さて、前回は院入試の大まかな流れを説明しましたが、今回は私が実際に経験した院入試の様子と、それに伴うアドバイスを書いていきたいと思います。
タイムラインは前回の記事と同じ様式です。
まず、出願校一覧からです。
3年後半になって、それまでは物理科に進学しようと思っていたのですが、数学も楽しくなり始め、院の進路に迷うようになりました。
そこで、物理科と数学科の両方を併願することにしました。
ちなみに、先輩の中には化学と物理を併願する人もいましたし、応用数学とコンピュータサイエンスを併願する人もちらほらみかけるので、併願はできないことはないです。
ただ、ほとんどの大学院で一年につき一学科しか受験できないので、その分リスクも大きくなります。
合格・不合格・通知なし
物理(理論・物性物理)
・Perimeter Institute (Master's)
・Harvard University
・Princeton University
・California Institute of Technology
・University of California, Berkeley
・University of California, Santa Barbara
・University of Colorado, Boulder
(下三校公立)
数学(純粋数学・幾何)
・Harvard University
・Stanford University
・Columbia University
・Northwestern University
・Stony Brook University
・University of California, Los Angeles
(下二校公立)
【出願まで(〜8月)】
まず、4月に受験した Physics GRE で 930/990 (88 percentile) のスコアを取りました。
試験自体は計算の速い私でも結構時間がなくなり、最後は適当に選択肢を塗りつぶしてました。
この時点で、もう一度Physics GRE を取ることはないだろうなと思いました。
そして、10月に Mathematics GRE を受験することに。
860/990 (87 percentile) という、個人的にはそこそこの成績を収めることができました。
ただ安全圏と言われる 90 percentile には少し届かなかったのが小さな不安の種にもなりました。
また11月あたりに General GREを受験しましたが、全く勉強する暇が取れず、ほぼぶっつけ本番。
Verbal 156/170 (73 percentile)
Math 170/170 (96 percentile)
Writing 3.5/6.0 (39 percentile)
という、数学以外は惨敗な数字を叩き出してしまいました。
これで私は結構情緒不安定に。
ただ、自分の英語力と残された時間じゃあ Verbal と Writing をいい成績まで上げることはできないだろうと踏み、この成績で受験に挑むことにしました。
結果論で言えば、この点数じゃ予想もできなかったようないい大学に入ることができたので、まあ他にプラスになる要素があれば Verbal と Writing はそこまで影響がなかったのかなと思います。
ただ、結果論なので。真に受けないでください。
アドバイス:後の精神衛生のために、ちゃんとGREに取り組もう。
【出願準備(9月〜12月)】
さて、9月ごろから本格的に出願に手をつけ始めました。
前回の記事でも書きましたが、この時期で特に重要なのは
・推薦書
・エッセイ
そして、余裕があれば
・興味のある教授へのコンタクト
をすべきです。
まず推薦書から。
私の場合、物理科と数学科の両方を受ける予定だったので、推薦書をもらう先生もその二つの受験である程度分けることにしました。
経歴から言うと、
・化学で2年ほど量子計算化学の研究
・物理で2年ほど理論物性物理の研究(2テーマほど)
そして数学に関しては、Reading Courseという自主的ゼミを教授と一対一でやっていました。
そのため、推薦書をもらう候補としては、有力な順に
・物理の研究の教授
・数学のゼミの教授
・化学の研究の教授(もう関わりが少ないので
・化学のアカデミックアドバイザー(4年間私がとった授業を承認してくれている、私に対しての評価がとても高い)
といった感じでした。
そこで私は
物理:
・物理研究の教授
・数学ゼミの教授
・化学のアドバイザー
(オプションで化学の研究の教授)
数学:
・数学ゼミの教授
・数学授業の教授
