★★★★★★☆☆☆☆

1982年 99min.

ネタバレ あってないようなものです

敬称略

 

 

 ロッキーと言えば、公私にわたってハングリー精神満載のシルヴェスター・スタローンというイメージですれども、こと本作に至ってはもうのっけからとーってもキレイなスタローンが出てきてましてね。「ロッキー2」までとまったく違うスタローンが展開されてますよ。びっくり 同じ1982年に「ランボー」があって、ちょっとその差にビックリ、というところなのですね。これが役作りということなのであれば、あっぱれスタローン、なのですが。

 

↑キレイなスタローン。爆  笑

 

 で話は、そうしたすっかりハングリー精神を忘れてしまったチャンプ・ロッキーが、どうやって昔の強かった自分を取り戻すか、ということが焦点で進んでいくわけです。

 

 監督、脚本は、前作に引き続きスタローン自身がやってます。自分で書いて自分で演出して、自分で演じるわけですから、まあやりたい放題なのでしょうけれども、そこはそれ、さすがエンターテインメントに徹したスタローン、まったくイヤミがなく、ごくごく自然なサクセスストーリーに仕上げてますね。内容としては素晴らしいです。音楽も、安定のビル・コンティですから、そこはもう安心していられる、ということになってます。

 

 ただ、でもやっぱりザンネンながらの3作目、ではありました。まあなにしろ「ロッキー」「ロッキー2」が素晴らしすぎて、なかなかそれを超えるどころか、肩を並べる、というのも難しいわけで、それに挑戦したスタローンに敬意は表しますけれども、さすがに☆6つ止まり、という感じです。ショボーン

 

 だいたいシリーズものってのは、2作目は劣る、2作目良くても、その良かった分の反動であるかの如く3作目で散々な目に合う、というのが通例ですね。2作目もなかなかによかった、の代表的な「ダイ・ハード」、「エイリアン」、「ビバリーヒルズ・コップ」も3作目では地に落ちてましたからね。あくまでもわたしの感想ですけれども。ゆいいつ、わたしの中で3作目もよかったと思えたのは「リーサル・ウェポン」でしたが、やっぱりこの「ロッキー」も、そこまでひどくはないものの、ザンネンな結果となったと思うのです。

 

 いや、おもしろくないことはないんですよ。どっちかっていったら、話もわかりやすいし、みんな演技うまいし、だからわたしは好きなんですが、やっぱり前2作がすごすぎた、てことなのですね。ちなみに「ロッキー」の受賞の数々は以下です。

 

 アカデミー賞受賞 作品賞、監督賞、編集賞

 同ノミネート 主演男優賞、主演女優賞、助演男優賞(2人)、脚本賞、歌曲賞、音響賞

 ゴールデングローブ賞受賞 作品賞

 同ノミネート 監督賞、主演男優賞、主演女優賞、作曲賞、脚本賞

  ニューヨーク映画批評家協会賞受賞 助演女優賞

  ロス・アンジェルス映画批評家協会賞受賞 作品賞

 

 賞レースで受賞したから名作、とは一概には言えないとも思うのですけれども、とはいえ良くなければ受賞もしないわけで、やっぱりだから「ロッキー」はすごくって、それを超える、それに肩を並べる、ってのは至難の業、ということなのでしょう。ショボーン

 

 映画は、今は無き懐かしの「ユナイテッド・アーティスツ」のロゴから始まりますね。

 

↑おお懐かしい、と思わず声に出してしまいましたよ。

 

 わたしの映画歴は、高校1年生のときに観た「E.T.」からですから、かれこれもう40年になりますけれども、そうなるとやっぱりこうしたノスタルジックに気分も高揚するというものです。

 

 そして、前作のエンディングがオープニング、という、「ロッキー2」でも使用した荒業を使いますが、これがまた琴線にふれるというかなんというかで、オープニングでもう、ひと泣きという事態に陥りますよ。なにしてくれんねん、スタローン、てことです。で、その後に続く、サバイバーの「アイ・オブ・ザ・タイガー」。あまりの懐かしさに、それだけでまた泣けますね。こにくったらしい演出なわけです。すっかりスタローンに魅了されます。ニヤリ

 

 ちなみに、今回ロッキーの敵役として出演しているミスター・Tですが、テレビシリーズ「特攻野郎Aチーム」で有名ですよね。なんとこの「ロッキー2」が役者デビュー、ということでした。わたしそうとう驚きましたよ。びっくり だってすっかりもともと役者なんだと思ってましたからね。本作の翌1983年に「D.C.キャブ」ってコメディに出演してましたし、てっきり、だったのですけれども、本職はボディガードだったそうですよ。その後プロレスラーになったようで、たくさんびっくりでありました。

 

↑モヒカン・・・・・・。Tは、本名ローレンス・テュローの「テュロー」のTだと思いますね。

 

