★★★★☆☆☆☆☆☆

1986年 92min.

ネタバレ バレバレです。

敬称略

 

 

 監督 マイク・マーヴィン

 製作 ジョン・ケメニー

 脚本 マイク・マーヴィン

 音楽 ミヒャエル・ヘーニッヒ、J・ピーター・ロビンソン

 

 ジェイク・ケイシー:チャーリー・シーン

 パッカード:ニック・カサヴェテス

 ケリー:シェリリン・フェン

 ルーミス:ランディ・クエイド

 ビリー:マシュー・バリー

 スカンク:デイヴィッド・シェリル

 ガット:ジェイミー・ボズィアン

 オギー:グリフィン・オニール

 ミンティー:クリス・ナッシュ

 ラグ:クリント・ハワード

 

 

 なつかしの、まだマシだったころのチャーリー・シーンが主演の映画でありますよ。

 

 わたし、本作公開時にちょうどアメリカに留学しておりまして、向こうにいて日本の映画事情を知りたいと思って日本にいる親友に、日本で公開されてる映画の題名を教えてよ、って頼んだんですよ。その題名をアメリカの友だちに言ってどんな映画か教えてもらおうと思ったわけですね。でも親友から帰ってきた題名はすべて邦題でして、けっきょくわたしの目論見は頓挫してしまった、ということでありました。そんな中にこの「処刑ライダー」があったわけです。そういういわくつき(?)の映画なのですね。ちなみに原題は“THE WRAITH”、「幽霊」ですね。

 

 さて、で。

 

↑オープニングなのですけれどもね。

 

 あれ?ライダーて、バイクの話ちゃうん?てはなりました。 

 

↑えと、オープニングでは誰が悪者なのかの紹介が行われますね。

 

 左の、いかにもやさしそうな男の子が彼女とドライブしていたら、右のいかにも悪そうなヤツに突然追われまして、捕まってレースしろ、と。で、レースに負けたら車はいただく、などととてつもない理不尽な要求をされるのですね。まあこれ、今の時代だったら、ケータイさえあれば、とはなりますけれども、昔は確かにこういうことも横行していたのかもしれませんね。

 

↑で、レースが始まりますが。

 

 ここでBGMとしてロックミュージックが流れます。今ではめっきりなくなってしまった手法ですね、BGMでロック。どうしてなくなったのかはよくは知りませんけれども、ほとんどの映画がこういう手法でしたからね。本作のエンディングロールではなんか途中から延々と劇中に流れた曲の紹介がされとりまして、いったい何曲流れとったんやとわたしちょっとあきれてしまいましたよ。時代ですなあ。たぶんサントラ盤作ったら(作ったのかもしれないですけど)LP3枚組とかになりそうな勢いでした。

 

 まあけっきょくやっぱりイケメンお兄ちゃんは不良くんの汚いやり方でレースに負けて車を取られてしまいましたが、これ普通に警察に言えばええんちゃうの、とはちょっとだけ思いました。どうせ親の金なのですしね。まあそれ言ったら本作の存在自体が危ぶまれてしまいますけど、とはいえ現実離れしすぎているのもアカンとは思うのですよ。

 

↑ヒロインのケリー、シェリリン・フェンちゃんです。

 

 なんてかわいい名前なんだと思いましたけれど、それよりもわたし、なんちゅう服着とるんや、のほうが先に立ちました。年頃の娘を持つ父親には心配でしかありませんね。

 

↑で、チャーリー・シーンです。

 

 いやあ若いですね。でも若いで言ったらこちらのお方は負けてないですよ。↓

 

↑そうさきほどの不良くん、悪の親玉パッカードのニック・カサヴェテス。

 

 まあ若いっても老け顔ではありますが、今では

 

↑こうなっておられます。時代ですなあ。

 

↑この二人はチャーリー・シーンとビリー(マシュー・バリー)。

 

