★★★★★★★★☆☆

1987年 106min.

ネタバレ ありますさ

敬称略

 

 

 いやあこの映画、めちゃくちゃマイナーなのですけれども、わたしとしては、なんでこれマイナーなん?、という思いの強い映画であります。一応ビデオ化はされましたけれども、その後のデジタル化はされず、テレビでもCSでも放送されないということで、せっかくこんなおもしろい映画なのにもったいないなあ、という気がずっとしてるのですね。ので、今回ここで紹介してもですね、じつはだあれも観られない、ということなのですけれども、でもひょっとしたらなにかの拍子で観る機会が来るかもしれないわけで、そういうときに観逃がしてはならない良作だと思い、あえて紹介する、というわけです。

 

 まあなにしろ、ジェイムズ・ベルーシなわけですよ。公開当時は、アメリカでもベルーシと言ったらジェイムズのお兄さんでもある、伝説のコメディアン、ジョン・ベルーシでしたね。ハチャメチャではありましたけれども、そのコメディセンスは、後世のコメディアンたちに大きな影響を与えたと言われるほどの人でありました。ただ、その芸風と同じく私生活もハチャメチャで、けっきょくドラッグの過剰摂取で33歳という若さで亡くなっちゃいましたね。「ゴーストバスターズ」に出演予定だったそうですからね、もったいない気しかしませんね。「ブルース・ブラザーズ」の人ですよ。

 

 で、あまりに兄が大きかったために、なかなか認知されなかったのがこのジェイムズ・ベルーシなのですけれども、それまでお兄さんのあとを追うようにコメディ路線で攻めていたのを、うまくここで方向転換させて、名前が知られるようになった、とそんな感じです。

 

↑こちらのお方です。ニコニコ

 

 ので、わたしも久々に観るこの映画を、とっても楽しみに観はじめた、とまあそういうわけですね。

 

 監督はクリストファー・ケイン。日本公開作どころか、自身の監督作もそんなに多くはないのですけれども、でも「ヤングガン」の監督ですから、そんな悪い監督じゃないと思いますよ。なんで少ないんですかね。そっちのほうが不思議ではあります。

 

 本作自体はB級映画です。それは間違いないところですね。バーで離婚の腹いせに泥酔して、離婚訴訟のときの弁護士が元妻とできているのを知って大暴れするほどの教師が、警察も寄り付かないような荒廃したブランデル高校の校長に就任して、その悪ガキどもと対決する、ってもうこれB級の香りしかしないわけですよ。でもそういうのが面白いじゃないですか、映画って。ので、始まっていきなりの「TRI STAR」のロゴを見て感慨にふけりながら、座を正したわけです。

 

↑今じゃ懐かしいロゴですが、音楽も思い浮かびます。照れ

 

 原題は“THE PRINCIPAL”、すなわち「校長先生」ですね。まんまやん、とか思いながらも、そういえば当時はこの映画のこと「校長先生」って呼んでたな、とか思い出に浸ります。

 

 で、結論ですけど、めっちゃおもろかったですよ。ニヤリ これやっぱり、今観られないのがほんとにもったいないと思います。どうしようもないことをどうこう言ってもしょうがないのでしょうけれども、なんとかならんのかな、と心から思いました。

 

 なにしろベルーシ、強いです。ジャッキー・チェンとかスタローンとかシュワルツェネッガーとかスティーヴン・セガールとかはたまたチャック・ノリスではないですけれども、その風貌とはかけ離れたけっこうな武闘派という設定は、観ていて痛快ですね。なんかの技があるとか、武術の使い手とかまったくないです。ただ単に強い。ギャングまがいの高校生たち(いや、とても高校生には見えませんでしたが)にも全然普通に、なんなら上から接してますし、そういうところで育ったからかな、と思ってもそういう説明はいっさいないし、だからってナットクできないわけではなく、それどころかいちいち溜飲が下がってスカッとするわけですよ。ニヤリ

 

 実際にこんな高校があるわけがないとは思いますよ。ほうぼうの高校を追い出されてきたようなやつらしかいない高校で、生徒どうしが殺し合いみたいなケンカしてても警察も寄り付かない、なんてそんなことがいくら80年代だからってもあるとはとても思えませんが。いくら映画でも、と思うのですけれども、でもなんか許せちゃいますね。

 

