★★★★★☆☆☆☆☆
1985年 117min.
ネタバレ え、ネタバレってなんですか?
敬称略
監督 ロン・ハワード
製作 リチャード・D・ザナック、デイヴィッド・ブラウン ほか
脚本 トム・ベネデク
音楽 ジェイムズ・ホーナー
アート:ドン・アメチー
ベン:ウィルフォード・ブリムリー
ジョー:ヒューム・クローニン
ウォルター:ブライアン・デネヒー
バーニー:ジャック・ギルフォード
ジャック:スティーヴ・グッテンバーグ
メアリー:モーリン・ステイプルトン
アルマ:ジェシカ・タンディ
ベス:グウェン・ヴァードン
キティ:ターニー・ウェルチ
デイヴィッド:バレット・オリヴァー
スーザン:リンダ・ハリソン
最初、本作を予告編で観たとき、悪役専門だと思ってたブライアン・デネヒーがものすごく優しそうな顔をして笑ってて、なんかめちゃめちゃ感動して鳥肌立ちまくったのを覚えてます。「ランボー」「シルバラード」を観ていたので、そう思ったのだと思うのですけれどもね。
加えて、監督のロン・ハワードは「アメリカン・グラフィティ」の役者というイメージが強くって、監督としては未知数でしたから、それもそれでだからいろいろ楽しみではあったのですよ。
↑この特撮はスゴイですね。
のっけからロン・ハワード、気合入ってるなという感じです。CGじゃなくても当時の最高技術はここまでできてたんだと思うと、感動してしまいます。
↑バレット・オリヴァー。
懐かしいですねえ。「ネバーエンディング・ストーリー」と「ダリル」のあとの本作。今は写真家になってるそうで、俳優としてのキャリアは本作の続編「コクーン2 遥かなる地球」が最後だったようです。
↑ウィルフォード・ブリムリーとドン・アメチー。
こうしてね、ほかにもあとから出てきますけど、ヒューム・クローニンやジェシカ・タンディとかモーリン・ステイプルトンなんて、名優と言われる人たちが老いた人を演じる、ってのは相当な決断だったんじゃないかと思うわけです。もうそれだけで尊敬しますよね。ちょっと出はななのにウルウルしてしまいましたよ。
映画としては、コクーン=繭、なわけだし、いきなり宇宙の映像とか出てきてSFっぽいし、なんなら最初はちょっとホラーなんかな、なんて思ってたんですけど、すぐ、そうじゃない、って雰囲気になって、だからけっこう最初っから、なんやなんや、って感じで観てたのを思い出しました。
↑スティーヴ・グッテンバーグ。
まあ、この人が出てればそりゃホラーじゃないわな、ですね。
↑ブライアン・デネヒーと、隣の方はターニー・ウェルチ。一世を風靡した「20世紀最高のグラマー」とか言われたラクエル・ウェルチの娘さんですね。
でもってブライアン・デネヒーの、なにこの優しい顔、なわけです。わたしこれでいっぺんにファンになりましてね、このあと「F/X 引き裂かれたトリック」でちゃんとした刑事の役を観たときは、もう観ているあいだじゅうずっと心の中で拍手してましたよ。ザンネンながら3年前に81歳で亡くなられましたが、わたしその報を聞いてしばらく立ち直れませんでした。自然死だって言うじゃないですか。なんやそれ、って悲しみに拍車がかかったもんです。
↑またその名優たちに交じって、当時若手の、船長役スティーヴ・グッテンバーグがいい味出してるんですよ。
ブライアン・デネヒーは宇宙人なんですけどね、だから持ってる海図も地球人が見たことないようなしろもんなわけですよ。でもグッテンバーグは船長の意地なのかプライドなのか「見たことある」なんて言っちゃいます。そしたらすかさずブライアン・デネヒーに「最新技術だ」って見透かされちゃうんですよ。で、そのあとのセリフがまたうれしいんですけどね、グッテンバーグ曰く「日本製かい?」って。お調子もんぶりがいかんなく発揮されてますよね。ああなるほど、だからこのキャスティング、なわけです。そのあとブライアン・デネヒーも「そう、日本製だ」って。笑ってしまいました。
↑イルカ、泳いでます。
