Cell. 2010 Apr 16;141(2):280-9. doi: 10.1016/j.cell.2010.02.026.
Mitochondrial fusion is required for mtDNA stability in skeletal muscle and tolerance of mtDNA mutations.
【タイトル】
ミトコンドリアの融合は骨格筋のmtDNAの安定性とmtDNA変異がおきにくくするために必要
【要旨】
ミトコンドリアは細胞内を絶えず移動し、常に融合と分裂している。これらの過程でミトコンドリアはmtDNAなどの内容物を交換することができる。ここで筆者らはミトコンドリアGTPaseで融合に必須であるタンパクMfn1とMfn2の骨格筋特異的なconditional KOを解析した。Mfnsを失うと重度のミトコンドリア機能障害をおこし、代償的にミトコンドリアが増え、筋肉の萎縮が生じる。CKOマウスは生理学的な異常に先駆けてmtDNAの喪失が起こっていた。さらに、CKOマウスのmtDNAは点変異と欠失が急速に蓄積した。mtDNAの変異がおおいマウスを使った追加の試験で、ミトコンドリア融合の喪失が優位にミトコンドリアの機能異常と致死性を増加させた。mtDNAに変異が入らないようにすることと変異がおこったときにmtDNA機能を保護するという2つの役割において、ミトコンドリアの融合はmtDNAに関係するヒトの疾患に保護的な要素となりえるだろう。
【内容】
①MLC(myosin, light polypeptide 1)-creを使って骨格筋特異的にMfn1とMfn2のダブルCKOを作成。体重が半分以下になり、血糖低下、乳酸上昇。→解糖系を主にエネルギー源としている。単独のCKOだと表現型はでないらしい。
②7週齢で筋肉は萎縮するが、ミトコンドリアが占める割合は多くなる。ミトコンドリアが膨化している。
③コハク酸脱水素酵素(SDH)の低下などミトコンドリア機能も低下。
④mtDNA量が低下。これはdCKOのみで観察され、OPA1(ミトコンドリアを分裂させるタンパク)のKOと同程度の低下具合。要するにミトコンドリアが融合していないとmtDNA量が減る。dCKOの細胞にMfn1もしくはMfn2のどちらかを発現させてあげるとmtDNAの量は元に戻る。
⑤mtDNAへの変異発生率は点変異、欠失ともにdCKOで上昇。Mfn1 KOでも上昇するが、増えるのは欠失のみで点変異は増えない。
⑥POLG KI x Mfn1 KOはダブルでもつと生まれず、POLGへテロ/Mfn1 KOでも生まれにくくなる。
⑦MEFでダブルミュータントをつくると酸素消費が極端に低下、ATP産生できない。これは複合体Iが一番傷害されているから。
【まとめ】
ミトコンドリアの融合が傷害されるとmtDNAの量および質の両方が低下する。なぜ質が低下するかは、わからないが、①保護できない、②変異原が増える、③mitophagyが停滞のどれかだろう。
【ターゲット】
POMCの論文でMfn2はストレスで減るみたいなのでこれも老化の一つの原因かもしれないですね。融合を増やすもしくは分裂を阻害してあげればいい?Mdiviの働きも調べないといけませんね。
GTPase;Gドメインという共通性の高い構造がある。GTP→GDPへ加水分解。例えばGTPのときがタンパク質の機能がON, GDPのときがOFFなるといったように細胞の機能調節を行う。
各複合体の基質と阻害剤;
(実験1)
まず、正常に電子伝達系の反応が進行する場合の実験である。ミトコンドリアの入っている水の中に、クエン酸回路で作られるNADHという分子を人工的に加える。その後、正常に反応が進行していれば酸素が消費されるのであるから、酸素が水中の酸素濃度を測定していれば、電子伝達系が働いているかどうかが分かるのである。
この実験の結果は、「酸素は消費された」である。つまり、NADHから電子伝達系に電子が渡され酸素分子が水に変わることが確認できたのである。
ここで、電子は直接電子伝達系に入るわけではなく、NADHという物質によって運搬され電子伝達系にやってくることも確認できたことになる。
