴、属性そして楽曲は時代ごとに変化してきたためそれらをまとめてみた。

 

<初期>1997-1998 : Early Era

 90年代のテレビ番組は『進め!電波少年』のようなリアリティ・ショー番組が世間の脚光を浴びていた。そういった影響を受け、テレビ東京『ASAYAN』の(女性ロック)ボーカルオーディション番組という一般人がスターになる模様をエンタメという形で放映された。「モーニング娘。」は中澤裕子をグループリーダーに据え、石黒彩飯田圭織安倍なつみ福田明日香というオーディションの落ちこぼれ5人で結成された。この5人は初期(オリジナルメンバー)と呼ばれている。そしてメジャーデビュー後すぐに追加メンバーが募集され、2期として保田圭矢口真里市井紗耶香が加わった。しかし、福田明日香が1年ほどで「グループを辞める」という決意をしたため "卒業" という形で送り出す「メンバーの加入と卒業を行うアイドルグループ」のフォーマットが確立した(※ただしグループを存続させるための卒業・加入など、フォーマット化に至るまでの経緯は諸説あり、ほとんどが偶然の産物とみられる)。

 この初期と2期までの構成メンバーが、モーニングとして「初期」とみられる。楽曲の特徴としては、色っぽい大人の女性をコンセプトとしており『サマーナイトタウン』『抱いてHOLD ON ME!』は妖艶で落ち着いた雰囲気を持つ。また『Memory 青春の光』のカップリング曲『Never Forget』は福田明日香のための卒業ソングであり「娘。の卒業」と「卒業ソング」がセットで成立する形や、「タンポポ」という最初のグループ内ユニットもこの時すでに確立された。

初期

 

<黄金期>1999-2004 : Golden Era

 第二回目の追加オーディションにより3期の後藤真希が1人合格。しかも13、4歳という若さ、見た目も金髪という今までのモーニングのメンバーとは全く雰囲気の異なるメンバーが追加された。初期は大人の雰囲気でR&Bの現代的な音楽をイメージしていたが、同時期に宇多田ヒカルの登場によりR&B路線では勝負できないと判断し、楽曲の雰囲気も一気に変わった。そして、モーニングの代表曲になる『LOVEマシーン』が発表される。また、テレビ番組に毎週のように出演し、一気に国民的アイドルグループとして認知される。そういった大きな流れの中で4期の石川梨華吉澤ひとみ辻希美加護亜依の4人が追加され11人に増え、大所帯のグループになる。そして『恋愛レボリューション21』を最後に初代リーダーの中澤裕子は卒業、2代目リーダーのバトンは飯田圭織へ渡された。その後、リリースされた『ザ☆ピース』のディスクジャケット写真から「黄金期」と呼ばれている。

 モーニングが国民的アイドルグループとして確立されたこの時に、5期の高橋愛紺野あさ美小川麻琴新垣里沙が加入し、この辺りまでがメディアの露出としては全盛期にあたる。その後、黄金期の象徴だった後藤真希が卒業、入れ代わるのように6期の藤本美貴亀井絵里道重さゆみ田中れいなが加入した。この後藤真希がいた期間はグループの "高度成長期" であり「黄金期前期」となる。そして、6期加入以降は歴代最大人数15人のメンバーが1つのグループとして成しており、その "カオスな時代" として「黄金期後期」とみられる。この6期までのメンバーは「黄金期」体験者とされており、飯田圭織のリーダー時代とほぼ重なる。そして、エースボーカルだった安倍なつみ卒業後、2004年以降はメディアの露出が徐々に下降気味になっていく。

 黄金期の音楽は『LOVEマシーン』を皮切りにカオスな音楽性とバブル崩壊後の景気悪化に対する前向きな未来志向、『ザ☆ピース』の「選挙の日って ウチじゃなぜか 投票行って 外食するんだ」という歌詞に家族や社会との関わりを含ませていた。またメンバーの見た目も可愛いらしいキャラからカッコいいまで、身長も高い低いなど多種多様な個性がみられる。また、黄金期はユニットも多く結成され、中でも「プッチモニ」「ミニモニ。」が大きく注目された時期でもある。