 プロレスラーと言えば、ハルク・ホーガンも出てますね。わたしもその昔はプロレスに明け暮れましたから、今観てもやっぱりホーガン、カッコいいなあとは思います。まあわたしはどちらかというと、ホーガンが参戦していたアントニオ猪木の新日本プロレスより、ジャンボ鶴田が大好きだったので、ジャイアント馬場の全日本プロレスのが好きだったですけどね。わたしのリングネームも「ジャンボ鶴田浩二」でしたしね。笑い泣き

 

↑男前ですよ。

 

 ていうかハルク・ホーガン、ここではなんかサンダーリップスなんて役名で出演してましたけど、そこはやっぱりハルク・ホーガンでよかったのでは、と思いました。どうでもいいですけど。普通にセリフしゃべってましたので、ちょっと驚きではあります。

 

↑いや、こんなにデカくはないと思いますけど……。(;^_^A

 

 その他出演者は、もちろんトレーナーのミッキー役にバージェス・メレディス、ロッキーの奥さんエイドリアンにタリア・シャイア、エイドリアンのダメなアニキにバート・ヤング、そしてライバルであり、本作以降は大親友となるアポロ・クリードにカール・ウェザーズ、アポロのトレーナーにトニー・バートンとまあいつものおなじみのメンバーが全員出演しておりました。

 

↑あいかわらず精力的です。

 

↑タリア・シャイア、歳をとるごとにキレイになってゆきますね。

 

↑ダメな義兄ですが、いい演技するんですよ、これが。

 

↑まさか親友になるとは、ですけどね。でもアメリカらしい、いい流れではあります。

 

↑トニー・バートン。もっとガンガン有名になってもいいと思いますけれどね。

 

 わたし的にザンネンだったのは、マフィアのガッツォ役だったジョー・スピネルが出てなかったことでしょうかね。まあ別に好きとか嫌いとかというわけではないのですけれども、やっぱりシリーズで途中から出ない人がいると寂しいもんではあります。この方、なにか名を残すようなそんな大役とか、主演どころか助演と呼べるほどのものもないのですけれども、映画に対しては貪欲で真摯であったようで、同じイタリア系として友達だったスタローンが「ロッキー」で成功したために、自分もいっちょ、みたいな感じで「マニアック」ってスプラッター映画を製作して、脚本、主演までやっておられました。わたしも観ましたけど、なかなかにそれこそマニアックな映画ではありましたよ。ちゃんと観られる作品になってましたから、驚いたのを覚えてますが、内容の細かいところは忘れてしまいました。今ではもう観るすべはないのでしょうかね。中古のビデオテープを発掘するしかないかもです。ご本人は1989年に52歳の若さでお亡くなりになりました。もし生きておられたら、なんかもっとマニアックな映画が何本か観られたかもしれないと思うと、やっぱりザンネンですね。ショボーン

 

 タリア・シャイアはもうなんかスタローン以上にその変貌ぶりにビックリなわけですが、さすがアカデミー主演女優賞にノミネートされるだけのことはあるということですね。本作では、一作目からのチャーミングさを失わずに、それに加えてとってもお奇麗になっておられまして、安定の演技力でしっかりと紅一点、華を添えられてました。

 

↑こんなん、とってもかわいいじゃないですか。照れ

 

 演技力でいったらやっぱり御大、バージェス・メレディスですね。当時75歳で、たくさん怒鳴っておられましたよ。力強さはさすがの役者魂、というところです。

 

 カール・ウェザーズも、これほどの演技ができるとは思ってませんでしたから、当時はわたしもとっても驚いたもんです。もともとプロのフットボール選手なんですよ。アメフトプロリーグ、NFL出身で俳優ていったらO・J・シンプソンやババ・スミスがいましたけれども、そんな彼らもかすんでしまうほどの存在感と演技力はすごかったです。「プレデター」にも出てて、アーノルド・シュワルツェネッガーとも共演してるという、なにやらマッチョ食いの様相ですけれども、この二人と共演できるというのはただ単にそれだけですごいと思いますね。フットボールではラインバッカー。そこで培われた俊敏さも、砂浜を走るシーンなんかではしっかりと魅せてくれてました。スタローンの、彼に対する敬意、というところなのかもですね。公私ともに仲が良さそうでありました。

 

↑めっちゃ速かったです。スタローン必死なのに、なんか余裕で流してましたよ。「すげえなあ」って言ってしまいました。

 

 ただですね、今まで触れませんでしたけれども、じつはミスター・Tだけがとってもザンネンなことになっておりましたのですよ。まあ、これがデビューなのだから、ということもありましょうが、とはいえそれを差し引いても、あまりに周りがみんな凄すぎるためにものすごく浮いてしまっておりましてね。だからってほかに強そうなやついたのか、ってなったらちょっと想像もつきませんし、もちろんオーディションをした結果なのでしょうから、そこはそれ、演技力には目をつぶって、ということだったのでしょうね、きっと。まあ仕方ないのでしょうか。

 

