1998年 95min.
★★★★★★☆☆☆☆
ネタバレ:今更だけど、めっちゃアリ
敬称 佐藤仁美ちゃんとたまに松嶋菜々ちゃん以外は略
えと、じつはこれ最初アメリカ版の「ザ・リング」のクジ引いたですけど、最初そちらを観はじめて、でもいやいやまてよ、と。これやっぱり本家の「リング」を観ないと、違いもあろうし、比較しなきゃなんないからなあ、となりましてね。なので、「ザ・リング」をとりあえず15分観たあたりでやめまして、急きょこちらを観ることにしたわけですよ。なにしろたった15分でもすでに「あれ、ここって本家ではどうだったっけ」となってしまいましたからね。「IT」のときと同じ現象ですね。
で、本家であるこちらは、もちろん過去に何度も観ているのですけれども、いやいややはり忘れるもんなんですねい。細かいところなんて全然覚えてませんよ。まあ、だからこそおもしろい映画ってのは、何回観てもおもしろいのでしょうけれどもね。
わたしがこのシリーズ(ていうのか?)を初めて観たのは、たまたまテレビでやってた原田芳雄主演のドラマで、でした。1995年放映とのことですから、まあそれが最初なわけですね。
でもってこれ、なんかもう原田芳雄がすごすぎて、他の人のイメージはまったくなく、で、それ以降わたし、原田芳雄の大ファンになったのでした。
でもいま調べてみましたら、主役は高橋克典だったそうですよ。 田口トモロヲとか、清水紘治、五代高之とか出てますね。五代高之好きだったですけどね、お庭番・才三。全然覚えてませんね。いったいどんなアレンジがなされていたのかはもう皆目見当もつかないわけですが、ただ、とにかくめっちゃ怖かった、ということだけは鮮明に覚えてます。
で、まあそんなこんなでこちらを観はじめましたら、なんと佐藤仁美ちゃん出てるじゃないですかぁ。まあ、今でこそ「ちゃん」というお歳ではないのですけれども、当時は愛知県春日井市出身でわたしと同郷ということもあって(奥田暎二も春日井市出身ですね。ちなみに清野菜名ちゃんとめるるはお隣の愛知県稲沢市出身ですね)、けっこう応援してましたね。あ、もちろん今でも応援してますよ。もちろんですとも。本作当時は19歳、めっちゃかわいいですよ。演技もまあ19歳にしてはお上手です。
↑かわいいですねえ。
最初の犠牲者は、竹内結子ですか。これまた激カワですけれども、演技的には仁美ちゃんのが上手い印象ではあります。でもそれがのちに大女優となるわけですから、つくづく惜しい方を、と思ってしまいます。 ちなみに、襲われるシーンはちょっぴり「ウルトラマン」ぽかったのは、やはり邦画だからなのでしょうかね。オマージュ、ということでは決してないのでしょうけれども、なんか日本ぽかったです。
↑ちょっと子供っぽさが残ってますか。
↑ウルトラマンでよく見るシーンですね。
で、導入部でのひと悶着あっていよいよ松嶋菜々子降臨ですが、まあこれまたかわいいですなあ。演技も悪くないですしね。若干25歳にして、38歳の真田広之と共演したのがよかったようですね。
↑かわいいですねえ、てそればっかり言ってますが。
演出的にもなかなかですよ。なかなかですよ、なんてエラそうですけれどもね、中田秀夫監督。ホラーばっかり撮ってる人ですけれど、わたしとしては本作がキャリアハイじゃないかなと思ってますよ。どうしてこれがのちの作品に活かされないのかが不思議でならんのですけれども、まあとはいえ日本のホラーですからねえ……。当ブログでも紹介した「降霊」とか、全身白塗りのブリーフ一丁のクソガキが大口開けて走り回ってるだけの「呪怨」とか、けっきょくそんなしかないですからね、本作を当てたというのはものすごいことなのかもしれませんね。そもそも日本のホラー映画では、本作が一番であって、唯一無二になっちゃってますからね、あくまで私見ですけれども。m(_ _)m