黄金期

 

青空期>2005-2007 : Blue Sky Era

 モーニングのオリジナルメンバー全員卒業後、矢口真里が3代目リーダーに就任したが、スキャンダルが発覚したためリーダー就任後数か月で脱退した。そして急遽、吉澤ひとみが4代目リーダーになった。このドタバタ劇は黄金期末期、全盛期の終焉として象徴的な出来事となる。その後、7期として久住小春が新しいメンバーとして1人加入した。この時期のメンバーは全体的に背が高く、モデル体形が多いアイドルグループとなり「青空期」と呼ばれるようになった。この青空期は「黄金の9人(『ザ☆ピース』時のメンバー)」に対して「青空の10人」と呼ばれており、アルバム「レインボー7」の収録曲『青空がいつまでも続くような未来であれ!』から名前が取られている。初期は確固たるキャラクターや敗北から立ち上がっていく物語性を持っていたのに対し、青空期はモーニングが全盛期の頃にオーディションで加入したメンバー達のためポテンシャルが高く、パフォーマンスもよりキレのある、現代的なアイドルの表現に近いものとなった。音楽面では飯田圭織の卒業ソング『THE マンパワー!!!』を皮切りに『直感2〜逃した魚は大きいぞ!〜』『SEXY BOY 〜そよ風に寄り添って〜』など怪奇的な曲が発表されており、初めて聴く場合、理解が追いつかない実験的な曲が多い。その一方で『歩いてる』のような王道的な落ち着いたアイドルソングも世に送り出している。

青空期

 

<プラチナ期>2008-2010 : Platinum Era

 2007年に吉澤ひとみが卒業し、藤本美貴が5代目リーダーに就任したが、スキャンダルが発覚したためリーダー就任25日間後に脱退した。青空期同様のドタバタ劇により、世間一般からのイメージダウンが免れないまま6代目リーダーに高橋愛が就任した。この時代は5期の高橋愛、新垣里沙、6期の亀井絵里、道重さゆみ、田中れいな、7期の久住小春、そして新たに加入した8期 の光井愛佳、中国から来たジュンジュンリンリン「プラチナ期」とされており、9枚目のアルバム『プラチナ 9 DISC』から取られている。また、ハロプロアイドル全体としては第2の世代に位置する。プラチナ期の特徴はパフォーマンス至上主義であり、黄金期の "混沌(カオス)" 的なものでは無く、統一性が取れているがそれぞれ個性的なキャラクターが共存していた。一般人の認知度や人気は下火になっていたが、この時の高いパフォーマンス、カッコいいお姉さん達のイメージがその後のハロプロ全体に大きな影響を残すこととなり、近年では最も再評価された時代である。楽曲の特徴としては『リゾナント ブルー』『女が目立って なぜイケナイ』などカッコよく強い女性のイメージがある一方、どこか物悲しい面もある。そして2010年末に亀井絵里、ジュンジュン、リンリンという3人同時卒業の伝説的なコンサートが行われ、プラチナ期が終焉した。

プラチナ期

 

<地平本願期>2011-2012 : The World Peace Era

 2010年秋のコンサートツアー『ライバルサバイバル』にて、3人のプラチナメンバーが去っていった後、モーニングのメンバーはたった5人になる。そんな中、9期メンバーのオーディションが行われ、譜久村聖生田衣梨奈鞘師里保鈴木香音の4人が加入された。9期の加入により一気にモーニングの雰囲気が変わったが、2011年は東日本大震災という日本が絶望の淵に立たされた年であり、かつて日本がバブル崩壊後の不景気に対して明るい未来を提示したモーニング娘としてもチャリティーイベントなど開催し復興支援をしていた。そんな中、エースリーダーでモーニングの象徴であった高橋愛が卒業、7代目リーダーに新垣里沙が就任した。そして高橋愛卒業の時、10期の飯窪春菜石田亜佑美佐藤優樹工藤遥の4人が新たに加入した。この短期間で8人もの加入、世代別のギャップがはっきりとしたグループになり、プラチナ期のイメージから脱出していた。この大きな転換期を『この地球の平和を本気で願ってるんだよ!』から取って「地平本願期」としている。この時期の楽曲の特徴は、それまでカッコいい女性の曲だったプラチナ期とは一転して「子どもと大人のお姉さんのグループ」という構図を利用し、『ピョコピョコウルトラ』という児童向けで明るく実験的な楽曲、そして その後のモーニングがEDM路線になる『恋愛ハンター』という象徴的な楽曲も発表された。

