母子同室の病院なので、絶えずどこからか赤ちゃんの泣き声が聞こえてくる。夜中になると泣きやまない赤ちゃんを抱えた母親が、廊下をウロウロしながらあやしている姿が目に付いた。
そんな中ミトモはまるで時計で計ったように3時間毎におっぱいを欲しがり、あっという間に飲み終えるとすぐに眠り込んでしまう。その繰り返し。母乳は順調に出ているし、何も問題が無いのだけれど、なんだか飽きてきてしまった。そうなると色んな事を考え出してしまう。
友人の1歳になる子供を思い浮かべる。1年育ててもまだあれくらいしか育たないのかと思うと、むなしくなってくる。友人の10歳になる子供を思い浮かべる。10年経ってもまだまだ育て続けないといけないのかと思うと、気が遠くなってくる。そして毎日オムツを替えて授乳してと、そろそろ楽しいよりも嫌気がさしてきたというのに、まだ生まれて1週間も経っていないことを思い出し絶望的な気分になる。

夜中、ミトモと二人きりの部屋が苦しくて、部屋を抜け出して廊下の窓から見える街の灯を見ていた。
0時過ぎだというのに、楽しそうに歩いている人たちを見て、あの場所にもう私は居ないのだと思った。

見回りの看護師に「大丈夫?」と声をかけられ、「気晴らししてました」と応える。
様子がおかしいのに気が付いたのか、しばらくすると年輩の看護師が話ししようかと来てくれた。

部屋に戻ると「しんどかったねえ、この何日間かがんばってたもんねえ」と言い、ぎゅっと抱きしめてくれた。
私は、生まれた時はかわいいなあと本当に思ったこと、
(初めて病室にミトモを連れてきてもらった時、寝たきりのまま「かわいい」と一言つぶやいたのだけれど、妊娠中から話しを聞いてくれていた看護師さんが、(私)さんが「かわいい」って言ってくれたってナースみんなで喜んでてんよ、と嬉しそうに言いに来てくれた。)
「自分の子供は可愛いよ」「生まれたら(子供嫌いが)変わるよ」とみんなに言われたけれど、ちっともそんな風に思えないこと、
早く家に帰りたいけれど、一緒に帰ることを考えたら嫌で仕方ないこと等を、ぽつぽつと喋った。

話を聞いてくれた後、赤ちゃんを預かろうかと言ってくれたけど、今度は預けてしまった罪悪感に潰されそうでそのまま一緒に過ごすことにした。