2016年 108min.

★★★☆☆☆☆☆☆☆

ネタバレ:アリますよ、もちろん。

敬称略

 

 原作は東野圭吾の同名小説、定番の映画化作品、というわけですね。

 

 わたし、映画好きですけど、まあ35年も前の大学時代から年間300本ほどずつ観ているわけで、映画好きっていうか、ほとんどライフワークみたいになってて、自分では趣味の域を超えとると思っとりますね。ニコニコ

 

 で、じゃあ今の自分の趣味って何なんだろう、って思ったら、これが出てこないんですねえ。趣味の域を超えたものに時間とられてしまって、あと空き時間ですることったら、野球とそのためのトレーニングと、あとはドラゴンズの試合観ることくらいで、なかなかに「趣味」と呼べるものがないことに気づきました。まあ、野球をすることと観ることが趣味、っちゃ趣味なんでしょうか。

 

 で、いったいなんの話をしているのかってえますと、じつはひところ前までは、読書が趣味だったのですよ。照れ

 

 子どものころから読書は大好きで、小学生で江戸川乱歩に目覚めると、中学で横溝正史を読破、高校になって筒井康隆を読破、大学ではマンガにも視野を移しながら、アガサ・クリスティー、クライヴ・バーカー、そしてスティーヴン・キングを読み漁ってましてね。

 

 社会人になると、ほぼマンガに移行してしまったのですけれども、これは子どものころに読んでなかった反動とでもいいましょうか、そもそもマンガは大人の読むものだと思ってましたから、そら毎週欠かさず「週刊少年ジャンプ」は買ってましたね。社会人になって通勤が自家用車になった、ってことも一因であるとは思います。

 

 ところが、そんなこんなでわたし2008年に転職いたしますね。すると、それまで自動車通勤だったのが電車通勤となり、まあ片道そんなに長くはないんですけれども、40分くらいは空き時間ができたので、そこで読書しよう、となったわけです。

 

 マンガはさすがに電車では読めませんね。スーツ着たサラリーマンが電車でマンガを読むって構図は、まともな大人なら避けて通るべき道だとわたしは思ってますからね。

 

 いや、マンガが幼稚だとかいってるわけではないです。マンガって、日本が世界に誇る一大文化だと思ってますよ。でもね、やっぱりスーツ姿のサラリーマンが電車内で「週刊少年ジャンプ」を読んでいたら、やっぱりそれはそれでちょっとなんだかなあ、となるわけです。わたしの中では、ですけれど。

 

 で、じゃあなんの本を読もうかしらん、と思っていた時、大学の最初の授業で隣になって以来、いまだに大親友として交流が続いている「みちょろしあん」という男に、じゃあ読んでみろ、といって紹介されたのが、東野圭吾だった、というわけです。

 

 やっとつながりましたね。お待たせしました。爆  笑

 

 そうだ、今思い出しました。わたしの趣味ですよ、趣味。わたし、小説書いてるんでした。このブログでもずいぶん前に紹介したのですけれども、「エヴリスタ」(ととつつ - 小説投稿エブリスタ (estar.jp))っていう投稿サイトに小説書いてます。処女作は、文庫本にすると330ページほどの長編なのですが、編集者の方に、「新人作家のイチオシ作品」に選んでいただきました。リンク貼っておきましたので、よろしければぜひ読んでいただきたいところでありますが、なにしろその「書くこと」っていうのも、「読むこと」と同様好きでしてね、みちょろしあんが言うには、

 

 「この東野圭吾の文章って、お前の書く文章によく似てて、ものすごく読みやすいんだよ」

 

 だそうなのです。びっくり ありがとうございます。

 

 それでわたし、さっそく本屋に行って、なんかポップでそうとう面白そうなこと書いてあったので、長編の「鳥人計画」ってのを買ったのですよ。そしたらこれがまあ、おもしろいのなんのって、出だしの数行でハマりましてね、以来わたくし、東野圭吾を読破したあと、活字ほしいほしい病になってしまいまして、有川浩、米澤穂信、道尾秀介、伊坂幸太郎を次々と読破した、とまあそういうわけです。

 

 ザンネンながら、「読破した」と過去形になってしまっているのは、現在は書くことと映画に専念しちゃってて、読むことがまったくできてないからなのですけれども、そんな東野圭吾の作品の映画化とあれば、やっぱり観ないわけにはいかないのでありますね。

 

