外国為替市場でドルが他通貨に対して全面高の様相を見せている。米国経済の減速懸念からドルの「独り負け」が年初から続いていた状況が一変。日本や欧州、新興経済国の景気悪化観測でドルが買い戻されているほか、原油価格の下落で商品市況から逃げ出した投機資金がドルに回帰しており、市場では、「マネーの逆回転が始まった」との声も聞かれる。
ドルは8日の海外市場で一時7カ月ぶりの1ドル=110円台を記録。東京市場でも円売りドル買いの動きが活発化!
ドルはユーロや豪ドル、ニュージーランドドルなど高金利通貨、中国の人民元やブラジルのレアルなど資源国通貨にも強含み、独歩高で推移している。
1年前の米国の低所得者向けサブプライム住宅ローン問題の表面化以降、米国経済の悪化に押されてドルは売られ、基軸通貨としての信任も揺らいでいた。
ところが、世界的に景気減速懸念が高まったことを背景に、他通貨に逃避した資金が再びドルに回帰している。
日本でも政府の景気基調判断の下方修正に続き19日の日銀金融政策決定会合で景気判断を「停滞」に下方修正した。
中国やインドなど新興国にも成長の息切れ感がみられる。
原油など国際商品市況の下落もドル高を後押ししている。これまではサブプライム問題に伴う米経済の失速を受け、ドルや米国株式に集まっていた世界の投機マネーが原油や穀物など商品市場に逃避していた。ところが、原油価格は1バレル=112ドル台へと急落。締め出された投機資金がドルへ戻っているとの見方が強まっている。
ただ、ドルの上昇が今後も持続するかについては、流動的との声も多い。
最大の焦点は米経済の先行きだ!
市場の混乱は長期化しているほか、金融機関の信用収縮に伴う企業活動の停滞や、商業用不動産、消費者向けローン市場の悪化など、実体経済への波及が進み、先行きは不透明感が漂う。
インフレ懸念も世界各国ではなお強く、原油価格が反転上昇すれば、再び投機マネーのドル離れが進む可能性もあるが…