だからひょっとしたら突然変異的な、なんかそれこそ降りてきたんじゃないか、ということなのかもです。日本映画の特徴である「間」もしっかり取ってますし、突然鳴る電話の音が大きいのも、大きすぎるわけでもなく、だからびっくりさせられることもないので、逆に効果的ですよね。ビミョーに心臓に響きます。
まあ、学生役の子たちの演技が観るに堪えないってのは仕方ないかもです。そういうところはアメリカと決定的な差なのでしょうけれども、予算の都合上とかお国柄とか、まあいろいろなんでしょう。アメリカは映画文化が発展してますからね。演技、というものに対する思いが根本的に違うのでしょう、きっと。
ところで、先に「ザ・リング」を観たときにわずか15分足らずで思ったのは、子役がなんかこまっしゃくれてんなあ、てことでした。これもまた、演技に対する思い入れの差、なのでしょうけれども、こと「ザ・リング」に関してはそれが仇となったようで、なんじゃこのエラそうなクソガキは、なんて思ったものでしたが、本作の子役の子はそういうこともなく、かわいくてよかったです。子供はこうじゃないと、と思ったことでしたよ。
↑子供らしい子役でした。
さて、そんなこんなで、竹内結子と佐藤仁美ちゃんのお葬式のシーンで、階段を上る誰かの足だけが見えるところから一気に緊迫感が押し寄せてきましたよ。ここらへんはさすがの日本ホラーだな、と思うわけです。アメリカよりも「幽霊」に対しての拒絶感は大きいでしょうからね、日本人は。
で、死んだときの顔なんかが出てくると、自然と鳥肌が立ちますね。アメリカではやっぱり特殊メイクをほどこして、実際にはあり得ないような顔を造作しますけれど、まあそれはそれでわたしもキライじゃないですからいいのですけれども、やっぱりちゃんと、恐怖に遭遇して絶望感、て顔を演技できる日本人は、スゴイと思うのですよ。ほんとにもうだから本作は、唯一怖い日本ホラーだと思うわけです。なんで続かんかった、とまたこれザンネンでなりませんね。
さあそうなると、事は松嶋菜々ちゃんが事の真相を調べ始めて動き出しますよ。え、菜々ちゃん仕事はええんか、なんてのはまあヤボでしょう。いいんですよ、きっと。そうじゃないと映画になりませんからね。そこはそれ、いいんです。
そこからしばらくは効果音なしで淡々と進んでゆきます。音楽を流さないことによって音楽が効果的になる、といういい例ですね。
そしていよいよ菜々ちゃんがビデオを観ましてね、われわれ観客にもそのビデオの内容が知らされることになるわけです。内容もさることながら、われわれも観てもうたやんけ、的なところでの恐怖も加わって、なんかほんとめっちゃ怖いです。
で、真田広之が参戦してきて、菜々ちゃんとの関係性が描かれて、とスピーディに違和感なく話が進みますね。いやほんとどうしてこんな怖い映画が撮れたのに、ほかが続かんのか、と再度思うことになりますよ。だって菜々ちゃんのポラロイドの写真のとこなんか、もうチビりそうでしたからね、わたし。
↑男前に過ぎますなあ。
そんな中、22歳の中谷美紀を見て癒されることも、織り込み済みなのでしょうね、きっと。恐怖の中にちょっとだけホッとするシーンがあると、その次の恐怖が思った以上に怖さ増し増しになる、ということですよ。
↑なんかこのあざとい顔も、とってもいいです。若さのなせるワザ、なのでしょう、きっと。
ちなみに子役の子、アメリカ版の子と容姿が若干似てるという点でも、ちょっとホッとする要素ではありました。まあ時系列的には、本作公開当時はそんな要素はなかったのですけれどもね。
ビデオテープの映像も、どれをとっても怖いです。もうなんかさっきから「怖い」しか言ってませんけど、ほんとに怖いんですから仕方ないのですよ。まあ、とても誰かが作った特撮のビデオテープとは思えませんけど、だからいいのですね。
それで言ったら、携帯電話がないってのもいいです。時代を感じさせますし、この時代だからできることなのですけれども、こうしたアナログ感はデジタルしかない現代とのギャップで怖さが増長されるわけです。
