子供のころ
毎年
毎年
当たり前のように
夏に 出会っていた 妖精に
会えなくなったのは
いつの 頃からでしょう
思い出せません
夏休みが部活で忙しくなった頃?
受験勉強 下宿生活 就職活動
息つくひまもない
生活に 追い立てられるようになり
いつしか 出会った時と同じように
出会えないことも
当たり前に なっていたのです
気がつくと
私は大人と呼ばれるように
なっていました
昼間も
そして
夜も
持ち帰りの仕事に
終われる毎日
夏が来たことさえ気づかない
空調の中の生活
預かっとくね」
私が大人になったように
姿は成長しても
この子は
間違いなく あの頃と同じ 夏の妖精でした
なぜ 今年になって
急に私のところに
帰って来たのか
わかりません
「今年の夏は
ペンを置いて
ぼくと 過ごすんだよ」
子供の時から持っている
せみとちょうの飾りのついた
小さなペンたてから
万年筆を抜き取ると
少年になった 私の夏の妖精は
不思議な笑みを
浮かべていました…