 この二人は偶然出会うことになっとりまして、これにニック・カサヴェテスも絡んできます。なにやら不穏な空気なわけですよ。わたし、本作の監督であるマイク・マーヴィンはまったく知らない方なのですけれども、でもちょっと「マッド・マックス」的な雰囲気でここまではおもしろそうではあったのです。

 

 えと、ここでいったん総合しますとですね、ビリーの兄はニック・カサヴェテスの今カノのケリー、シェリリン・フェンちゃんとデートしていたところ(もちろん当時はビリーの兄とシェリリンちゃんはお付き合いされとったのですよ)、シェリリンちゃんに横恋慕しているニック・カサヴェテスが激昂して殺してしまったらしいのですね。その殺されたビリー兄はどうやらチャーリー・シーンに激似らしくてですね、なるほどそうするとそこらへんがどう絡み合ってくるのか、っていうのがこの映画の根本になるようなんですけれどもね、でもそれは、要するに殺されたビリー兄がチャーリー・シーンになって復讐に来た、ってことだと容易にわかってしまうのですね。もうそれしかないですからね、答えとしては。しかも原題は“THE WRAITH”、すなわち「幽霊」ですからね。まるわかりなわけです。それ考えると邦題の「処刑ライダー」てのはそうしたわかりやすい内容をなんとか隠そうとした日本映画配給会社のだれぞの必死な画策ととれなくもないですが、でもさんざんロクでもない邦題を世にあふれさせた日本の映画マンがそれをするとはとうてい思えないですけどね。

 

 で。

 

↑この得体のしれない謎の車は?というところですが。

 

 まあ要するにいつものようにこの車をレースでまき上げようとして痛い目に合う、ということまでわかってしまうのです。

 

 それにしてもこの車、これじゃまんま「ナイトライダー」じゃないですか。運転手の顔も見えないようになってますし。「キット、たのんだぞ」なわけですよ。そんな車に勝てると思うのがおかしいと思うのですけれどもね、たとえズルしたとしても、ですよ。でもまあニック・カサヴェテスが痛い目に合うなら、それはそれで楽しみではありますよ。アホでよかった、ということなのでしょうかね。アホすぎるのもなんですけど。なかなか観ていて感情が複雑なのです。

 

 で、案の定、でした。

 

↑レースが始まりまして。

 

 手前の車で運転しているのはニック・カサヴェテスの手下のやつですが、やっぱり途中でぶっちぎられて、あわてて追いかけていったら前にナイト2000がいて、

 

↑ぶつかって、

 

↑大炎上ですよ。

 

↑でも当然ですけど、ナイト2000は無傷なわけですね。

 

 新車同様です。なるほどに“THE WRAITH”ではあります。

 

↑そしたらランディ・クエイド出てきましたよ。

 

 こちらもお若い。「インデペンデンス・デイ」のときとは全然違いますね。時代ですなあ。(←もうええて)

 

↑そしてその事の成り行きを見守る崖の上のあやしげな人影……。

 

 て、チャーリー・シーンでしかないですよね。映画ってものはもちろん「わかりやすい」ってのはいいんですけど、「わかりやすすぎる」はご法度ですよ。なんかちょっと違うなあ、ということになってきました。

 

↑第一の犠牲者、ということなのですけれども。

 

 火だるまで死んだはずなのに無傷で眼球がない、と。ちょっとホラーが入っているところはわたしちょっぴり好感は持ちました。

 

↑チャーリー・シーンの服のパーツが光って消えたりもします。

 

 お、なんやなんや、となりましたよ。

 

 でも、そういうプラスの感情も、さまざまなマイナス要素で雲散霧消になって行ったりもします。

 

↑ニック・カサヴェテス、ナイフを握って引き抜きます。

 