えと、ブライアン・デネヒー、ターニー・ウェルチはじめとする宇宙人たちは、海底からなんかの繭を引き上げて船で港まで運んで、地球で借りた家のプールに持って行きます。宇宙人のわりにけっこう人力なんやな、とは思いましたよ。ていうかここのシーン、普通に本物のイルカが泳いでるのには驚きましたけどね。
↑ウィルフォード・ブリムリーとドン・アメチーと、そしてヒューム・クローニン。
じつはブライアン・デネヒーたちが借りた家はこの3人が住む老人ホームの隣にありまして、その家は誰ぞの別荘ですからほぼ無人なわけです。ので、それをいいことに3人は毎日のように忍び込んではプールで泳いでいたんですけどね。そしたらそこへなにかしらの繭が運び込まれる、というわけです。主犯はこの3人か、となります。
↑繭を運び込んでいるのを知っていて、でもやめられずに忍び込んで、フツーにプールに飛び込んでます。
まあ、勇気あるなあ、とは思いますね。ところがここでこの映画のスゴイところがでます。
↑飛び込んでるんですけどね。
これ、名優たち本人がスタントなしでやってるんですよ。簡単な飛び込みだから、って感じでもなかったですよ。ヒューム・クローニンなんか、昔水泳やっとったんか、ばりの飛び込みしてましたからね。ちなみに撮影当時は、ドン・アメチーが最年長で77歳(!)、ウィルフォード・ブリムリーは51歳、ヒューム・クローニンは74歳でした。まさかのウィルフォード・ブリムリーがわたしより年下だった、ではありますが、その他二人はほんとスゴイです。ていうか、51歳であの老け役を演じてみせたウィルフォード・ブリムリーも称賛ですけどね。
もちろんといいますか、みなさんもうお亡くなりになってますけど、ウィルフォード・ブリムリーとドン・アメチーは85歳で、ヒューム・クローニンは91歳で他界されてますから、いろんな意味での役者魂は、さすがとしかいいようがないです。
↑ヒューム・クローニンとその奥さん役のジェシカ・タンディ。
お二人は実生活でもご夫婦ですね。本作のあと「ニューヨーク東8番街の奇跡」でもご夫婦の役をやられとりました。ジェシカ・タンディが1989年の「ドライビング Miss デイジー」でアカデミー主演女優賞を80歳で受賞されたときはわたしも泣いてしまいましたよ。
↑ヒューム・クローニンに負けじとドン・アメチーは意中の女性に花持ってくるし、
↑ウィルフォード・ブリムリーは奥さんと一緒に風呂入るしと、
おもろいわこの映画、ではありました。主要メンバーはほぼ全員他界されておりますけれども、今でもこうしてそういう人たちの名演技が観られるというのは、映画に感謝、そして名優たちに感謝、ということですね。
↑若いのも負けてないんですけどね。
ただなんかこのシーン、ターニー・ウェルチの手とスティーヴ・グッテンバーグの足の大きさがおかしないか、という感じにはなりました。遠近法なわけもないし、実際にあんな大きさ違うんですかね。足がデカいのか手が小さいのか、はたまたその両方なのか。ちょっとビックリなシーンではありました。
↑そしてダンスパーティーへ。
わたし、ヤバい、ニコニコが止まらん、なんてことになってましたよ。
↑宇宙人です。
要するにブライアン・デネヒーたちのほんとの姿、ですね。この画像はターニー・ウェルチですが、精巧な人間の皮をかぶっている、とそういう設定で、船の部屋でその皮を脱いだところを
↑スティーヴ・グッテンバーグに見られてしまった、というシーンです。
まあありがちですけど、だからそれはこちらも織り込み済みで、そうじゃなきゃ話が進まんだろ、ということではあります。
↑まあ、そうしたところでこの人の存在はやっぱりちょっと怖いですけどね。
↑当たり前のようにスティーヴ・グッテンバーグはビビってましたが、打ち解けるのも早かったですね。
それはやっぱりスティーヴ・グッテンバーグだからなんだろね、とこちらもナットクではあります。彼のやさしさがモロ出てますもん。「ポリス・アカデミー」でも「スリーメン&ベビー」でもそういう人の役でしたよね。キャスティングも絶妙なわけですよ。
さて、そんなところでいい感じで来てたんですけどね、ここらへんからちょっと雲行きが怪しくなってきます。