ただ、そうなると実はこのアナログを知らない現代の若い子たちにはこの映画は受け入れられないということにもなるわけで、なんか複雑ではありますね。ひょっとしたら、この映画のあとに、ほんとに怖いホラー映画が日本でないのは、こうした時代の潮流に乗り切れなかったからなのかもしれませんよ。だってやっぱり東海道四谷怪談とか牡丹燈籠とかは怖いですもん、フツーに。昭和世代として。
なんて思ってましたら、菜々ちゃんが寝てるシーンで竹内結子の声が聞こえてきて、いやいやこれまた怖えなあ、なんてしてたら、隣の部屋で息子が当のビデオを観てるという……。 これほどの怖さがあるか、てなもんですよ。絶望しかないですよね。何回観ても怖いシーンです。まあ、大騒ぎして叫ぶ菜々ちゃんの声にも、お父さんが起きてこないのはおかしいとこですけれどもね。
ただ、ザンネンだったのは、真田広之と松嶋菜々ちゃんが一緒にビデオを解析していて、ゆっくり回してたらなんか声が聞こえて、真田広之が「『〇〇〇』って、そう聞こえたか?」って菜々ちゃんに言うシーンですね。もうそのビデオから聞こえる声もなに言ってるか全然わかんなかったですけど、真田広之のセリフもなんかそこだけ早口で、けっきょく何言ってるかわかんなかったですよ。ここで☆ひとつ減なんですけれど、ひょっとしてわざと聞こえないようにしたのかなあ……。ま、いずれにしてもわたし的にはマイナスでした。
「しょうもんばかりしてるとぼうこんがくるぞ」
だそうです。原作をしっかり覚えてるとわかるんでしょうけれどもね。
ところで、ちょうど1時間が過ぎたころに、小市慢太郎が出ておられましたね。わたしこの人、大好きなんですよねえ。いい役者さんですが、まだこのころはチョイ役だったのですね。そういうところでも感慨深いです。名前はなじみがないかもですが、顔を見たら「ああ、この人!」てなること請け合いな人です。
↑ああ、て。
あと、なんか最後の方になって真田広之が超能力者だった、てのはなんかご都合主義的な感じがして、若干ですけど、冷めました。これはまあ、原作がそうなんですから仕方ないのでしょうけれども、だから本作の評価でマイナスにはしませんが、ちょっとなんだかなあです。
鈴木光司の本ってそういうとこ多いです。日本のスティーヴン・キングだ、なんてもてはやされてましたけど、「リング」以外パッとしないのはそういうところだとわたしは思ってますが。
大島に渡ってきて、いざ帰らなくちゃならないのに台風で足止めになる、て、そんなん来る前からわかっとったやろ、です。で、けっきょくその台風も、大した影響もなく本土に帰ることができた、って、じゃあ最初っからそんなシーンは要らんのですよ。なんかね、ご都合主義というか、とりあえずいろいろ詰め込んで、みたいなのがムダに内容を長くしてるだけ、という感じで、つまらないんですよ。もったいないと思いますね。
最近は本も書いてないみたいですよね、鈴木光司。「リング」に縛られちゃってる感で、「らせん」とか「ループ」とかもわたし読みましたけど、ぜんぜん怖くなかったです。
さて、そうこうしてるうちに物語は佳境に入ってきて、なんか伊豆のペンションの床下みたいなところにある井戸で、真田広之と松嶋菜々ちゃんがごそごそやりだしますが、そういうところはちゃんとオーナーに了解は得たのでしょうかね。原作がどうだったかはもう覚えてないですけど、そういうとこはやっぱり気になるところですよ。要所でツメが甘い感じですかね。
で、その井戸に浸かって貞子の亡骸を探すべく水を掻い出すのですけれども、この水がもうなんか緑色してて、明らかに地下水ではないんですね。いやいや真田広之、あんたこんなとこに浸かってて、たとえあとで助かったとしても、間違いなくヘンな病気にはなるぞ、と思うのですよ。なんであんな緑色だったのでしょうかね。藻の緑とも違いますし、なんか薬品ぽい色でしたよ。そらアカンでしょう、となります。そういう細かい所で説明がつかないと、やっぱり映画としてはダメなんだとわたしは思いますね。
↑下半身の穴から病原菌が侵入してくるのを想像して身震いしました。
