★★★★★★★★☆☆

2014年 109min.

ネタバレ しないと話ができません。m(_ _)m

敬称あったりなかったり

 

 監督 山崎貴

 製作 川村元気、佐藤貴博、守屋圭一郎

 脚本 山崎貴、古沢良太

 音楽 佐藤直紀

 

 泉新一:染谷将太

 ミギー:阿部サダヲ

 田宮良子:深津絵里

 村野里美:橋本愛

 島田秀雄:東出昌大

 倉森:大森南朋

 広川剛志:北村一輝

 泉信子:余貴美子

 三木:ピエール瀧

 浦上:新井浩文

 平間:國村隼

 後藤:浅野忠信

 草野:岩井秀人

 辻:山中崇

 A:池内万作

 山岸:豊原功補

 裕子:山谷花純

 その他:飯田基祐、関めぐみ

 

 

 もうね、今さら、なんですけれどもね。本作を観るのいったい何回目やろ、て感じです。間違いなく10回以上は観ていると思いますね。でもね、ほんとにおもしろいんですよ。わたしこれ、邦画史上最高のエンターテインメントだと思ってますよ。まあそのわりには8つじゃないかと言われそうですけど、その理由はおいおいわかります。

 

 ところで、です。わたし、こうして映画が大好きなのはもう高校時代からなのですけれども、じつは大学生になるとマンガにはまりました。マンガ自体は高校時代から、ずっと週刊少年ジャンプを買い続けてましてね、アメリカに留学してた時も毎週のようにリトルトーキョーへ行っては買ってましたよ。なんか向こうでは100円イコール1ドルみたいな感覚で、だから230円だったジャンプは2ドル50セントで売ってましてね、当時のレートが1ドル200円でしたから、バカ高かったですけどね。

 

 て、ああ、そんなことはどうでもよくってですね、えと、わたし大学時代から映画とマンガにバイト代を費やしてまして、2008年に第一回目の転職するまでに、蔵書1000冊は超えてたのですけれども、その中でもわたしが一番好きで、とにかく日本のマンガの中で最高傑作だと思っていたのがこの「寄生獣」だったわけですよ。何度も何度も読み返して、その都度その世界に魅了され、感動し泣きながら読んだものです。で、それをとうとう映画化するとなれば、観ないわけにはいきませんよね。話としてはもう完全にしっかり出来上がってるわけですから、あとはそれをどう完璧に映像化するのか、ということなわけです。

 

 だから、それだけ思い入れのあるマンガですから、出来上がりに関しては不安はつきまといます。そもそも映像化なんて不可能だと、ずっと言われていた作品ですしね。でも、それをあの「永遠の0」の山崎貴が監督をする、しかも主演が、わたしが勝手に若手No.1だと思っている染谷将太、相手役に橋本愛ちゃん。そりゃあもう不安もありながら、期待はどんどんふくれあがっていったのですね。で、公開日初日、レイトショーで観に行って、あまりのコウフンに、放心状態で映画館を出て、次第に落ち着きを取り戻すと夜中だというのに同じ思いを共有できる友だちに電話して大騒ぎした、とまあそういうわけです。そもそも予告編で染谷将太を見た時にわたし、確信しましたもん、これなら間違いない、って。とりはだ立てながら、頼んだぞ、染谷将太!ってずっと言ってました。もう8年も前のことですけど、鮮明に思い出せますよ。

 

↑染谷将太。さすがに「みんな!エスパーだよ!」のときとは違いますね。

 

 期待に違わず、のっけから素晴らしい。とにかくマンガでは味わえない音楽が秀逸ですよ。佐藤直紀による重厚感のある、なんなら脳みそにまでひびいてくるかのような音楽は、マンガの世界観を十分に表現してました。これがプリキュアの曲まで作曲してるっていうんですから、そのセンスたるや、素晴らしいものがあるというものですよ。

 

