岡田幹治:ジャーナリスト

”「PCR検査の陽性者」は
必ずしも「感染者」ではない”


実際、米国で発売されている「新型コロナのPCR検査キット」に
は、「インフルエンザA型、同B型、マイコプラズマ肺炎などのウ
イルスにも陽性になる」と注意事項が記載されている。*

 ここまでは「PCR検査の陽性者」=「感染者」ということで話
を進めてきたが、この前提にも疑問が出されている。

 大橋眞・徳島大学名誉教授(免疫生物学)は、その診断(判定)
基準に問題があるとしている(動画『コロナ騒動の原点は、PCR
検査にあり』など)。

 PCR検査で新型コロナウイルスの存在を確認していると多くの
人が思っているようだが、それは誤解だ。

 PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)は、ウイルスの遺伝子を増幅す
る技術で、新型コロナの場合、検査は次のような手順で行われる。

 公表されているコロナウイルスの遺伝子RNA(リボ核酸)の配
列を基に、特徴的な配列に対応するDNA(デオキシリボ核酸)の
断片(プライマー)を合成し、これを検体(鼻の粘膜やのどの唾液
)と反応させて、プライマーと結合する配列のDNAを増幅して分
析する。

 このようなPCR検査について、大橋名誉教授は「体内に取り込
んだが(曝露したが)感染(ウイルスが定着し、増殖すること)し
ていない場合でも陽性になる」と指摘する。

 ウイルスが粘膜の細胞の表面に付着しているだけで、自然免疫の
力で細胞内へ侵入できていないような場合でも陽性になるからだ。

 また、普通のインフルエンザウイルスや他のコロナウイルスでも
PCR検査で陽性になる可能性があるという。


重症化のリスクが0に近い30歳未満は、対面授業やスポーツを平常通
りに戻す。子どもや学生からPCR陽性者が出ても騒がず、明らか
な症状が何人にも出て集団発生が起きたら学級閉鎖すればよい。

 30~59歳も通常の経済活動を行ってよいはずだ。罹患した場合は
症状に応じて自宅待機などで対応し、集団発生が起きたら職場を閉
鎖すればよい。

 60~69歳は感染リスクが高まるので、流行期には在宅勤務などを
推奨する。


つまり、インフルエンザウイルスやほかの常在性コロナウイルスの
保有者が、新型コロナウイルスの感染者に数えられている可能性が
あるわけだ。そうだとすれば「PCR陽性者=感染者」という診断
基準を変えない限り、新型コロナの感染者はいつまでも存在し続け
ることになる。

「疫学的な検出方法ではない」と臨床医
現在の診断基準でよいのか?
 このような検査は新型コロナウイルス感染症の診断基準として適
正なのだろうか。

 大橋名誉教授によれば、米国疾病予防センター(CDC)のウェ
ブサイトの「新型コロナウイルスに対するPCR検査の概要」には
、次のような注意事項が記されている。

「PCR検査で検出されたウイルスの遺伝子は、感染性のウイルス
の存在を示しているとは限らないし、新型コロナウイルスが臨床症
状(肺炎など)の原因とは限らない」

 また米国で発売されている「新型コロナウイルス測定用のPCR
検査キット」の説明書には次のように書かれている。

「本剤の検出結果はあくまでも臨床上の参考値であり、臨床診断・
治療の唯一のエビデンス(証拠)として使用すべきものではない。
患者の症状・徴候、既往歴、他の臨床検査値、治療反応などと併せ
て臨床管理を考慮すること。また、検出結果は臨床診断のエビデン
スとして直接使用すべきものではなく、あくまでも臨床医の参考と
する」

 つまり、PCR検査で陽性という結果だけで、新型コロナウイル
ス感染症と診断してはならないと注意を喚起しているのだ。

 大橋名誉教授は、超訴訟社会の米国では、いつ訴えられるか分か
らないので、正直に記載せざるを得ないのだろうと推測するが、日
本の検査キットも原理は同じだと指摘する。

 その上で、多くの人にとっては風邪程度の健康被害をもたらすに
すぎない新型コロナ問題が世界的な「騒動」になった原点は、PC
R検査にあると指摘し、PCR検査の陽性者をそのまま新型コロナ
の感染者としている診断(判定)基準を改めるべきだと主張してい
る。


PCR検査の問題点を指摘する研究者は、ほかにも少なくない。

 たとえば、臨床医である国立大学病院の内科系教授は、PCR検
査では遺伝子配列の2カ所だけ同じなら陽性になるので、何年も前か
ら日本に存在して風邪の原因になってきた別のコロナウイルス(土
着コロナ)でも陽性になると指摘する(『土着コロナにも陽性反応
か~現状はPCR検査がもたらした混乱…?~ある現場臨床医から
の声』)。

 その結果、真の意味での感染者である「新型コロナウイルスによ
る重症の肺炎患者」だけでなく、(1)土着コロナによる風邪の患者
、(2)土着コロナの保有者、(3)新型コロナ以外が原因の肺炎患
者で、土着コロナの保有者まで「新型コロナの感染者」になってし
まうというのだ。

 この教授は、PCR検査は「微量であっても存在するDNAを検
出する方法」であって、「ウイルスを疫学的に検出する方法」では
ないとし、世界がいま初めて経験しているのは、「新型コロナウイ
ルスの脅威」ではなく「PCR検査を大規模に疫学調査(集団を対
象に病気の頻度や特徴を調べること)に使う恐ろしさ」だと書いて
いる。

 このような意見については「誤り」「不正確」とする研究者もい
る。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会(尾身茂会長)は
きちんと説明すべきだろう。

(ジャーナリスト 岡田幹治)