タイでは食べ放題だと思っていたバナナ
2018年、岸本はタイ・バンコクに訪れた。
タイのジーンズブランド [INDIGOSKIN] の友人が郊外にお店をオープンしたのでお祝いのため訪問をした際、庭にバナナの木があった。
「バナナ食べ放題じゃん」と言うと、「バナナの木は一度収穫を終えたらもう実はならないから、ただの木だよ」と言われた。
そもそもバナナデニムとはバナナのどの部分を使うのか?
日本の都会でバナナがどんな風になっているか見かける機会はほぼないに等しい。
バナナデニムと言っても、私たちがスーパーでよく目にする黄色い皮の部分や実がデニムになるわけではなく、 バナナの木の茎の部分が繊維になる。
「実がなり終わるとただの木」と現地民がいうようにバナナ農家は毎年それを伐採し焼却処分し、またいちから育てる、ということを繰り返していた。経済成長が激化していたタイでは大気汚染も大きな問題となっており、実際のところ廃棄物処理も課題であったそう。 このとき感じたもったいない精神を頭の片隅に残したまま、日本に帰国した岸本。
タイでの出来事を日本の紡績工場に何気なく相談すると「バナナの茎を繊維にできる」という話になり、早速その繊維を使ったデニムづくりをスタートさせるのであった。
バナナの茎を繊維に
バナナ繊維は水を含むと繊維が膨らみ空洞ができるため吸水性・吸湿性に優れている。
また、綿に比べ繊維長は約1.5~2倍の長さがあり耐久性にも優れていることがわかった。
しかし、デニムや機物を製織する際には、糸にある程度の伸度(しんど)が必要になる。
綿糸ではそれが可能だったが、バナナ繊維には全く伸度がなかった。そこで素朴な風合いと上手く調和しそうなコートジボワール綿と混紡することにし、伸度を出す混合比をどうするか数パターンの糸を試作。
細い糸ほど切れやすくなるため製織時のスピードやテンションの調整を繰り返した。
織れる比率・織れない比率を何度も試験し、今回ジーンズ用として太い糸、シャツ用に細い糸を作成。こうしてバナナ糸が完成した。



