「先日の検査の結果、採取した細胞から悪性腫瘍が見つかりました。」
「先生、それはいわゆるがんですか。」
「ええ、そうです。これからの治療に関して説明したいのでご家族を呼んでもらえますか。」
と、ドラマの1シーンのようなセリフが本当にありました。
しかも、4人部屋の病室で。
たまたま同じ病院の耳鼻咽喉科で入院していた時のことなので、仲良く接してくれていた看護婦さんも横で聞いてそんな話になるとは想像せず、泣いてくれました。
「どうして自分が?」
痛みや苦しみが少ない、いやほとんど無いため、余計にそう思ってしまいました。
どうしていいか分からないその思いは仕方ないと思っています。そこから、全力で戦うという思いになるまで、正直数日かかりましたから。。
「進行度はT1ですが、細胞の悪性度はG3です。」
先生の説明はそうでした。
膀胱は筋肉に囲まれたボールのようになっていて、その内壁にこぶのような腫瘍ができます。
表在性がんと浸潤(しんじゅん)性がんの2種類があり、(上皮内がんという薬で治ってしまうものもありますが)表在性であれば内側にさんごのような膨らみができるだけで、膀胱内でおさまってしまうのですが、浸潤性のがんの場合は外壁の筋肉方面に進行し、いずれリンパや毛細血管に届き転移する危険性を持っています。
表在性のがんは悪性度の低いG1などで構成されていることが多く、浸潤性のがんは悪性度の高いG3であることが多いようです。
僕の担当医はおそらく表在性であるが、悪性度が高いため、浸潤性のがんに近い対応をしましょう。ということで、後日またTUR-BTを行い、見つかった場所のまわりを深く、広く削り取ることになりました。
進行度もTa T1 T2 T3 T4というように進行していきますが、まだ膀胱内の粘膜の中だけにとどまっている、いわゆる初期がんであることが分かりました。
ですので、本当に早期検査は大切だと思います。
がんの進行に関しても医者に質問しましたが、明確な答えは無いとのことでした。若者が進行が早く、高齢者が進行が遅いということが一般的ですが、そうとも言い切れないとのことなので、どれくらいのスピードでどれくらいの進行があるかというのは分からないのです。
ここで、先生から一切の説明を受けましたが僕は担当医に命を預けることにしました。
専門家から見たら、膀胱がんのT1で命だなんてって思うかもしれませんが、きっとがんだと言われた人の思いは一緒だと思います。がん=転移=死ぬ。こう考えるのは仕方ないことかと思います。
ですから、そんな表現が正しいと思っています。
ひとつ僕としては父親からこんな話を聞きました。
がんになった同僚がいて、がん=がんセンターで治療ということでがんセンターに転院したが、まわりが末期がんに近い方が多かったらしく、なぜか自分も気が滅入ってしまったようで、精神的にダメージが大きかったという話を聞きました。
また、がん患者は増えていて、手術の予約をするには診察をまた受けなければならず、何カ月先になるか分からないという話も聞きました。
現実はどうか分かりませんので、あくまでも聞いた話でしかありませんが、やはりがんと闘うには自分の体を良く分かってくれている医師を選ぶことが大事なんだと思います。
また、常に前向きになれる環境があるかないかで大きく変わってくるのだとも思います。
僕がその先生を選んだのは今となっては正解だったと思っています。
がんをいかに治していくかを決めた日、この先生の選択が、戦いの始まりだったと今も強く記憶しています。
(つづく)
※僕は医者ではありません。あくまでも自分の経験だけでお伝えしています。がんと戦う勇気をくれた恩返しになることがあればと思い筆をとりました。