 でもね、これ、東野圭吾の作品て、けっこうな当たり外れがあるんですよね。わたしは全部観てますけれども、全映画化作品21作の中でわたしがおもしろいと思ったのは、「秘密」「手紙」「容疑者Xの献身」「さまよう刃」「麒麟の翼」「真夏の方程式」「マスカレード・ホテル」の7本。3分の1ですか……。けっこう少ないですよね。ショボーン 原作ありきの映画ってのはえてしてこうなるものだとは思うんですけれど、やっぱり作り手が東野圭吾をどれだけ読んでるか、ってことにもかかってくるんじゃないかとも思うわけです。それでいったら「天空の蜂」は、駄作とか云々をはるかに超越して、東野圭吾への冒涜とさえ思ってしまいましたが、それほどではないにしても本作「疾風ロンド」は、もう、ちょっとお前、ええ加減にせえよ、的な感じの、ザンネンな駄作となってしまったのでした。ムキー

 

 いやそもそもですね、なんで阿部寛が加賀恭一郎ではない役で東野圭吾作品に出てるんですか。それがもうまったく受け入れられないじゃないですか。東野圭吾、阿部寛って言ったら加賀恭一郎でしょうに。東野圭吾、加賀恭一郎っていったら阿部寛でしょうに。

 

↑でも加賀恭一郎はこんな顔はしませんから、阿部ちゃん、さすがです。

 

 じつは、東野圭吾ファンであるわたしと大親友のみちょろしあんは、加賀恭一郎が阿部寛になったのを知った時、いやいや加賀恭一郎は竹野内豊だろう、と共通した意見だったのですね。しかし、そこから阿部ちゃんの反撃がジワリジワリとおしよせてきて、今でももちろん竹野内豊だったらどうなっていたんだろうという思いはあるにはありますけれども、いやいやでも加賀恭一郎は阿部寛だよなあ、ということになってしまっているほど、阿部ちゃんイコール加賀恭一郎なわけです。なのにどうして、この映画での阿部ちゃんは加賀恭一郎ではないのか。いや逆か、どうして加賀恭一郎ではない役を阿部寛にさせたのか、ということなんですよ。ムキームキー

 

 阿部ちゃんは人がよさそうですから、まあ勝手な考えですけれど、オファーがあった時もふたつ返事で引き受けた事なのでしょう。新境地だ、とでも思ったのかもしれません。そりゃ確かに、阿部ちゃんのキャリアを考えたら、それもアリなのかもしれませんけれど、映画ファンそして東野圭吾ファンには、それは通用しないのです。

 

 その昔、「空想特撮シリーズウルトラマン」でアラシ隊員の役をやっていた石井伊吉(現:毒蝮三太夫)が、「ウルトラセブン」でフルハシ隊員の役をやっていて、子供ながらに困惑したこともありましたが、今回のこれは、それとこれとは次元が違うのですよ。「困惑」なんて簡単な言葉では賄いきれないことなのです。

 

 いやま、確かにですね、原作自体もじつはこの当時は、なんだか東野圭吾も質が落ちてきたんじゃないのか、老いか、とか思っていた時期でしたから、話的にちょっとナットク行かない部分もあるにはあるのですけれども、それにしても、なのです。

 

 配役は、阿部ちゃんと一部をのぞけばよかったとは思います。「怪物くん」のヒロシだった濱田龍臣はすっかり大きくなって帰ってきましたし、戸次重幸のヤバい演技もよかったですね。まあどっちかといったら、戸次より安田顕のような気もしないでもないですが。

 

↑ヒロシの面影がないです。びっくり

 

↑フツーにヤバかったですよ。ガーン

 

 で、大島優子もなかなかにいい演技してくれてましたし、堀内敬子ちゃんは相変わらずかわいいし、なにより大倉忠義がビックリするほど演技上手かったです。これ、ひょっとしたらジャニーズで一番うまいんじゃないかと思うほどですよ。ジャニーズで、ていうか、普通にむちゃくちゃ上手かったですもん。

 

↑めっちゃかわいいですね。これで演技もうまいんですよ。

 

↑いやあ、かわいいですねい。ラブ

 

 よく、ジャニーズで演技がうまいのは、なんていうと嵐のニノか大野くんか、なんてことになりますけど、みなさんこれ騙されちゃダメですからね。ニノの演技なんかなんも上手くないですよ。嵐ファンのわたしが言うんですから間違いありませんね。大野くんも上手くないです。嵐に演技の上手い人は、いません。今のキムトゥクのほうがはるかに演技上手いです。昔のトゥクは知りませんけど。わたしがいいと思った東野圭吾の映画化作品に、「マスカレード・ホテル」はあるけど「プラチナ・データ」がないのは、そういうことです。

 

↑表情もちゃんと演技できてましたよ。

 

 で、せっかくそうやってみんながんばって演技してるのに、阿部ちゃんが出てきちゃうとやっぱり加賀恭一郎、ってなっちゃうんですよ。

 

 いや確かに阿部ちゃん、頑張ってました。コメディっぽい原作にあわせてコメディ演技もしっかりしてましたけど、でもあの風貌ですからね、やっぱり加賀恭一郎なんですよ。だから全然入り込めないんです。あきらかなキャスティングミスだと、わたしは思うわけです。