 若干ですね、じつはもう一人の主役である、寄生獣ミギーの声を阿部サダヲっていうのが、未だにナットクしていないのは事実です。まあこれは人それぞれで、マンガを読んでいる人の思い込みもあって仕方ないことではありますが、わたしはどちらかというと、あの「新ウルトラマン」のザラブ星人の声をやった、津田健次郎氏的な声を想像してましたから、声質的にはまったくの真逆ですからね、やっぱりそれはザンネンなところではあります。10回以上観ていても、まだ慣れないってのはやっぱりこれからも何度観てもダメなんでしょうね、きっと。

 

↑ミギーさんです。

 

 モーションキャプチャーで、阿部サダヲもちゃんと演技してたそうですよ。それは好感が持てます。そもそも阿部サダヲはキライじゃないですし。

 

 CGはやっぱり思っていた通り、なんの問題もないですね。あの「永遠の0」を撮った人たちですからね、心配はしてませんでしたが、いざ目の当たりにしますと、いやはやほんとに素晴らしかったです。違和感まったくないですから、普通の日常として観てしまいますよ。やってることは全然日常じゃないですけどね。

 

↑これが……、

 

↑こうなりますね。

 

 マンガでも冒頭のシーンですけれど、わたしあまりに素晴らしくって、ていうかほんとになんか「ありがとう」って感じで、泣きそうになりました。

 

↑CGがしっかりできるから映像化できたわけですよね。それがよくわかりました。

 

↑こういうのが映像で観られるとは、ほんとに感謝しかないですよね。

 

↑闘うミギーさんです。やっぱり声は阿部サダヲでした。

 

 総じて配役はいいですね。キャスティングの妙、とでもいいましょうか。お母さん役の余貴美子さんなんか、もうまんまですよね。原作のマンガ読んでますからこの先の展開がわかっちゃってるので、観ていてとっても切なくなってしまうのですけれども、要するにそう思わせる人をキャスティングした、ってことでしょう。朝食のシーンで、息子の染谷将太の寝ぐせに突っ込むシーンがあるのですけれども、アドリブだったそうで、感服ですよ。

 

↑こんなお母さんぽくって優しそうなのに……。

 

↑最後はこんなんなっちゃいます。表情がすごいですね。

 

 そういうところで、ワクワク感を胸に秘めながら、いよいよ染谷将太が本領発揮しだしてくれます。ミギーのおかげで体育の授業のバスケットボールでシュートを決めてビックリするあたりで(この時点ではまだミギーとは接触してませんけど)、もう染谷将太への信頼感しかなくなりますよ。とにかく本作の成功は、CGとかなんとかではなく、染谷将太にかかっている、と思ってましたから、よっしゃあ、てガッツポーズしたのを覚えてますね。

 

↑ちょっと写真のワンカットでは響きませんけど、これでわたしは安心した、て感じです。

 

 お相手が橋本愛ちゃん。妖艶な美女とでも言いますか。それでこの演技力。容姿はマンガとは全然違いますけど、そんなことどうでもいいほど染谷将太の彼女役を演じてくれてました。

 

↑こんな笑顔が素敵なのに、

 

↑ここの一番演技力を必要とするシーンでは、とても若手とは思えないほどの演技力を魅せてくれました。

 

 お母さんの余貴美子さんが勤めている薬局がある商店街のシーンは、なんと円頓寺(えんどうじ)商店街が使われているということで、それも楽しみではありました。名古屋駅から歩いてちょっとのところにある商店街でしてね、名古屋生まれの名古屋育ちの身としては、どうしてまたこんなさびれた商店街を見つけ出したんだろう、というギモンを胸に秘めながらも、またこれもありがたいことでした。映画がほんとに身近に感じられましたからね。もちろんわたし、聖地巡礼いたしましたよ。当時は名古屋駅のセントラルタワーズの32階で働いてましたので。映画の中のような活気はまったくなかったですけれど、じつはこの映画のおかげもあって、最近は徐々に人波が戻ってきたようですよ。名古屋人としても感謝するところなのです。

 

 そうこうしていると、どんどん演技派が出てきます。

 

↑國村さんと山中崇。

 

