いつも冬水社コミックスをご愛読いただきありがとうございます。

また冬水社ホームページや編集部ブログもご覧いただきましてありがとうございます。



冬水社は、19931月に月刊『ラキッシュ』を創刊して以来漫画誌を発行し続け、20162月現在で漫画雑誌発行を業務とする出版社として24年目に入りました。これほど長く雑誌を出版し続けることが出来たのは、ひとえに冬水社の出版する漫画を支え、応援して下さる読者の皆さんがいてくれたからに他なりません。改めて皆様の温かく力強く、そして頼もしいエールに深く感謝いたします。



さて、このたび編集部としてブログで皆様にご説明する機会をいただきたいと思ったのは、冬水社を応援し続けて下さる読者の皆さんに応えるためにも、長年消えない「いち*ラキ編集部と冬水社へのいわれのない噂」についてご説明と否定をしたいと思ったからに他なりません。



先日、いち*ラキ編集部宛に若い読者さん数名から抗議のお手紙を頂きました。文面から察して知り合い同士なのかも知れませんが、おそらくラキッシュ創刊より後に生まれた読者さんです。



抗議の内容はいくつかありましたが、大きく分類すると以下の2つになります。

<1> いち*ラキ編集部は、同人誌を否定し、作家さんが同人誌をやっていると知るとその作家さんに仕事をさせず、いち*ラキから追い出してしまっていたそうですが、それはひどくないですか?

<2> いち*ラキ編集部はボーイズラブのジャンル(以下BL)を嫌い、BLを描きたい作家さんの意志を無視して無理やり男子の友情ものや男女の恋愛ものを描かせているようですが、BLを否定するのならなぜG・DEFENDを掲載しているんですか?



ネット社会となって久しい中、いち*ラキ編集部に関するこうした噂が蔓延している雰囲気は、10年以上前から編集部でも不確実ながら認識していました。しかし今回のように直接抗議としてお手紙を頂いたのは初めてです。これを機に、これらの噂について編集部からはっきりと否定をさせていただきたいと思います。







まず<1>の『いち*ラキ編集部は、同人誌を否定し、作家さんが同人誌をやっていると知るとその作家さんに仕事をさせず、いち*ラキから追い出してしまっていたそうですが、それはひどくないですか?』についてお答えします。



冬水社は創業以来23年以上の間、冬水社の作家さんに同人誌を禁止したことは、ただの1度もありません。

創刊時からの読者さんならご存知かと思いますが、冬水社ではデビューして10年以上同人誌と平行しながら冬水社に原稿を寄せコミックスを何冊も出した作家さんもいました。



作家さんが「私は同人誌をやっています」と編集部に自分から教えてくれれば編集部はその作家さんが同人活動をしていることは分かりますが、そうでない作家さんについては同人活動をしているのかしていないのかは、まったく編集部には分からないことです。編集部が作家さんの同人活動について調べるということもありません。冬水社の仕事にかかわらない作家さんのプライベートのことにまで言及する権利は編集部にあるはずない、というのが冬水社の考え方です。



冬水社に元在籍していた作家さんが、自分の同人誌で「編集部には言わないでください」等のお願いの文章を書いていたとしても、それもおそらく<1>のような噂を憶測で信じてしまい書いてしまったのだと推察します。





冬水社の前身は同人誌です。ラキッシュ創刊前は、冬水社は即売会や書店さんで同人誌の販売をしていました。その売り上げを申告するために税務上会社を作ったのが冬水社の始まりです。ただ、当時は今と異なり即売会に企業ブースはなく、法人はイベントに参加できない決まりがありました。

会社設立後にその事実を知った当時の冬水社スタッフに、当時の即売会の管理者の皆さんはとても好意的で親身な対案等も出してくれました。ただ恩のある同人誌即売会に自分たちが迷惑をかける事がとても怖かったので、冬水社はイベントから退き、小規模ながらも自分たちの力で商業出版社としての道を歩む選択をしました。

もし、あの当時の即売会が法人会社参加を認めていてそこに企業ブースというものがあったなら、冬水社はあの時同人誌を退くという選択をしていなかったと思います。



冬水社は同人誌という形に無限の可能性を感じています。それは昔も今も変わりません。描きたいものを描きたいように描く創作の自由。その喜びをパワーに作品を描き、それを他者に発信する。その最初の一歩を踏み出せる場所、それが同人誌であり即売会です。創作活動の拡がりはそれなしにはありえず、その一歩を踏み出せる場所と形がなければ、商業誌、同人誌、すべての漫画創作の未来はまったく存在しなくなるのです。