 シェリリンちゃんに、愛があれば痛みは感じない、などと言ってますけどね、たぶんこれ家に帰ってからそうとう痛がったのだと思いますよ。痛くないわけないじゃん、ですよ。劇中、薬はやってないみたいですしね、ニック・カサヴェテスは。そういうセリフもありましたからね。まあひとつだけ確かなのは、やってることはなんかイタイ、ということではあります。

 

↑ちょっぴりハラが出ているようなのもどうかと思いますしね。

 

 そうかと思えばチャーリー・シーンのほうも負けてないです。だって、

 

↑カッコよくないですもん。なんかダサい……。しかも、

 

↑銃を構えてぶっぱなしますけどね、

 

↑ちょっとボンネットがめくれあがっただけ、て……。

 

 わたしこれ、ズッコケましたよ。だってあの銃見たら、なんか赤いランプが点灯してたりもしましたからすっかり霊界の武器かなんかでレーザービームが発動して大爆発するとか思うじゃないですか。なのにちょっと穴が開いただけ、ってそんなサプライズありませんて。これじゃまったくもってフツーの拳銃ですよ。このあともなんか乱射してましたけど、缶が飛んだり棚がこわれたりするだけ、てもうなんか悲しくなってしまいますよね。

 

 とうとうここらへんからわたし、あれれ、と思うようになってきましたよ。

 

 わたし本作、当然前にも何度か観てますけれどもね、なんかもうちょっと面白かったと思うんですけど、どこでどう記憶が塗り替えられてしまったのか、まったくキツネにつままれたような感覚に陥ってしまいました。

 

 なんでなんでしょうかね。なんか監督のマイク・マーヴィンはこれしか撮ってないみたいですけど、チャーリー・シーンとランディ・クエイドが出てるんですよ。なんでこんなクオリティなんですかね。よくわからなくなってしまいました。

 

 まあでもそんなこんな思いながらも映画は進んで行きますね。

 

 二度目のレースも行われて、とうぜんニック・カサヴェテスの手下がまた一人殺害されますよ。でも今度はナイト2000は警察に追われます。そして追い詰められるわけですよ。

 

↑とうとう橋の上で囲まれました。もう逃げ道はありません。

 

 でもこのナイト2000は「幽霊」なわけですよ。

 

↑怪しげにタイヤも光ってますからね。

 

 お、これはどうやらナイト2000、このまま突っ込んできてパトカーにぶつかるって直前に幽霊らしく消えるのだな、ということがわかりましたよ。

 

↑強行突破でした……。ことごとく期待を裏切られるわけですね。

 

 しかもわたしここでトンデモなことに気づきましたよ。開始50分。チャーリー・シーン、ここまでほとんど出てきません。たぶん登場シーンは全部足しても1分ほどだと思います。主役と言えるのか、というよりも、それでええんか、という感じになってしまいました。そして、

 

↑またも警察に追っかけられて、ここで消えました。

 

 いや、だったら最初っから消えとけよ、となるのは必然ですね。

 

↑見たまんま、手下のアホ二人です。

 

 3回目のレースは、チャーリー・シーンとシェリリンちゃんがバイクで2ケツしているのをたまたまこのアホ二人がみつけて、となりました。まあレース、いうか、たまたまみつけたので車で追いかけて事実上のチェイスになった、ということですけれどもね。

 

 けっきょくこれ、アホが車内でショットガンかなんかを間違ってぶっ放してしまって自爆、てことになったんですけど、いずれにしても本作、ものすごく重要であろうはずのカーチェイスのシーンに迫力がまったくないんですよ。ハデさが足りないんです。頑張ってるのはわかるんですけどねえ……。ものがものだけにカーチェイスが多いってのはいいんですけど、それならそれで、それをもっとハデにしてくんないとこの映画のイミがないじゃないですか。もう観ていてなんか終始「う~ん」なわけです。

 

↑アホふたたび、です。

 

 えとここのシーンで、向って右のアホが「おれもう4日も童貞だ」って言うんですけど、ほななにかい、お前4日前に「いたした」ってことなんか、と突っ込まざるを得ませんでしたよ。