 國村さんは言うに及ばずですが、わたし山中崇もずっと好きな役者さんです。決して主役にはならないけれども、たまにその主役を食っちゃうほどの存在感を見せてくれたりして。わたし実はこの人と同じ字が名前にあるので、ドラマ「のだめカンタービレ」で初めて見た時からずっと応援してます。

 

 北村一輝もいいですよね。もうこれ、さすがの一言に尽きます。ネタバレしますが、寄生獣に身体を乗っ取られたような雰囲気なのに実は生身の人間だ、なんていうとんでもなく難解な役をできるのは、もうこの人しかないでしょう、という感じです。

 

↑寄生獣の住処にいれば、寄生獣にしか見えませんよ。

 

↑でも人間ですよね。

 

↑池内万作も出てました。伊丹十三の息子さんですね。

 

 って、今の若い人たちは伊丹十三って言っても知らないんでしょうね、きっと。邦画界の常識を変えたとも言われた、一世を風靡した映画監督ですね。その息子さんも、いい演技してます。宮本信子さんの息子ですからね。血筋はサラブレッドです。

 

 この池内万作と戦うところは、マンガでもキンチョーのシーンですが、映画でも、何度観てもキンチョーしますね。これ、どうやって切り抜けられるんや、て涙目になってしまいますよ。でもってその切り抜け方が秀逸で、ほんとに素晴らしい話なのですね。

 

 で、極めつけが最重要人物である田宮良子役の深津絵里。いやあもうすごいです。考えたら、この人以外にはありえない、ていうか、この人を念頭に置いてマンガ描いたんじゃないかってくらいのドハマり役でした。

 

↑まんま「田宮良子」なのですよ。

 

 このマンガを読んでいた時は、絶望感しかありませんでした。いちいち重くて苦しくて、心の葛藤がずっとあって、そして逃げられない。お母さんが殺されて身体を乗っ取られることになってしまうなんてもう、鬱になりそうです。そんな世界観を、次から次へと出てくる素晴らしい役者さんたちの素晴らしい演技と、カット割りや雰囲気といった演出、そして音楽といった映画におけるすべての要素をしっかりと絡み合わせて、完璧に表現してました。観ていて、マンガのときとおなじ絶望感をずっと味わってました。ずっとドキドキしていたのですよ。わたし最後まで、そんなことはないとはわかってるのですけれども、お母さんは戻ってくるのだ、と思ってましたからね。そうした中で、染谷将太がやはり最高でした。「ありがとう」しか出てきませんでした。

 

 話的には、このあと新一(染谷将太)も死んでしまいます。いやこれ、どうすんの、ってなりますよ。もうなんか、いろいろ革命でした。原作者の岩明均は天才かと思いますよね。いや、天才ですよ、間違いなく。読んでる側に絶望感を常に味わわせながらも、ムリなくそれを切り抜けさせていく。最初っから全部構想が練ってあって、それにたくさんの肉付けをしていってる、というそんな感じでマンガ読んでました。で、それをここまで完璧に映像化したというのが、ほんとにすごいことなのだと思うわけです。特に音楽は、その使い方は邦画史上最高だと思いますよ。

 

↑若干、もうちょっと身体しぼっとけよ、とは思いました。

 

 惨殺シーンは、本作の一番の観どころでしょうか。CGのフル活用で、とんでもないことになってましたが、これぞ映画のだいご味、ではありました。

 

↑音楽が胸に響いてきて、心臓がバクバクしてました。ちょっと見にくいですけど、JK全員半分ずつになってます。

 

↑ここはわたしの一番好きなシーンです。マンガでも好きな場面でした。

 

 このあと、お母さんとの最後のバトルシーンとなりますが、ここは泣けましたね。余貴美子さんでほんとによかった、と思うと同時に、その後の染谷将太の顔を見るにつけ、手を合わせたい気持ちになりましたね。ずっと心の中で「ありがとう」って思ってました。何度も言いますけど。

 

↑冒頭の写真とは別人ですね。

 

 ラストは、北村一輝が市長に当選したところからエンディングまで、ノンストップで先ほどから言っているあの音楽、この映画のキモであろう佐藤直紀氏による名曲が流れますが、この数分が圧巻です。もうなんかドキドキして、圧倒されます。素晴らしい映画にしてくれて、ほんとうに感謝なのです。