 わたし、前からこのブログで、いくら映画でもあまりに現実離れしていてはやっぱりマイナスで、なんてエラそうに言ってましたけど、本作はそもそもの設定が現実離れしているのに、逆にそこに現実感が挿入されるって形になっているので、全然違和感ないんですよね。それどころか、いやいややっぱりほんとにこういう高校あるんだろう、なんてことになってしまうのですよ。ま、わかんないですけどね。ひょっとしたらほんとにあるのかもしれないです。アメリカの暗部は計り知れないところです。びっくり

 

 で、ルイス・ゴセット・Jr.が出てきます。「愛と青春の旅立ち」の人です。こんなごっつい身体してるくせに「Jr.」って言われても、って昔は思ってました。そういう意味の「ジュニア」じゃないですけれどもね。で、当時51歳だそうです。今のわたしより年下ですね。わたし思わず爆笑しました。1987年の映画ですからね、わたしは本作を劇場で観たときはまだうら若き21歳。まあ当時で30年も年上の人なら、けっこうなおっさんに見えても仕方なかったかもしれませんけれども、それにしても風格ありすぎですよね。笑い泣き

 

 1987年の映画っていったら、その数年後の「ダイハード」でも思いましたけど、よくまあみんなタバコ吸いますねえ。一種のステイタスみたいなところはあったのでしょうけれども、それにしてもバカバカ吸って、ポイポイ吸い殻捨ててますね。いろいろ時代を感じさせられるわけです。まあべつにだからって、その映画の評価にはなりませんけどね、もちろん。

 

 で、先にも紹介しました内容で、もうちょっと掘り下げると、校長として成功することで、自分自身も成長する、なんてヒューマンドラマ的な要素もちょっとだけ絡んできて、まあベタなんですけれども、わかりやすくていいです。なにせベルーシ、演技上手いですからね、やられまくって血だらけになってボロボロになっても、なんか安心して観てられるのです。

 

↑こんなのはまだまだ生易しいほうです。

 

 校長と同じく、ほかの教師たちもどこぞの高校から放り出されて集まってきた、って割には、懐かしのレイ・ドーン・チョンみたいな人もいたりして、そんな放り出されるような感じの人じゃないですからね、ちょっとそこだけ違和感でしたが、気にはならない程度です。ベルーシに対して感情的に怒鳴るシーンがありましたので、そういうところ(性格)で放り出されてきたのかあ、って自分でナットクしました。

 

↑C・トーマス・ハウエルと結婚したときはほんとビックラでしたが、1年で離婚しちゃったのですね。「コマンドー」ではめっちゃいい味だしてましたよ。照れ

 

 まあ、ちょっとザンネンだったのは、なんかこの映画の一番言いたかったであろう、キャッチフレーズてきなものが“No more!”(やめよう!)だったことですかね。いや、「やめよう」って……、てなりました。ショボーン なんか聞いてて恥ずかしかったですよ。真剣な顔で、生徒たちに向かって“No more!”て……。生徒会通り越して児童会みたいですね。さあみんなで声を出して、はい「やめよう!」。・・・・・・。気が抜けるというものです。なんか全校生徒ちゃんと体育館に集まってるし。笑い泣き笑い泣き

 

 そこまで観てて、またちょっと80年代に思いを馳せてしまいました。決してダレてるわけではないです。話は余分なところもなく、余計な説明もないし、ほとんにスピーディに事が運びますので、休むところはほとんどないですからね。そんな中で、この80年代感満載の感覚は、ちょっとノスタルジックな感じすら覚えてしまったのですね。内容自体もそうですけど、音楽もそう。白人対黒人なんて構図も、今じゃ考えにくいですけれど、当時はそんな映画、山ほどありましたからね。懐かしいのですよ。

 

 同じような題名で「処刑教室」ってのがありましてね。こちらは1982年の作品です。マイケル・J・フォックスのデビュー2作目ですね。チョイ役ですけど。で、これはゴリゴリのサスペンス映画でした。ホラーっていってもいいくらいで、本作と同じような荒んだ高校に赴任してきた音楽教師が、ワルガキどもと対立して、同僚を殺された挙句妻をレイプされたことに怒り狂い、その悪ガキたちを殺していくガーン、っていうトンデモな映画でして、その殺し方ってのが、電動ノコで腕を切断したり、バールでおもいっきり頭ぶっ叩いたり、火炎放射みたいにして火つけたり、ってもう極悪非道ですよ。それを教師が生徒にするんですからね、むちゃくちゃです。笑い泣き さすがに今の時代ではこの映画はテレビでもCSでも見られないのでしょうが、本作なら全然今でも普通に観られると思うのですけれどもね。まあ、あと考えられるのは著作権のことですので、もしそれが原因なら、ほんとにもったいない気がします。