 

 演出もねえ……。

 

 こういうスキーの映画って、ゴーグルやウェアやらで、原形をとどめなくなりますから、スタントやりたい放題なわけで、だからもうちょっといい演出できたんじゃないかって思うんですけど、その演出もなんかシリアス部分もコメディ部分も中途半端で、こちらも入ってきません。せっかく大倉が頑張ってるんだから、演出側がそれを台無しにしてどうすんのや、ということでしょう。

 

 これ以外にも、なんか役者の大盤振る舞いみたいのも鼻につきますよ。志尊淳、麻生祐未さん、生瀬勝久、堀部圭亮、菅原大吉、でんでん、柄本明まで。さらには、野間口徹、中村靖日、田中要次って、堀内敬子ちゃんとか堀部圭亮とか生瀬とか、なんかNHKで見たようなってデジャヴュに襲われましたら、なんのことはない、監督の吉田照幸が元NHKで、「サラリーマンNEO」の監督だったというオチだったのでした。

 

↑わたし麻生さんは昔から大ファンです。

 

↑「サラリーマンNEO その1」野間口徹

 

↑「サラリーマンNEO その2」田中要次

 

↑「サラリーマンNEO その3」中村靖日

 

↑志尊淳がうらやましいのです。

 

↑柄本明はよかったですよ。この人のところだけちょっとホッとしました。

 

 まあ、ね。テレビドラマだったらいいんでしょう、これでも。わいわいやって、スタッフの笑い声とか入っててもいいのかもしれませんね。でもね、これ映画なんですよ。みなさん、高いお金払って映画館に足運んで観てるんですね。そういうお客さんにこのクォリティは、そら口コミも低評価になりますよ、てなもんです。

 

 挙句の果てに原作も台無し。せっかくの、大倉と大島の光る演技も、台無し。そして阿部ちゃんの存在も「だ・い・な・し」というわけです。笑わせようとしているシーンで、ことごとく館内がシラけているのが目に浮かぶ、駄作のお手本のような映画になってしまっているのですね。えーん 一応、大倉忠義と大島優子の演技に敬意を表し、阿部ちゃんの頑張りに加えてその他お歴々の俳優陣に忖度して☆3つとはしときますけど、ほんとはゼロです。

 

 で、です。で、この映画最大のミスキャストが、ムロツヨシ。もうなにしろウザいんです。そもそも役柄的に、スキーだけが取り柄、って、もう苦笑やら失笑やらが渦巻きますね。あんな運動神経の皆無な男が、スキーだけが取り柄?はぁぁぁぁぁっ?てなります。いや実際は知りませんよ。ひょっとしたらプロ級なのかもしれませんけれども、そんなイメージがまったくないんですよ。わたしずっと「嵐にしやがれ」観てましたから、よくわかります。この男は運動神経ゼロなんです。何を思ってどうキャスティングしたらこうなるのか、製作側の頭の構造を疑いますよ。

 

 ムロのスキーと大島優子のスノボでの対決シーンにおける、なんかくだらないアテレコもサイアクですし、最後の金的もまったくもってくだらないし、なにしろですよ、これが根本なんですけど、ムロの演技がど下手なんですよ。観るに堪えませんね。ふと気がついたらわたし、顔をしかめてしまってました。ムキームキームキー

 

 おかげで、物語も終わりに近づいて麻生さんが息子を抱きしめて泣くシーンは、おそらく感動するところだったのでしょうが、それまでがそれまでなだけにシラけムードだけがわたしの周りをまとっている、という体たらくになってしまったのでありました。ま、とりあえず、おれも麻生さんにあんなんされたい、とは思いましたけどね。

 

 ところで、ですね、劇中、名古屋が出てきます。まあ、作家になる前は名古屋に住んでた東野圭吾ですから、じつはよく作品の中に名古屋が出てきます。

 「あんた、ちゃんと前見とらにゃいかんがねえ」

 なんて、まあこんな名古屋弁は今どきの若い人はいっさい使いませんけれども、昭和41年に名古屋市中区錦一丁目で産まれて、名古屋市名東区よもぎ台で育ったわたしにはうれしい限りでした。

 

 じつは東野圭吾の「ウインクで乾杯」という作品には、わたしの実家近くが出てきたんですよ。読んでてちびりそうになるくらいうれしかったですね。ええっ、ここおれん家じゃん、みたいな。

 

↑こちらです。

 

↑赤線部分がわたしの実家近くです。

 

 えと、ところでこれけっきょく阿部ちゃんはどういう罪に問われるんでしょうかね。柄本明が一番悪いのでしょうか?あれ?堀内敬子ちゃんでしたっけ?

 

 

今日の一言

「あ、戸次が一番悪いんだった」笑い泣き

 

主題歌のB’Zも無駄遣い、なのでした。

 

 

レビュー さくいん