 

 ただ、です。ここまで言っておいてほんとになんなんですけれど、どうしても二つが減ってしまう要素があるんですよ。本作を観た方は、そのうちの一つにはおおかた見当がつくかもしれませんけれど、まず東出昌大の存在ですね。わたしもうなんか、怒りを通り越して笑ってしまいました。

 

いえね、そういう役ではあるんですよ。無理やり人間に近づこうとして、笑えないのに笑顔を造ったりして、それが見た目でもうぎごちなくって、だからすぐに寄生獣ってわかってしまう、っていう。だから、演技力のなさに定評のある東出だったらちょうどよいじゃないか、ってのキャスティングだったのだろうと思うわけですけれども、でもそれにしたってそもそもの演技力がなければ成り立たないわけですよ。以外に難しい役ですよ。そんな難しい役を、東出ごときができるとは思ってませんでしたが、案の定でした。

 

↑もうね、爆笑案件でした。

 

 まあでも、そんなことはほんとは微々たるものなのかもしれませんね。なにしろ、東出の大根ぶりはみんな知ってることですし、ほかが良すぎるわけですからね。人としても役者としても、ケツの穴の小さいどうしようもないヤツごときが、この映画の良しあしをどうこうできるわけもないわけですね。

 

 でもね、もうひとつ、どうしてもこうなんかナットクできないいうか、なんでそうしちゃったの、っていうのがありましてね、これがをもうひとつ、いうか、そもそもこれこそがふたつ減らしているといってもいいのですけれども、なんで新一のお父さんが亡くなったことになっているの、ということなんですよ。

 

 ほんとにどうしてそうしちゃったんでしょう。う~ん、お母さんとの話に重点をおきたいためにしたのでしょうかねえ。わたし、マンガではこのお父さんと息子の新一(染谷将太)との、お母さんが殺されたあとのやりとりが大好きだったんですよ。お母さんが乗っ取られて殺される、っていう衝撃的な事実があるから、そのあとのお父さんとのストーリーがものすごく家族愛としていいものに描かれてるんですけどねえ……。お父さん役はだれだろうって予告編とか見てて、でもキャストに名前がないのですよ。どうしちゃったんだろう、て。そんなすごいサプライズなのか、若いころの原田芳雄なら完全にハマり役なのに、とか思ったのですけれども、だから新一のお父さんが亡くなったことになっていると知った時は、ビックリというよりも衝撃でした。今でもその思いは変わらず、だからお父さんのシーンがあるもうひとつの「寄生獣」を観てみたい、という思いはずっと持ってます。まあ若き原田芳雄は絶対ムリですけれども、それは別として、寺脇康文が完璧にお父さん役に合うと思うのですけれどもね。なんとかならないのでしょうか。

 

 とはいえ、それ以外は非の打ちどころもありません。よくぞここまで映像化してくれた、と心からの賛辞を贈りたいと思います。

 

 いよいよ次は「完結編」。当時は、早く観たいわ~、こんな半年近くもまたせるなんて、拷問に近いわ、て思ってました。今これを書いていても、早く「完結編」が観たくてしかたないです。それほどまでの最高傑作でありました。

 

ほんとにみなさん、ありがとうございました。次回もよろしく、です。

 

 

今日の一言

「もし左手に寄生していたら名前は『ヒダリー』だったのか!?」

 

 ところで、ラストで特殊部隊がSAT(サット)として出てきまして、次回作では寄生獣と戦闘を繰り広げることとなるのですけれども、これSITじゃなくってよかったと、つくづく思いました。だってこれ、日本人が発音すると、どれもこれもみんな「シット」っていうんですよ。「シット」。いやそれじゃ “SHIT” じゃないですか。「糞」ですよ、「クソ」。なんでちゃんと“SIT”て発音できないか、と、いつもそれ聞くと恥ずかしくなるのです。ほんとによかった、と、こんなところでも山崎貴監督に感謝するのでした。

 

 

レビューさくいん

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