地平本願期

 

<カラフル期>2013-2014 : Colorful Era

 当時、雨後の筍のようにアイドルグループが誕生していたなか、モーニング娘の存在は他のアイドルグループと一線を画すものの、その老舗の看板であるがゆえ "敷居の高い" イメージがついてしまったことが、人気低迷の理由の一つとなっていた。いわゆるアイドル戦国時代真っ只中、新垣里沙の卒業により道重さゆみが8代目リーダーに就任した。そして、モーニング娘が再び人気巻き返しを図る50枚目のシングル『One・Two・Three』が発表された。この曲はつんく楽曲の中では珍しく、洋楽の文法を使ったミニマルな曲であり、モーニングとしても大きな分岐点を生んだ曲でもある。また事務所としても売れるために、大々的なキャンペーンが行われ「新しく生まれ変わったモーニング娘。」という印象を世間に植え付けた時期でもある。2013年には11期の歌唱力の高い小田さくらが1人で加入。長らくモーニング娘の歌を支えた田中れいなが卒業し、黄金期、プラチナ期体験者は道重さゆみだけとなった。そして2014年には構造改革が行われ「モーニング娘。」の後ろに西暦の下二桁が付き「モーニング娘。'14」(ワンフォー)となった。ワンフォー時代は世代交代、フォーメーションダンス、EDMという新しい路線など、話題となるきっかけが生まれ、メディア露出も増加し、多くの人や若い子にも再び認知されるようになった。元々メディアの露出が多く、経験豊富な道重さゆみというプレイングマネージャーと若手メンバーたちの構図が上手く機能した "最盛期" である。13枚目のアルバム『 ⑬カラフルキャラクター 』から取り「カラフル期」と呼ばれている。

カラフル期

 

<ふくむらみず期>2015-2023 : Mizuki Fukumura’s Era

 2014年末、ワンフォーの伝説的コンサート『GIVE ME MORE LOVE』にて道重さゆみは卒業。その後、9代目リーダーとして譜久村聖が就任した。歴代のリーダーの中でも譜久村聖は長らくリーダーを務め上げ、その長期政権から「ふくむらみず期」と命名された。これは "7、8期" という間の世代が早めに卒業してしまった影響と考えられる。これまでは長くても2、3年程度の為、彼女のリーダー時代は「2015-2016 : 前期」、「2017-2018 : 中期」、「2019-2023 : 後期」と3つの属性や特徴に分けられる。

 「前期」は12期の尾形春水野中美希牧野真莉愛羽賀朱音の4人が加入した。モーニング娘。'15は全員若手メンバーで構成されたが、経験値が少ない為、メンバー全員が目の前のことで一杯になっていた。そしてモーニング娘最後のエース的存在だった鞘師里保が卒業、立て続けに鈴木香音が卒業した時期であり、パフォーマンスの能力の差が大きくなってしまい、ワンフォーの輝きから一転して不安定の時代となった。その時代を象徴するかのようにシングル曲『冷たい風と片思い』はつんく楽曲の中でも珍しく暗く悲しい曲である。一方で『泡沫サタデーナイト!』というディスコ調で明るい傑作は、当時、新進気鋭だった津野米咲が作詞、作曲した。

 「中期」になると、13期である加賀楓横山玲奈が、モーニング初の2人加入した。その直後に、これも初となる兼任メンバーとしてカントリーガールズの森戸知沙希が14期としてモーニングに加入。『BRAND NEW MORNING』という楽曲タイトル通り心機一転とグループの安定化を目指した期間であり、特にモーニング娘。'17はグループの成長が顕著にみられる。しかし、かつてのモーニング娘のイメージだった "個性" のぶつかり合いとは異なり、全員が似た髪型、黒色で統一性のあるグループになっていた。森戸知沙希の加入と入れ代わるように工藤遥が卒業、その後に尾形春水、飯窪春菜が続いて卒業した。