 

 ちなみにわたし、高校一年生の時に生まれて初めてデートってことをした時に観に行った映画が、「処刑教室」でありました。よい想い出ですね。笑い泣き笑い泣き笑い泣き

 

 そんなこんなで観進めますと、次第にルイス・ゴセット・Jr.の存在が気になりだしますね。はたして敵か味方か、なんて。まあ敵にはなり得なさそうですから、味方ならばこんなに心強いことはないです。なんか殺しても死ななそうですからね。この人こそスティーヴン・セガール的な。ここの高校名である“BRANDEL”のロゴの入ったシャツ着て、こんなシャツだれが作ったんやと思わせながらも、しっかりとベルーシをサポートしていく、と。「ロードハウス」でパトリック・スウェイズをサポートするサム・エリオットを思い出しましたね。まあ、そちらもマイナーですけど。

 

↑かっちょえいおっさんです。照れ

 

 そんなこんなで約半分、45分当たりでまず一度、ベルーシがやられます。これも王道ですが、違和感ないですね。そうこなくっちゃ、ですよ。これをもって、さあどうなる、なわけです。いいじゃないですか。

 

↑まあ、とことんやられましたね。笑い泣き笑い泣き笑い泣き

 

 で、もちろん予想通りの、実力行使によるベルーシの反撃開始、となってまいりまして、観ている側のコウフン度も盛り上がりまくる、というわけですね。

 

 ちなみに、そこらへんで“BRANDEL”のロゴシャツの意味が語られますね。ルイス・ゴセット・Jr.はこの高校のアメフト部の出身で、その昔はこの高校もまともだった、と。それどころかルイス・ゴセット・Jr.は、なんと驚くことに、プロリーグNFLのタイタンズに所属していた、と衝撃の事実が明るみになりますよ。そらいくらなんでもやりすぎやろ、と思わんでもないですが、まあことこの映画に関してはいいスパイスともいえます。おかしい、とまではならないのですね。うまく作ってます。あ、ルイス・ゴセット・Jr.自身は、元プロバスケットボールの選手ですけれどね。

 

 ただ、どうしてもわたしが受け入れられなかったのは、さきほどの「やめよう!」という言葉の幼稚さと、全体的にセリフでの説得力が欠けている、というところですかね。アクション的なものに重点を置いてるので、ちょっとそのあたりがおろそかになっている、という印象は拭いきれず、と。いろいろ言って作中での人たちはナットクしたり悦に入ったりしてはいるのですけれども、どうにもこちらにはそれが伝わってこないという・・・・・・。もうちょっとそこは突っ込んでくれてもよかったのに、というところでの☆8つとなっておりますね。m(_ _)m

 

 とはいえ、作品自体としての質は落ちることはないです。小気味のいいペースで第二段階に突入すると、今度はレイ・ドーン・チョンが襲われます。これももちろん想定内ですが、いい緊迫感が維持されてますよ。でもって助けに入るベルーシが、これまためっちゃ強い、と。まったくもってのヒーローですね。まあ、さすがにレイプ未遂は警察が来るんやな、と思いましたが、それもさらりと流されていて、違和感はまったくなく。

 

↑体当たりの演技、という感じですかね。

 

↑で、ベルーシさっそうと登場!

 

↑犯人はゴミ箱にポイでした。笑い泣き笑い泣き笑い泣き

 

 ワルだけじゃなく、いい子もちゃんといますから、そこらへんの対立もいい感じですね。ちょっとやさしい感じのいい子っぽい役をやっていたイーサイ・モラレスと、デブのエミール(すみません、VHSで観てたので、エンドロールの文字がはっきり読み取れなくって、役者の子の名前がまったくわかりませんでした)との絡みは面白かったですよ。で、お決まりのように、悪の総元締めであるビクター(マイケル・ライト)の組をエミールが抜けて、そのあとなんか笑顔でベルーシと話してるところをビクターが見てて、おいおい危ないんちゃう?なんて思ってたら案の定ボコられて瀕死の重傷になる、というパターンですよ。でもこれ、やっぱり展開がリズミカルなので、まったく違和感なく、すんなりと入ってくるんですね。以前に紹介した、ウォルター・ヒルが言った、「映画は90分から100分くらいが一番いい」ってのはこういうことだと思うのですね。まあ、本作は106分ですのでちょっと長いんですけどね。てへぺろ