 

 脚本もこれ監督のマイク・マーヴィンが書いてますけど、そういうセリフを書いてて、いやそらないわ、とはならんかったのでしょうか。さらには、

 

↑コーヒー一口飲んで苦かったんでしょうかね、砂糖入れるんですけど。

 

 これがもういったいいつ入れるのやめんねん、いうくらい延々と入れてるんですよ。もうわたしそれが気になって気になって、ランディ・クエイドはビリー兄が殺されたときの話をビリーに聞きに来てんですけれども、そんな大事な話がまったく入ってきませんで、なんか3回巻き戻しましたよ。いいかげんにしてほしいわけです。

 

 まあ3回聞き直したので、内容はわかったんですけど、その内容ってのが、え、ビリー兄がニック・カサヴェテスに殺されたって事実はだれも知らんのか、てことでした。まあ警察は知らんにしても(知ってたらニック・カサヴェテスは逮捕されてますからね)、ビリーとかシェリリンちゃんは知ってたんじゃないのかと、わたし愕然としてしまいました。

 

 で、そんなこんなでラストのレースとなりますよ。もうほんと、そんなこんなです。

 

↑で、やっぱりハデさもスピード感もありませんでした。

 

 対向車すら走ってきませんし。なんかラストなのに、ゆる~く進んでいきますよ。スピード感ないってのは致命的ですね。

 

↑で、ニック・カサヴェテスの最期はこうなりました。

 

 溜飲が下がった、とはなりませんでしたね。

 

 えとですね、このラストのレースは、ナイト2000とニック・カサヴェテスがレースするんですけど、いつものようにナイト2000が先に突っ走って行って、今回はUターンしてニック・カサヴェテスの車に突っ込んできます。正面衝突なわけですよね。でもこれ、フツーだったら、どうなるんやろ、どうやってよけるんやろ、ひょっとしたらぶつかっちゃうんかなあ、なんてハラハラドキドキするのでしょうけれどもね、でも本作に関しては、ナイト2000は何があっても無傷だってのはわかってるわけじゃないですか。だからここで正面衝突しても、殺られるのはニック・カサヴェテスだけなのはわかりきってることなんですよ。そんなんでどうやってこのシーンでキンチョーするんですか。ワクワクするんですか。ハラハラするんですか。これで溜飲など下がるはずがない、というわけです。

 

↑このあとチャーリー・シーンの服のパーツがやっぱり消えますよ。

 

 えと、レースして相手を亡き者にすると毎回こうして服についてるパーツが光って消えるんですけど、それがなにかの説明もまったくなく、けっきょくなんなんこれ、となってしまいました。

 

 いやこれね、もうちょっとうまく脚本書いてたら、けっこうおもしろい話になったのじゃないかと思えてしかたありませんよ。もったいないって言うかザンネンと言うか……。

 

↑ビリーが泣いてます。

 

 このラストのシーン、チャーリー・シーンが実は亡くなった兄の霊だと知ってビリー泣いてますけど、もらい泣きはしてしまうわけですよ。だからこそちゃんとした脚本家に脚本書いてもらっていたら、間違いなくいい映画になっていたと思うんです。リメイクしてくれないですかねえ。アイディアとしてはアリだと思うわけですし、だから本作はわたしの中で駄作にはなりません。エンターテインメントに徹したいい映画、とはとうてい言えませんけど、でも★4つはあげたいと純粋に思います。

 

↑「ブルース・イングラムに捧ぐ」。

 

 誰かと思ったら「1st assistant cameraman」だそうです。やっぱりちゃんとみんな一丸となって良い映画を作ろうとしていた、てことですよね。ほんとだからザンネンでなりませんのことでした。

 

 

今日の一言

「バイクに乗る時はちゃんとヘルメットをかぶりましょう」

 

 

レビューさくいん

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