★★★★★★★☆☆☆

1990年 105min.

ネタバレ まあ、当然のように。

敬称略

 

 

 前作、「ロッキー4」から5年後の作品ですね。わたしの記憶としては、もうちょっとあとのような気がしてましたから、意外に早かったんやなあ、という印象です。内容が、ロッキーが現役を引退して若い後継者を育てる、的なものだったと記憶していたので、そういう印象なのかもです。とはいえスタローンは、この時点で44歳ですけれどもね。

 

 脚本はスタローンですが、監督はジョン・G・アヴィルドセン、音楽ビル・コンティと、要するに一作目である「ロッキー」の布陣に戻して、ロッキーの新たな一歩の船出、ということにしたかったのだと思いますよ。

 

 ただ、結果から言いますとね、本作はシリーズ最低の興行収入だったそうです。ロッキージュニア役に、スタローン自身の本当の息子を抜擢したりなんかして、バージェス・メレディスも復活してましたし、けっこう気合入ってたと思うんですけどね、ザンネンな結果ではあります。

 

 オープニングは毎度毎度ですが、同じ手法ですよ。こちらは「ロッキー2」からの流れですから、本来はジョン・G・アヴィルドセンのものではありませんけれども、踏襲してます。わたしはこれはキライではないですし、すんなり入れますからね、安心感がありますよね。

 

 それにしても、このオープニングで前作「ロッキー4」を今一度再認識させられるのですけれども、なにしろロッキーはサイボーグ、となりますね。あれだけドラゴのパンチを受け続けても、普通の顔して反撃してるんですよ。ランボー以上です。やっぱ、やりすぎの感は否めません。だってアポロ・クリードはあのパンチで死んじゃったんですからね。

 

 なんて思ってたら、そのあとリングから降りたロッキーは、ロッカールームのベンチで、恐怖に震えてるというシーンが展開されて、ちょっとそれは違和感でしたねえ。とてもそんなになりそうな様子は、前作のラストではなかったですからね。無理やりという感じはありましたかね。

 

 それと、これは「ロッキー4」でも思ったのですけれども、劇中になんか吹奏楽団みたいのが「ロッキーのテーマ」を演奏するのはどうなんですかね。アリなんでしょうか?あのファンファーレって、映画のものじゃなかったんですかね。昔、日本のドラマで、東野圭吾の「浪花少年探偵団」をやった時に、主題歌がゆずの「また明日」って曲だったんですけれどもね、最終回でなんか子供たちがこれ合唱するんですよ。わたし観ていてなんかあまりのザンネンさとイタさに恥ずかしくなってしまったのですけれども、なんかそれと同じ匂いがして、ちょっと赤面するという結果になってしまいましたよ。世間的にはどうなんですかね、こういうの。アンケートとってみたい気もします。

 

登場人物はかわりません。加えて、先にも書きましたけど、バージェス・メレディスが再登場してくれます。回想で昔のワンシーンを、てやつではないですよ。ご本人が本作のために演技してました。当時83歳。昔から老けてましたから、そんなに歳とったようには見えませんでしたね。力強い演技も健在でしたしね。名優ですよね。

 

↑どう見ても名優の匂いしかしません。照れ

 

 バート・ヤングは相変わらずクズでした。クズ味が増したとか減ったとかはないです。今まで通りのクズのままです。だからたまにいいことも言います。いいこと言いのクズ、です。観てる方は安心ですね。当時50歳ですって。わたしより6歳も下ですよ。びっくり仰天です。

 

↑年下には見えません...。びっくり

 

 あと、新参者としては、先にも書いたセイジ・スタローン。実の息子ですね。14歳のわりに声変わりしてなくって、かわいかったですよ。「ロッキー4」とは別人なのが気になりますが、まあそれはそれでヨシとしましょう。ただ、36歳で10年前に亡くなってます。薬物中毒とか言われましたけれど、公式発表は心臓麻痺による自然死、とのことです。いずれにしても、息子を亡くしたスタローンの心中ははかりしれないものがあり、とくに本作ではとっても仲良く共演してましたから、ザンネンでなりませんね。ショボーン