(実験2)
次にミトコンドリアの内膜に埋め込まれている複合体Iというタンパク質の役割を調べる実験をする。そのために複合体Iに取り付いて複合体Iの機能を阻害する物質を用意する。ここではロテノンという薬を使う。ロテノンで複合体Iの働きを止めてから、ミトコンドリアにNADHを与える。今度は、酸素の濃度を測っていても、減少しないという結果が得られる。これは、電子伝達が機能せず酸素分子が水に変化することができないことを示している。したがって、複合体Iというのは電子伝達系の中の電子の通り道であると考えることができる。この電子の通り道が塞がったため酸素に電子を運搬できなかったのである。
Note: ロテノンはアマゾン族(日本ではアマゾネスと言った方が馴染みがありますね。ギリシャの伝説に登場する女戦士の一族です。)が魚を殺すのに用いた毒と言われています。なぜ毒になるかはこの実験からも予想できますね。
(実験3)
実験2で阻害した複合体Iをそのままにして、さらに、FADH2を加える。FADH2はNADHと同様にクエン酸回路で生成される分子である。すると、再び酸素の消費が始まるという結果が得られる。この結果は、NADHだけでなくFADH2も電子を運んで来ているということと、電子が電子伝達系に入る入り口は少なくとも2つあるということを意味している。
(実験4)
実験3の状態から、さらに、アンチマイシンAという薬を使って複合体IIの機能を阻害してみる。すると、酸素の消費が止まる。このことから、複合体IIはFADH2から電子を受け取る2つ目の電子伝達経路を構成していることが分かる。ここでは、複合体Iは阻害されたままなので、複合体Iは2つ目の経路上にないということも分かる。
実験1の状態(NADHから電子を受け取って酸素を水に変えている)から複合体IIを阻害しても、酸素の消費は止まらない。つまり複合体IIはこの1つ目の電子伝達経路上にないことになる。
このことから2つの経路をまとめると以下のようになる。
経路1 NADH →複合体I →酸素分子
経路2 FADH2→複合体II→酸素分子
(実験5)
今度は複合体Iと複合体IIの阻害をなくし、複合体IIIを阻害してみる。今度はNADHを加えてもFADH2を加えても酸素は消費されないという実験結果になる。
このことから、2つの電子経路は複合体IIIにおいて合流してしまっていると考えられる。つまり、この実験結果は、1つ目の流れと2つ目の流れが合流した所を塞き止めたので、両方の電子の流れを1度に遮断されたのだと解釈できる。
(今では、合流点が補酵素Q(CoQ)であることが分かっています。)
以上をまとめると以下のようになります。
NADH
↓
複合体I
↓
補酵素Q→複合体III→酸素分子
↑
複合体II
↑
FADH2
(実験6)
実験5の状態を保って、シトクロームcに直接電子を与えてみる。これは、テトラメチル-p-フェニレンジアミン(TMPD)という薬品で行うことができる。すると、電子の経路が複合体IIIの所で通行止めになっているにも関わらず、酸素分子の消費が始まる。これは、シトクロームcが電子伝達路を構成していて、かつ、複合体IIIより下流にあることを意味している。
TMPDは、NADHやFADH2とは異なり、生体内にあるものではないから、生体内で電子がシトクロームcから電子伝達系に入ることを意味するものではない。実際には、シトクロームcは複合体IIIから電子を受け取っているのではないかと考えられる。
NADH
↓
複合体I
↓
補酵素Q→複合体III→シトクロームc→酸素分子
↑
複合体II
↑
FADH2
(実験7)
実験6の状態から、今度はCN-を加えてみる。これは複合体IVの機能を阻害するものである。その結果、酸素の消費が再び停止する。これは、複合体IVが電子伝達経路上にあり、シトクロームcより下流にあることを示している。
以上の結果をまとめると、電子の流れは下のようになっている。
これは、現在知られている電子伝達系の電子経路そのものである。
NADH
↓
複合体I
↓
補酵素Q→複合体III→シトクロームc→複合体IV→酸素分子
↑
複合体II
↑
FADH2