↑例の3人プラス1人が隠れてます。
いつものようにプールに忍び込んで泳いでたら、ブライアン・デネヒーたちが帰ってきてあわてて隠れたの図、なんですけど、これプールサイド濡れてなかったんですかね。ちょっとわたし、あれ、とはなりました。普通だったら、今の今までそこで泳いでいたわけですから、プールサイドはびしょびしょじゃないですか。それにブライアン・デネヒーたちが気づかないわけないですよね。やっぱり繊細な話なわけですから、映画もちゃんと細部にこだわってほしいな、という気持ちです。
↑こういうシーンは素晴らしいんです。やっぱりCGに負けてないです。
で、みつかって出入り禁止になって、
↑3人が老け込みます。
こうなると、ちょっとどっちが本当の彼らなのかわかんなくなっちゃいますけどね。元気なのかカラ元気なのか、って。
↑こちらは新旧対決、ブライアン・デネヒーvsウィルフォード・ブリムリーですね。
あ、でもよく考えたらウィルフォード・ブリムリーって、ブライアン・デネヒーと4つしか違わんのやった。まあ、要するに名優どうしのいいシーンです。でも、なんです。
↑バーニー(写真右)が怒ります。
まあね、一人はこういうのが出てくるだろうなとは思ってはいたんですよ。でもね、でもやっぱりウザいです。なんかここまでせっかくファンタジーで癒されてほっこりしてニコニコしてたのに、全部もってかれる、みたいな。そらたしかに、全部が全部うまくいくはずはないってのはあるんでしょうけどね、でもこのシーンは、それまでがそれまでだっただけに、あまりに不快なんですよ。なんでこんなシーンが必要なんだ、って、そんな気になっちゃうんです。せっかくだったのに、って。なんか観ててわたし、けっこうヘコんじゃいました。
↑こちらはよろしくやってるスティーヴ・グッテンバーグにターニー・ウェルチからの愛の表現だそうです。
まあ、どんななのかは体験してみたいですけどね。
それはそれとして。
で、例の3人も、それぞれのパートナーも交えてギクシャクしだします。
↑若返ってボウリングとかやって、いざ帰るという段になってヒューム・クローニンはもっと遊んでくとかいって一人残るわけですよ。(車の後ろに立ってるのがヒューム・クローニン)
まあイチバンのお調子者だったんでしょうねヒューム・クローニン。要するに、せっかく若返ったんだからまだまだ若かりし遊びをしたい(まあ平たく言うと女遊び、ということです)、ということなわけですよ。もちろん奥さんのジェシカ・タンディはガックシで、ヒューム・クローニンの乗ってない車は帰路へとつくわけですが……。
えとですね、上の写真見ていただくとわかりますかね、ヒューム・クローニン乗ってないのに車、満員になっちゃってるんですよ。まあそりゃ当然ですわね、主役3人にそれぞれパートナーがいるわけですから合計6人。でもどう見ても車は5人乗り。これね、どうやって乗ってきたんでしょうね。ていうか、ヒューム・クローニンも帰るって言ってたらどうやって乗ったんでしょう。
ね、そういうとこがそろそろ目につきだすんですよ。ありゃあ、てなりますよね。
↑で、浮気がバレて、ていうかジェシカ・タンディはとっくに気づいてて、家を去ります。
でもね、やっぱりそういう話はいらんのですよ。いかにもアメリカ的っちゃそうなんですけど、でもやっぱり観る側とすれば、もうちょっと違う「いい話」にできんかったんか、ってなってきちゃってるんですね。
↑で、このバーニー(ジャック・ギルフォード)がもうわからずやで……。
けっきょくこいつのせいで、今まで4人しか知らなくって、ブライアン・デネヒーからも言われてたからほかのホームの連中には内緒にしてたのに、バレてしまうわけです。
↑大挙をなしてプールへ一目散、と。
そらこうなりますわな。なんか最近あの3人が若返ってる、って話題にはなってたみたいですからね。
↑あーあ……、となりました。
もうね、ウザい言うより、いやウザいももちろんありますけどね、イタイですよ。こいつらがやってることも、そして映画自体も。そんな感じになっちゃいました。