 「後期」は15期の北川莉央岡村ほまれ山﨑愛生の3人が加入。それにより歴代2番目となる14人の大所帯グループとなる。15期の加入で世代交代の意識が始まるようになるが、新型コロナウイルスの発生で "コロナ禍" が始まり、世界中が混乱の渦に陥れた。その影響で2020年春のコンサート『 MOMM 』が流れてしまった。混乱の最中、感染対策として声出し禁止のコンサートが行われるようになり、数多くの有名人から推しメンとされた佐藤優樹が2021年に卒業。翌年には森戸知沙希、加賀楓と第三世代の本格的な卒業ラッシュが始まる。2023年末にはリーダーの譜久村聖が卒業した。一方で、2022年には16期として櫻井梨央が1人加入、翌年には17期として井上春華弓桁朱琴が次の新しい世代として加入した。「後期」は『Chu Chu Chu 僕らの未来』のような前衛的な音作りもある一方で、『すっごいFEVER!』ではかつてのつんくっぽい香りが仄かにするようになる。

 ふくむらみず期を総括すると、印象論になるが「前期→中期→後期」となるにつれて、つんく楽曲の雰囲気がなんとなく明るく、前向きになっていってるように思える。その "前期" の真剣さ、真面目さに引きずられてしまったのか星部ショウが作詞・作曲した『ムキダシで向き合って』は堅めな音であるが、「後期」の『Wake-up Call~目覚めるとき~』では軽い音になっている。

 

ふくむらみず期

 

<むらさ期>2024-in activity : Purple Era

 譜久村聖の卒業後、生田衣梨奈が10代目リーダーに就任した。2024年には長年モーニング屈指のダンサーとして活躍した石田亜佑美が卒業。その翌年、恐らく今後抜かされることのない、歴代最大の在籍日数5301日で皆勤賞を成し遂げた生田衣梨奈が卒業した。そして11代目リーダーとして野中美希が就任した。2025年は生田衣梨奈に続いて、秋のコンサートでは羽賀朱音と横山玲奈が二人同時卒業した。その数週間後には北川莉央がFCのソロコンサートで卒業。この怒涛の卒業ラッシュによりグループメンバーが8人となった。また、2026年には最後のワンフォーメンバーである小田さくらが卒業することが決まっている。

 この時代は、10代目リーダーである生田衣梨奈(紫→黄緑)、サブリーダーの小田さくら(ラベンダー)、野中美希(パープル)の3人のメンバーカラーにちなんだ暫定的時代区分として「むらさ期」としており、現在まで続いている。これまで黄金期が第一世代(1~4期)、プラチナ期が第二世代(5~8期)、ふくむらみず期は第三世代(9~14期)が中心となっていた中、むらさ期は15期以降の第四世代が中心的になっている。

むらさ期

 

【プロデューサーつんく♂】

 忘れていけないがプロデューサーつんく♂の存在である。つらつらとモーニング娘。の歴史を簡略的に書いていったが、同時にこれはつんく♂の歴史でもある。「モーニング娘。」がここまでブランドを保ち続けている理由の一つに "つんく♂" という影の存在がある。彼の楽曲のレンジの広さ、作詞・作曲の独特な感性や世界観があり、また優秀なアレンジャーを発掘する審美眼はもっと評価されていいかもしれない。彼が2014年10月に声帯摘出してからの作詞の変化など、しっかり下調べをしているわけではないが、それまでと比べて "外(社会)に物事の関心が向かっていた" のが、つんく自身、つまり "より人間の内側" に向かっているような気がする。あくまで想像だが、彼が死線を潜り抜けた結果、生きてるとは何か、という人間的なテーマが基軸になったかもしれない。これからどういう楽曲が生まれるか楽しみではあるが、一つ危惧していることとして、モーニング娘。のメンバーは入れ代わっていくが、つんくの代わりは未だいないことである。

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