 

↑どことなく似てますね。照れ

 

↑エリザベス・ピーターズ、激カワです。ラブ

 

 ロッキーの愛弟子で、のちにロッキーを裏切るトミー・ガンに、本物のプロボクサー、トミー・モリソン。ボクサーなのにちゃんと演技してて、驚きでした。ただこの方も、セイジの1年後の2013年、44歳でエイズにより亡くなってます。ボクサーとしてはそれほどすごい成績というわけでもなかったようですけど、でもマイク・タイソンとの試合も組まれていたり、続けられていればと思うとやっぱりザンネンです。命は大切にしないと、と思わせられましたね。

 

↑演技のほうでも行けそうでしたからね。

 

↑エイドリアンとのラブラブは変わってませんね。チュー

 

 脚本のスタローンは、ちょっと迷走しちゃったのですかね。セリフで、「人生にはA面とB面があって、お前(息子)はA面、おれ(ロッキー)はB面。A面のお前の目でおれは人生を見直してるんだ」なんて、とてもパンチドランカーとは思えない言葉を吐いて、まあ脚本やっぱりすげえよなあ、なんて思ってたのに、突然破産ですと。こういう破産の仕方も、アメリカならあるんかな、とは思いますが、それにしてもやっぱりやりすぎやろ、的なところはぬぐい切れませんよ。まあこの「ロッキー」シリーズは、主要メンバーが死んじゃったり、死の原因となるパンチを何発も浴びても平気だったりと、ずっとやりすぎっちゃやりすぎなんですけどね。笑い泣き

 

 ジュニアが、振り向いてくれないパパに不信感を募らせて、っていうことにも中盤なってくるんですけどね、でもそれはそれでジュニアもパパの仕事の邪魔したらあかんやろ、てとこもありましたよ。そこは脚本力にもかかってきますけど、確かに家族愛を描いたシリーズではあるものの、そういう社会常識的なことを息子に教えるのも必要だとは思うわけです。ていうか、そうなるとちょっとボクシングからは離れてきちゃいますね。そういうことも影響しての興行成績、なのかもです。

 

 ただすごかったのは、スタローンの変貌でしたね。「ロッキー3」からスタローン・ロッキーはすっかりキレイな富豪になってましたけど、もちろん本作も出だしはそうだったのですけれども、破産して一文無しになって、再起の決意をして昔の帽子をかぶったとこのスタローンは、「ロッキー」「ロッキー2」のあの、汚れたロッキーでした。これは素直にわたし、すごいと思いましたよ。おおおっ、て言っちゃいましたからね。スタローン、気合は入ってたんですね。

 

↑この瞬間は昔へタイムワープした感じでした。

 

 で、トミーは裏切りますね。そういう話ですから、裏切ります。わかってたことですけどね、やっぱり裏切られると気分は良くないですよ。これもまた、お客さんの入りに影響したのでしょうね。チャンプになってインタビューで恩人の名前を叫ぶとこなんか、いやいやそこまでロッキーを落とさんでもええやろ……、て寂しくなっちゃいましたよ。観客みたいにブーイングする力も出ませんでした。

 

 で、ラストはストリートファイトですか……。いやいや、素手であんなに殴ったら死んでしまうやん、て思いながらエンディングを迎えるのでした。

 

↑痛いでしょうに。こんなさわやかには笑ってられませんよ、きっと。ガーン

 

 いい映画だとは思いますよ。思いますけどね、でもボクシングとはちょっとずれたところで話が進んで、けっきょくフツーの家族愛の映画になっちゃいました。ほんとにね、いい映画なんですよ。でも「ロッキー」ではないな、ということでした。ほんとは☆6つなんですけど、セイジと彼女役の子がかわいかったので、ひとつ増やしときました。「ロッキー6」に期待、です。

 

 

今日の一言

「最後はいつも、エイドリア~ン!」

 

 

レビュー さくいん