次に<2>の『いち*ラキ編集部はボーイズラブのジャンル(以下BL)を嫌い、BLを描きたい作家さんの意志を無視して無理やり男子の友情ものや男女の恋愛ものを描かせているようですが、BLを否定するのならなぜG・DEFENDを掲載しているんですか?』

についてお答えします。



この質問に関しては、単純に普通に考えて下さい。『いち*ラキ』にG・DEFENDが掲載されているのは、いち*ラキ編集部がBLジャンルを否定していないからです。

森本先生のG・DEFEND20周年記念イラスト集をご覧いただければ編集部のGDへの愛情が深く込められているのが、GDファンの方にはわかっていただけると思います。



冬水社は同人誌時代、創作ボーイズラブのジャンルで活動していました。その流れでラキッシュ創刊となった23年前、冬水社の出版物の全てはBL作品でした。

しかし、同じジャンルで長い年月にわたる漫画創作が、作家にとって作品を描く上での大きな障壁となることに気づきました。その時編集部は2つの選択肢のどちらかを選ばなければならない岐路に立たされました。



1つは

『ジャンルを変えずにループに陥った作家を雑誌から落とし、新しい作家に入れ変えて雑誌を存続させていく』

もう1つは

『ジャンルを少女漫画というジャンルにまで広げ、現在執筆している作家に長く描いてもらう』



冬水社は迷わずに後者を選びました。



そしてそれまで発行していたBL中心の月刊誌『ラキッシュ』に加え、ソフトな男子の友情路線が掲載できる雑誌として『いちばん好き』という月刊誌をもう1つ創刊しました。



当時、長期連載をしていた作家さんにはBLジャンルでやりたいか、新しい路線を開拓してみたいかと、各々自分で考えてもらいました。最終的には作家さんの意向にできるだけそった形で調整をしていきました。その時点で森本先生はG・DをBLジャンルで続けていきたいという意向でしたので、その意志を編集部は尊重し、そして現在に至っています。

今年晴れて50巻目のコミックスが発行されるG・DEFENDですが、長きに渡り高いテンションで同じ作品を描き続ける才能は稀有なものであり、すべての作家さんが森本先生のような作家性であれば、ジャンルを変えるという選択肢を編集部が選ぶことはなかったかもしれません。



その後、青少年育成条例を基本とした法整備が各自治体で進んでゆくという社会的方向性が見え始め、会社存続のためにも、作家さんを守るためにも、性的な描写等は青少年育成条例の範囲内にとどめたいというのは冬水社の方針となりました。そういった意味で性的描写は同人誌時代から比べるとマイルドになったことは間違いありません。



ただ現在の『いち*ラキ』は、条例的に問題ない範囲内であれば、男女の恋愛もBLも性的描写は同じくらいまでOKという編集方針です。作家さんにもこの意向は伝えてあります。どこまでの描写を作品に取り入れるかは、作家さん次第です。



冬水社はとても小さな直販の出版社ですので道理として、大手出版社に移って作品を発表したいという作家さんは後を絶ちませんでした。その時も「BLジャンルが描きたいのなら冬水社で描いてはどうか?」と引き止めた作家さんは何人もいますが、どの作家さんも移籍の決心が変わることはありませんでした。





だいたいではありますが、これが寄せられた抗議に対する、いち*ラキ編集部の返答となります。



読者さんの求めるもの、社会の情勢など、様々なものと上手に折り合いをつけながら、作家さんの意向に出来るだけ沿う形で漫画を描いてもらいたいというのが、長年にわたる冬水社の編集方針です。『いち*ラキ』を発行している今もその方針は変わりません。



冒頭の噂がどのように独り歩きをして状況を知らない方々の耳に入っているのか、編集部ではまったく想像がつきませんが、これからもこの根拠のない噂をできるだけ否定していこうと思っています。

読者の皆さんもこのような噂を耳にしたら、打ち消していただければ編集部として大変助かります。どうぞ宜しくお願いします。