Classic to Modern デコラティブアート的造形と家具作家の日記
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「西洋彫刻の基礎がぎっしり詰まった額縁」

今まで何度か紹介してきた額縁。

彫刻教室で生徒さんが取り組む最初の作品です。

 

私が彫刻の無いプレーンな額縁を製作して、それを生徒さんが彫ります。

 

 

最近生徒さん達が完成させた額縁を見てみましょう。

 

 

この額は徹底してシャビーで使い古した風合いを表現しました。

 

 

この額はマホガニー材の古色を表現しました。

 

 

この額はダークウォールナット、濃い焦茶色の古色を表現しました。

 

 

この額は古色を付けないで、純白に仕上げました。

 

 

この額縁に彫られているモチーフはどれも規則正しい図形で、繰り返し彫ってパターンを作っていきます。

 

立体としても深さや高さが少ないので、初心者にも理解しやすいモチーフの

組み合わせです。

 

彫刻刀を使いこなせるようになるためには反復練習が必要です。

同じ立体をたくさん彫るこの額の彫刻はその練習に最適です。

その結果、墨付けした線の通りに自在に彫刻刀で彫れるようになります。

 

そして彫刻の密度を高くすると、重厚感や華やかさが表現できる事を

実感できます。

 

ヨーロッパの彫刻を始めるための基礎技術がたくさん学べる作品です。

 

この基礎技術があればお花や葉っぱ、リボンなどもっとランダムな形で、

複雑な立体を彫れるようになります。

 

平面的な作品から立体的な作品にステップアップしていくプロセスは

とても楽しいものです。

 

今回紹介した作品を彫った生徒さん達は皆さん初心者からスタートしてます。

 

レッスンの見学はどのクラスでも可能です。

興味がある方は是非おいでください。

彫ってみたくなると思います。

「デンマーク製ミッドセンチュリーデザインデスクの修理」

1960年代頃に作られたチーク材のデスクを修理しました。

デンマーク製ミッドセンチュリーデザインです。



チーク材は経年変化で木肌の色が明るい茶色、ゴールデンブラウンに変化します。
この色合いは新品の家具では表現できないので、ビンテージ家具の価値の重要な部分です。







このデスクもとても良い色です。

全体的に使用感がしっかりあって、天板には傷もたくさんありました。



画像

天板は古いラッカー仕上げされた塗膜を剥離しました。
全体を塗り直します。





剥離した後表面をサンディングしてしまうと、長年かけて作られた木肌の色が新品の木の色に戻ってしまうので、サンディングをしない事がとても重要です。

元々天板にはクリヤーラッカーが塗装されていました。
1960年代は、ラッカー仕上げが標準的な家具の塗装でした。
水と傷に強い塗装でしたが、薬品と熱に弱い弱点がありました。

現在はウレタン仕上げが標準の時代です。
水、傷、薬品、熱のすべてに強い塗装です。

美術品として扱われる家具の場合、その家具に元々施されていた塗料で修復しますが、この家具は実用品でもあるので、ウレタン仕上げにしました。




スプレーガンでウレタン塗料を吹き付けたところです。

引き出しの調整や全体の塗装を経て完成しました。

天板の傷も無くなりました。
木肌の古色もそのまま活かされています。











ビンテージ家具の古色を保存しながら、
実用性のある家具にするにはどう修理するか、という話でした。

 

「初めての旋盤加工」

彫刻教室の生徒さんから旋盤加工をやってみたいとリクエストがありました。

送られてきた図面がこちら

 

 

購入したオブジェのための台座だそうです。

メッセージには「レッスン3コマ(1日)でいけそうですか?」とありました。

初めて旋盤でトライするには難しいデザインなので1日でできるか微妙な所ですが、

やってみなければわかりません。

しっかりサポートして安全に完成を目指します。

 

こちらが今回製作する台座に取り付けられるドワーフ・ソーフィッシュ(ノコギリエイ)の

吻の剥製オブジェ。

 

 

全長約27cm。台座はシンプルな30mm角のチーク材(?)です。

現状の台座もミニマムで、コレはコレで良いと思いますが、確かにオブジェの長さに対して

小さく重量もないので倒れやすいですね。

 

今回の台座製作に使用する材料は旋盤加工にはやや不向きですが、工房にあった

ホワイトオークの角材を使います。

 

 

まずはセンターファインダーを使って角材の中心を出したら、旋盤に角材をセットし

円柱状に削っていきます。

 

 

 

 

あらかた角を落としたら生徒さんにバトンタッチ。

図面から直径を読み取って、キャリパーを使って直径の太さまで何箇所か削ります。

その溝を繋げてベースになる円筒にします。均一な太さに仕上げる基本のテクニックです。

 

 

 

図面から形状のポイントになる箇所のサイズを測り、材料に写します。

 

 

 

写し取ったポイントをデザインの直径寸法になるまで削ります。

 