↑で、結果コレですわ。
↑そらブライアン・デネヒーも泣きますって。
そもそも死なない人たちだったんですよ、こちらの宇宙人は。これまで一度も、そう、何万年も生きていて、死を体験したことがなかったんです。それがコレですよ。アカンやろそれは、てなりますよね。
相変わらず演出の行き届かなさも健在で、
↑ウィルフォード・ブリムリーを見てください。
↑わかりますかね。
そう、最初の写真ではウィルフォード・ブリムリーはポケットに手を突っ込んでるんですけど、カットが変わると入れてない、ってなってるんですよ。これに気づかないのは致命的でしょう。編集段階でも気づかなかったんですかね。まるでわが中日ドラゴンズの史上最低の指揮官、立浪和義が選手の交代を審判に告げ忘れるかのようなボーンヘッドなわけです。
う~ん、せっかくいい話になりそうなのに、なんでこんなイヤな話にしちゃったんでしょうかね。もったいなさすぎますよ。
このあとも、バーニーの奥さん亡くなって、あれほどイヤがってたのにプールに入れに行って助けてくれって懇願するし。なにをいまさら、って感情しか湧かないですよ、こっちは。都合のいいこと言ってんじゃねえよ、って。
一万年以上前に地球に来て基地を作って、でも地盤の沈下が激しくなってあわてて星に帰ることになって。ところが思ったより沈下の進みが速くって、ブライアン・デネヒーたちを星に帰すために、身を犠牲にして地球に残ることになった20人を、今回迎えに来た、なのにコレですよ。1万年地球で生きてきた仲間なんですよ。そりゃブライアン・デネヒーじゃなくたって泣きますって。なんやその話、って。単に犬死にじゃないですか。(「犬死に」って日本語もたいがいですけど)
それでも、なんです。
↑ホームの全員、宇宙船に乗って行かないか、と提案してます。
どんだけ優しいんや、って。映画に感動して泣きたいのに、違う意味で泣いてしまいましたよ。
↑バレット・オリヴァーはウィルフォード・ブリムリーの孫です。
孫との別れのシーン。まあここを一番の泣き所にしたかったのでしょうけれどもね、もちろん泣けませんね。
↑不老不死の星に行くことにして、全財産をバラまいてます。
「大逆転」のパロディでもしたかったのでしょうか。ザンネンながら、あ、「大逆転」、くらいにしかなりませんでした。
↑「トワイライト・ゾーン」か、て。
なんかラストにきてどっかで観たようなシーンのオンパレードですよ。で、こんなイヤなやつも連れて行くんか、星は大丈夫なんか、とはなります。不安でしかありません。
↑いざという時にエンジンかかりません。
もちろん星へ行くなんてだれにも内緒なわけですから、穏便に、でも早急に事を進めねばならないわけですが、そいうとときにエンジンがかからんとまあお約束ですよ。そういうのもいらんやろ、とわたしもう投げやりです。
で、こっから先は、バレット・オリヴァーも行くと言い出して船に乗り込んで、エンジンがかかるかからんしているところに警察が来てのバトルと……。う~ん……。
なんか最後は「E.T.」のハデバージョンになってしまいましたね。そもそも普通、沿岸警備隊に追われたらもうムリでしょうに。それどころかこれ、うまくみんな星に行けたとして、残る船長のスティーヴ・グッテンバーグはどうなるんですかね。間違いなく警察に捕まりますよ。いっぱいお金もらってましたけど、ここまでのことしたら刑務所でる前に老衰で死んじゃうくらいの懲役なんじゃないですかね。どうなるんでしょうね。そこは「コクーン2」でちゃんと描かれてるんでしたっけ。わたしそちらも観ましたけど、まったく覚えてないですね。たぶんおもろなかったんだと思います。さわりだけでも観とくかな、という感じです。
一応ラストはなにかしらの感動感を演出してましたけど、わたしは一切感動しませんでした。なんかほんともったいないわ、ということですよ。せっかく前半は面白かったんですからね。★5つが限界です。前半満点、後半0点、ということです。
↑「未知との遭遇」!
今日の一言
「これはこの使い方であってるんですかね。穴開いてますけど」