2024年11月の連載「ゼロで死ねるか」 93歳 使い切れなかった20億円 から
昨年秋、93歳で亡くなった男性は、相続人は他界し、遺体を引き取る人は誰もいなかった。自治体で火葬し、無縁遺骨として保管された。遺産の総額は20億円。
多くの財産を持ったまま亡くなり、相続人もなく、死後に周囲が対応に追われるケースがここ数年、増えている。
日本の高齢者の1/3が、生きているうちに「財産を使い切りたい」と思っているのに保有資産がますます高齢者に偏っている。経済白書によれば、60代後半から減少するにしても、「取り崩し」のペースは穏やかで、85歳を過ぎても1500万円超の金融資産を保有し、減少率は1割にとどまる。白書は子育てのニーズが高い若年世代への移転が進まない課題がある、と指摘する。
私自身、この1/3に入る財産を使い切りたいと思っている。使いたくても、今までの貧乏性で子どもたちの教育費をためていくことで精いっぱいだったので、お金が使えない。2人で生活する上で、年寄りなので食費も暖房費もかからない。旅行は国内をするが、体力もなくなってそうそういかなくなってきた。買い物も特にほしいものもなくなってきている。・・お金はあるけど使い切ることはなかなかできないのが現実だと思う。
精神科医の和田秀樹さんは、これまでの臨床経験で、死期をを悟った恒例の患者が公開する声をたくさん聴いた。最も多いのは「もっとお金を使ってやりたいことをすべきだった」という声だ。厚生労働省の予測によると、認知症を発症する人は2025年には約700万人に増加する。判断力がないと判断されると、成年後見人がつくので自分の意志でお金が使えなくなる。日銀、総務省の調査によると、この20年で60歳以上の金融資産保有残高は、1,5倍以上に増加。個人金融資産約2千兆円のうち60歳以上が6割以上(訳1200兆円)を保有する。
高齢者がやりたいことにお金を使って循環させれば、社会貢献になる、と和田さんは言う。
ただし、65歳以降の医療費は1600万円、介護費約600万円と見積もると、老後資金は2千万円前後が必要になる。「お金を使える時間は思うほど長くはない」
日々体力・知力が衰え、やりたいことが少なくなり、何をするのもおっくうになってきているが、やはり健康でいられる時間は少ない。クモ膜下や前立腺がんになって身に染みているので、やはり計算しながらお金は使い切っていきたい。