 

寸法通り削り終わりました。

この後は図面を見ながらノミや木工ヤスリを使って図面のデザインになるよう曲線を

つなげていきます。

 

 

 

形が出来た後は回転させながら120番の紙やすりでサンディングをして表面を整え、

余分な部分を切り落としたら旋盤作業は終了です。

 

 

次にオブジェに付いている台座が入る凹みを作ります。

この作業には、ホゾ穴を開けるための工具「角ノミドリル」を使います。

 

 

 

仕上げは平ノミで整えておきます。


次に塗装です。

今回は元の台座に近い色合いのステインで着色します。

 

 

ステインが乾いたらセラックニスを塗ります。

 

 

ニスが乾いたらサンディングスパッドを使って研ぎます。

 

 

仕上げはワックス(ブラック)を使い、ステインでは色が入らないホワイトオークの道管に

ワックスを摺り込むように掛け、ウエスでしっかり拭き上げて完成です。

 

 

 

 

寸分の狂いもなく元の台座が新しい台座に収まっています。

1日で作ったとは思えない存在感と安定感のあるデコラティブな台座になりました。

アンティークの小物も、こんな風に専用の台座や、額と一緒に飾ると魅力が倍増します。

 

 

 

初めての旋盤加工として難しいデザインでしたがアクシデントもなく、希望通り1日で

仕上げることができました。

完成おめでとうございます。

 

 

パティーナ彫刻教室では、生徒さんのリクエストがあればレッスン課題と平行して

修復や額装、製作などの自由課題にも取り組んでもらっています。

 

レッスン見学は随時受け付けていますので、ご興味のある方はお問合せください。

http://www.kurotakimichinobu.com/index.htm

 

「ガレサイドテーブル2度目の修復」

以前修復したガレのサイドテーブルをふたたび修復しました。

お客様がテーブルの天板に物を落としたらしく、厚く塗装してあった

セラックニスの塗膜がザックリ剥がれました。



天板の左上部分です。





塗膜が分厚かった事が幸いして、木部にはダメージがありませんでした。

表面の木は様々な樹種が使われていて、その木目や木の色が象嵌の絵画としての重要な構成要素なので、ダメージを受けると修復が難しくなります。

セラックニスの塗膜はいくらでも修復ができるので、象嵌の表面を守るために

分厚く塗装することが必要です。

木部にダメージがないので塗膜を再生して、全体にニスを塗装して、鏡面に

磨き上げました。



塗膜に艶があるので、周りの景色が映り込んでしまいます。



ダメージの痕跡は無くなりました。

また新たに塗膜を足して分厚くなったので、また同じようなアクシデントが

起こっても、木部を守ってくれると思います。
 

「小さなフレーム作り(2)」

前回ご紹介した「小さなフレーム作り」の続きです。

木工加工が終わったフレームを仕上げていきます。

 

まずはシンプルな長方形フレームから。

模様を入れるためのステンシルシートを作成。

小さいフレーム(幅1cm)なのでとても細かい作業です。

 

 

フレームはアクリル絵の具で石目調に塗装し、底板にはフェルトが

貼られています。

 

 

金色のアクリル絵の具で模様を入れています。

 

 

アンティークを入れるので、クッキリとした印章にせずに

敢えて擦れさせています。

 

 

 

このフレームには関節がクネクネ動く1900年頃製の魚型ペンダントトップが入りました。

 

 

次に楕円形のフレームです。

アクリル絵の具でアイボリー系の塗装をし、内側はフェルト貼りに

なっています。

 

 

このフレームには1910年製のツバメのブローチが収まりました。

 

 

最後に四角いフレームです。

フレームに埋め込まれた3mmの真鍮角棒が良いですね。

工房にあった黒檀の端材で内側に貼る板を作っていきます。

 

 

糸鋸で十字の穴を開け、ヤスリで形を整えます。

 

 

次にニスを塗っていきます。

 

 

ニスが乾いたらスチールウールで表面を均し、ワックスをかけます。

しっかり拭き上げて艶感を抑えたマットにします。

 

 

フレーム本体にもワックスをかけたら完成です。

 

 

こちらのフレームには1900年前半頃の十字架が入りました。

 

 

木の質感とばっちりマッチしていますね!

完成おめでとうございます。

 

 

この十字架は下部にあるネジを回して裏蓋を開くと、内部にローマの

地下墓地「カタコンベ」の土埃が入っているそうです。

 

 

アンティークの小物は、飾るのに広い場所を必要としないので収集しやすい

アイテムですが、雑然と飾っても小さいがゆえに存在感が無くなってしまいます。

 

このように額装してあげると壁に掛けて飾れる上に、じっくり眺めて

観察してみようという気になります。

 

 

それぞれのアイテムごとにどんな額にするか、どんな塗装の仕上げが相性が

良いか、色々考えながら作業を進めるのもとても楽しいです。

 

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