 

↑マイケル・ライトくんです。高校生ですよ、念のため。笑い泣き笑い泣き笑い泣き

 

 ここらへんで、ベルーシとレイ・ドーン・チョンがディナーをなんて件が出てきますけれども、それも深入りはせず、サラッと流す程度で、もちろんディナーをしながら昔話をするなんてシーンもいっさいなく、余分なところはまったくないです。106分ですけど、そうやって余計なものを削ぎ落してあるので、あっという間に時間が過ぎていくのです。これならウォルター・ヒルも合格点を出してくれるのではないでしょうかね。

 

 さあそして大団円へ。エミールがやられてベルーシがキレる、そして全面対決へ、なのですが、そこからはもうベルーシがただひたすらかっちょよく描かれますよ。逆に、ベルーシに対してイキるマイケル・ライトがアホに見えます。なんか怒鳴ったあとよだれたらしてるし。そこは撮りなおせよ、と思ったのは私だけではないはずですが……。

 

↑「明日来たら殺す」……。よだれ拭いてから言いなさいっての。ショボーン

 

 ちょっぴり笑ったのは、一応こんな高校でも、生徒はみんなちゃんと授業に来て、時間になると帰る、ってとこですかね。学校自体がドラッグの取引場となってるのですから、ワルも来るには来るんでしょうけど、ベルーシが全校生徒を体育館に呼んだらみんなちゃんと来てるし、そういう位置づけはどうなんかな、とは思いました。ま、それがないと話は進まないので、もし仮に脚本家が、これはおかしいなあと思ったとしても仕方なかったのでしょうけれどもね。

 

 ちなみに、そこここで出てくる「目撃者がいない」てフレーズは、「処刑教室」のメインテーマでありましたよ。そう考えると、本作は「処刑教室」のオマージュなのかもです。年代としては、本作が「処刑教室」から5年後の作品なのでそう変わらないのですけれども、ライトな「処刑教室」て感じです。邦題も「処刑」から「暴力」に格下げされてますしね。ほんとは1955年にグレン・フォードやヴィック・モローとかシドニー・ポワチエなんかが出てた「暴力教室」って映画がありますから、そちらへのオマージュなんだろうなとは思いますけれど、わたしはそちらは観てないのでよくわかりません。間違ってたら謝りますね、すみません。m(_ _)m

 

 さて、そしていよいよ残り15分で対決ですよ。シャワールームでのシーンとなりますが、ここは最後ですので、それまでとはうってかわってじっくり魅せてくれますよ。いい緊迫感が続きます。ベルーシも、それまで再三めちゃくちゃ強いところを見せてるくせに、どうにも普通の人にしか見えなくって、まったく無敵っぽくないものですから、とってもいいのです。

 

 で、そうこうしてると、やっぱり最後の最後でビクターチームが仲間割れですよ。いやまさかわたし、いくらなんでも仲間割れで殺すとまでは思ってませんでしたけれど、ビクター血迷って殺っちゃいましたね。でもそしたらスイッチ入ったベルーシの強いこと強いこと。もうビクター、さっきまでの威勢はどこへやら、まるで我が中日ドラゴンズのようにやられたい放題、完膚なきまでに叩きのめされて、わたしあまりの痛快さに爆笑してしまいました。

 

↑もうハラ抱えて笑い転げました。笑い泣き笑い泣き笑い泣き いまさら頼まれても、ですね。

 

 ま、もうちょっと最後のアクションシーンは長くても、とも思ったのですが、極力無駄を排除する本作はあっさりとエンディングに入りました。まあそれくらいの腹八分目感が後味的にもいいのかもしれません。物足りないところを感じさせながらも、振り返れば満足、的な。

 

 いやほんと、いま観られないのがもったいないと心から思える良作でありました。どこかでなんかの拍子に見かけたら、ぜひご覧になってくださいね。決して損はしないはずですから。

 

 

今日の一言

「けっきょくルイス・ゴセット・Jr.は無敵でした笑い泣き笑い泣き笑い泣き

 

↑ふつうにこんなして、

 

↑こうなりましたよ。顔、めっちゃ怖いです。ガーン

 

 

レビュー さくいん