で、そんな井戸のシーン、そこまでとってもスピーディだったのがとたんにゆっくり悠長になるんですよ。展開の速さに慣れていたこっちとしては、じれったいことこの上ないです。せっかく怖かったのに、大団円ともなるべきところで怖さが離れて行ってしまった、と。ほんともったいないです。骸骨抱きしめてる場合じゃねえし、でした。
↑ちょっとこっけいですよね。
その後は、貞子の亡き骸もみつかって警察が来ていろいろわしゃわしゃするのですけれども、そんな警察をなんか別の世界のようにしながら真田広之と松嶋菜々ちゃんが喋ってますよ。でわたし、ここで愕然とします。
真田広之が言うんです。
「もうよそう、送っていくよ」
て……。
えと、あの、事情聴取はしなくて良いのでしょうか?少なくともなんでそんなとこの井戸に浸かって骸骨見つけることになったのかの、事の経緯は話さねばならないのでは?しかもそんな話は、ちょっとやそっとじゃ警察を納得させられませんよね。間違いなく、警察署の取調室で何時間も、あるいは何日も説明させられるハメになる事案ではないでしょうかね。なんなら、死体遺棄した犯人と疑われる可能性だってあるわけですしね。ふたりとも、服は全然濡れてないですし、もうちょっとここまできてそれはないやろ、て嘆息してしまいました。う~ん……。
ま、物語はここで終わりではなくって、ラストで一番有名なシーンが出てくるわけですけれども、やっぱりここはとっても怖いわけですよ。真田広之が殺されるところもめっちゃ怖いですし、謎解きも「ああなるほど」と伏線回収はできていて、しっかり肚落ちしますよ。
いやいや、だからこそ途中のいろいろなマイナスがもったいないんです。終り良ければすべて良し、ではないんですよ、映画は。勝負事じゃないんですから。ストーリーなんですからね。
ただ、怖いもんは怖いです。何度でも言いますが。真田広之が菜々ちゃんに、自分がしなくて菜々ちゃんがしたことって何か、を教えてしまうのもまあマイナス要素ではありますけれども、それでも怖いもんは怖いんです。だからなんとか頑張って☆7つとしてみようとしたんです。ところが、そんなわたしをあざ笑うかのようなシーンが、ラストにご用意されておりましたよ。
えとですね、要するにビデオをダビングして他人に見せれば助かる、それを繰り返す、すなわち「リング」だ、ということなのですけれども、最後の最後で「助かる方法ってさあ」とか言ってなんか女子高生みたいな声でそれをしゃべってるんですよ。え、いやいやそれってじゃあ最初っからわかってたってことじゃねえのか、って。
このセリフを女子高生が喋っているのがいつなのかはわかりませんよ。ひょっとしたらこの事件があった何年もあとのことなのかもしれませんね。でもね、それならそれで、そんな都市伝説みたいなこと言われても、ですし、そうすれば助かるってのはどこからわかったのか、ってのもちょっとしたギモンではありますよね。菜々ちゃんがだれかにしゃべったのでしょうか。それとも、次の犠牲者である菜々ちゃんのお父さんがしゃべった?
いずれにしてもなんかムズムズする感じで終わってしまうのが、どうにもでして、けっきょくもうひとつ☆を減らして、☆6つで落ち着くこととなったのでした。
まあ何度も言いますけれど、怖いもんは怖いです。あんまり細かいことにはこだわらずに、怖がりたいんだと思って観れば、その欲望は満たされます。ただ、映画の出来としてはけっこうザンネンなところが多かった、というのも事実なわけで、なんかほんとに「もったいない」という感じでエンディングロールをながめていたのでした。
で、そのときふと思ったんですけれど、これってひょっとして「イット・フォローズ」の元ネタなんでしょうかね?
ちなみに、近年になって貞子をなんかアイドルとかお笑いみたいにしてしまってますけど、わたしこれ心の底からムカついてます。フザけんな!
今日の一言
「マウンド上、三番手・高津、やて(笑)」
↑チョー有名なシーンです。怖いわぁ……。