■無難な文章のメリット
善処する、徹底する、効率的に行なう、調整する、共有化を図るなど
字面の良い言葉が踊っている文章をご覧になったことがありますか?
言葉尻をとられないようにあるいは責任を負わないよう工夫されたものです。
そして、その効果は、頭に何も残らないということです。
それが、中味がない文章でも最高の文章になることがあります。
儀式としてつつがなく行なう一過性の会議などであれば、「わかったつもり」になって「特別異論を挟まない」ようにするのがよいのです。
■洗練された文章のデメリット
洗練されすぎた文章というものは、逆説的ですが、頭に残らないものです。
頭の片隅に残すためには、洗練された文章よりも、多少、荒削りのものがよいです。角張っていると、言いたいことが明確になるからです。
例えば、丸くなった文章では、淡白すぎて、頭の中に残らないきらいがあります。
おそらく、言語情報としては洗練された文章のほうが良いですが、説得力という点では別物なのでしょう。
洗練されている文章の代表といえば教科書です。
しかしながら、教科書という言語情報よりも、教師の生の言葉として聴いたほうが印象に残ることが多いです。
いわゆるメラビアンの法則で説明できます。
人が初対面の人をどう瞬間的に評価するかですが、言葉や話の内容が聞き手の印象には7%しか残りません。
それよりも話し方や声の質、大きさなどの聴覚情報が38%で、しぐさや表情、見た目の視覚情報が53%だそうです。
まさしく、聴覚情報や視覚情報に訴えた教師は良い面でも悪い面でも印象に残りやすいのです。
■きれいなプレゼン資料のデメリット
プレゼンテーションの説得要素として、参考資料の文章だけではなく、その人の語りの説得性・印象などが重要です。
また企画力がモノをいいます。
プレゼンといえば、パソコンで作った文章をプロジェクターで見せるのが一般的です。
こういう時代では、逆に黒板や白板に書いたりしたほうが印象的です。
あるいは、OHPシートに直接手書きすると新鮮な感じがします。
視覚情報で意表をついて関心を誘ったわけでメラビアンの法則があてはまります。
純粋な言語情報によるプレゼン効果の脆弱さをカバーしているともいえます。
■文章における言語情報と視覚情報の使い分けが重要
このように、文章は、言語情報という側面と視覚情報という側面をあわせもっているので、一筋縄にいかないのです。
どちらに力点を置くかは、その目的次第です。
例えば、プレゼンテーションに重きを置くならば、読むペーパーではなく見るペーパーにすべきです。
まずは中味に興味がある内容であることが前提です。
皆さんも経験があると思いますが、中味のない分厚いプレゼンペーパーがいかに多いことか。
その点で、私の持論は、プレゼンテーションペーパーは、1枚で勝負すべきだと思います。
話は変わりますが、頭の良い人は、文章を絵や図表にして理解したり説明したりすることが得意です。
おそらく、以上に話したとおり、言語情報から視覚情報に変換することで、理解し記憶にとどめる方法を工夫しているものだと思います。
以上、押さえるべきところはきちんと押さえて、いざというときに頼もしいのが”雑食系”の文章力です。