 そもそもなんだかんだでスタローン、めっちゃ演技うまいですからね。なんか本作以降、えらい目の敵にされたように演技力が酷評されたり、ラジー賞(その年の一番ひどい映画や役者に送られる、アカデミー賞とは真逆の賞)を何度ももらったりとかしてるのですけれども、わたしは全然そんなことないと思ってますよ。でなきゃ「ロッキー」や「ランボー」がここまで大ヒットするはずないですからね。本作でも彼の演技力があったからこそ、作品として成り立ったということも言えるわけで、まあ多分にやっかみみたいなのもあるのでは、とわたしは思ってますけどね。ミスター・Tとの対戦2戦目での身体の絞りようは、わたしこれまた「すげえなあ」って言ってしまいましたからね。

 

↑目に見えて絞られてました。「すげえなあ」なわけです。

 

 なおスタローン、ボクシングに関してはプロ級の動きを見せてますが、なんかそれ以外のスポーツはどうにも弱そうですね。さきほど紹介した、カール・ウェザーズとの走るシーンもそうですし、縄跳びを飛ぶシーンもぎごちないですし、なにしろ水泳のバタフライがもうなんともはや、でしてね。まあこればっかりは運動神経ですから、後天的にどうこうしようとしてもなかなか難しいわけで、だからほんとそこがもったいない気がしましたね。元水泳部のわたしから見て、溺れてるようにしか見えませんでした。観ていてちょっと恥ずかしかったです。ショボーン

 

 さて、こうした演技力の裏打ちがあっての本作ですけれどもね、じつは脚本的にはちょっとどうやろ、的なところはいろいろありましてね。スタローンが自分で脚本書いてますから、さきほども書きましたようにやりたい放題みたいなところがあるんですよ。

 

 物は、シリーズ通して一貫してのサクセスストーリーなのですけれども、だからいったん主人公を落とさねばならない、というところがネックなのですね。「ロッキー」、「ロッキー2」のときはよかったんですよ。だってもともと底辺だったのがチャンプに挑戦して勝って世界チャンプになってアメリカンドリームを成し遂げる、ってことですからね。でもシリーズ3作目で、主人公である世界チャンピオンにまたサクセスストーリーを仕掛けようと思ったら、これ一回チャンプを落とさなきゃならないわけですよね。その落とし方が尋常ではないと、現実味が薄れてやっぱり作品としてのリアリティがなくなっちゃうんですよ。

 

 その最たるシーンが、なんかパーティー会場みたいなところでトレーニングするシーンでしたね。さすがにやりすぎでしょう、と。わたしこれ、ただのアホにしか見えなかったですもん。ガーン

 

 でもって、ミッキーの死。これはわかりますよ。わたしも小説書いたりしてますからね、この気持ちはよくわかるんですけど、大切な人の死を持ってくるってのがちょっと安易な気がしちゃいましたね。同じようなことが「ロッキー4」でも起こりますけれど、これでは「太陽にほえろ!」の殉職シーンじゃないか、と思ってしまったのでした。いや、気持ちはわかるんですけれどね。

 

 普通に演出としてダメなところも、一か所でしたけどありました。ミスター・Tと一戦目に闘って負けてチャンプから陥落しますよね。で、こんどは挑戦者としてチャンプ・ミスター・Tと闘うわけですけれども、その際にアポロと一緒に一戦目の映像を見て対策を練るというシーンがあるんですね。これ、本作での闘うシーンを流用したのですけれども、これね、いったい誰がどこからどうやって撮ったんや、てなことになってるのですよ。誰も気づかなかったのでしょうかね。映画観た人たちの中には気づいた人はたくさんいたと思いますけど、こういうところにちゃんと気づかないと、やっぱりラジー賞かな、てなことになってしまいます。

 

↑カメラの人、ゼッタイ一緒にリングの中に入ってます。

 

 その世界チャンピオンであるミスター・Tに対するブーイングも、わたしはちょっとやりすぎかなて思いましたよ。いくらなんでも、どんだけヒールでも、そりゃ闘いの場がスタローンのホームグラウンドであるフィラデルフィアであろうとも、現役の世界ヘビー級チャンピオンですよ、世界で一番強い男なんですよ、それにあの満場のブーイングはないんじゃないか、ってわたしは思いました。

 

 二戦目では二人ともめちゃくちゃ殴り合ってるのに、顔が変形するのはロッキーだけだし、いやいやいくらなんでもあんなに顔面殴り合ってて二人とも平気ってのはもうついていけやせんぜ、旦那、て感じになってしまいました。笑い泣き

 

 せっかくアポロと手を組むなんて、考えもしなかったようなアイディアを生み出したなら、もうちょっと細部にまでしっかりと気を配ってくれていたらなあと、ザンネンなのでありました。

 

 最後はまあしっかりと、感動まではいかないまでも、楽しませてくれてサクセスストーリーの完成となりましたのでね、溜飲は下がりましたけど、以上もろもろで☆6つとご理解いただけたら幸いです。

 

 さあ、これを踏まえての「ロッキー4」はどうなるか、というところですが、これ世間的にはそうとう評価が低いみたいですねえ。なんなら本作よりはるかにダメダメみたいな。楽しみにすることといたしましょう。

 

 

 

今日の一言

「うわ、ロッキー・ジュニア、めっちゃかわいいやん照れ

 

 

レビュー さくいん