・物理研究の教授
から推薦書をもらうことにしました。
ちなみに、数学科を受験する際のワークショップで他の大学の教授に意見を聞いたところ、数学科に関しては数学科の先生から推薦書をもらった方がいいと言われたので、レビュー論文を書いたりプレゼンをしたりする数学でのコミュニケーションに焦点を当てた授業を教えていた、当時はポスドクの先生から推薦書をもらうことにしました。
今でこそ他の大学で Assistant Professor のポジションについていますが、当時は他の教授と比べたら無名と言っても仕方ないほどでしたが、自分が数学のペーパーを書けることの保証になると思ったので、その先生を選びました。
次にエッセイについてです。
大学院受験では、エッセイは Personal Statement か Statement of Purpose と呼ばれています。
主な趣旨として、推薦書やGPAなどでは測れない、個人の背景や研究についての意欲を主張する場となっています。
Statement of Purposeは、学部のエッセイと比べて能力重視です。
私が Statement of Purpose に取り組んだ時は、
・背景(なぜその学問に興味を持ったのか):20~40%
・研究などへの意欲と成果:40~60%
・興味のある教授へのアピール:10%
・その大学院へのアピール:0~10%
を目安に文字数を配分していきました。
私の場合、最初は化学科に入る予定で入学したので、その辺の経緯も詳しく説明しました。
そのため、背景が Statement of Purposeの 割ほど占めることになりました。
最後に、興味のある教授へのコンタクトについてです。
これは、自分が一緒に働きたい教授をもっと良く知るきっかけになります。
また、その教授が近い将来生徒をとる予定かどうかを聞くことで、自分が合格して入学してもその教授の元で学べない、などという事態を回避することができます。
なお、教授たちは忙しいので、メールしても返ってこないことが大半です。
Don't take it personally ですね。
ぶっちゃけ合否に関わるとは言い難いですが、やっておくことでマイナスになるようなことはないので、余裕のある方は教授にどんどんコンタクトしていきましょう。
【出願・面接(12〜1月)】
そして、実際に出願が始まります。
私が受けた大学院は、全てオンラインでの出願でした。
10月半ば頃からフォームがオープンされ始め、通常11月から翌年1月までに出願することになっています。
大学院によって出願のサイトや使っているソフトが違うので、パスワード管理など徹底しましょう。
なお、期限よりも早い時期に出願してもいいですが、一度出願すると取り消せなくなるので注意しましょう。
出願に書く内容としては、大学院にもよりますが、
・個人情報
・出願する学科の選択
・学部の大学の情報(GPAなど)
・受講した授業一覧
・推薦者一覧(大学側がここに記載されたメールアドレスに推薦書をアップロードするリンクを送る)
・就職歴
・テストの点数
・成績証明書のコピー
・Statement of Purpose / Personal Statement
・Curriculum Vitae / Resume
・補足資料
を記入・アップロードし、出願料を払いました。
例えば、Harvard だと Harvard 専用の以下のサイトで出願したり、
Princeton や Caltech などは ApplyWeb といった共通のシステムを使って出願したりしました。
(出願サイトの例)
面接に関しては、普通物理科や数学科ではほぼありませんが、私が受けた Perimeter Scholars International という物理の1年間の修士プログラムで一つオンライン面接を受けることになりました。
私は上の代から面接はないものだと聞かされていたので、面接の連絡が入った時はめっちゃ不安でした。
実際の面接は、
・自分が好きな分野について3分で説明
・教授からの学術的な口頭質問(20分)
・なぜこのプログラムに入りたいのかの説明
・受験者から教授への質問
と言った感じで進行していきました。
この時、3個ほどされた学術的な質問のうち一つに少し戸惑ってしまったので、手応えは微妙でしたが、プログラムに関しての意欲などはそれなりの理由を述べることができたので、まずまずの出来でした。
【合否通知(1〜3月)】
さて、私は12月中旬にほぼ全ての出願を終えました。
残るは、合否通知を待つだけです。
しかし実は、上に述べた Perimeter Scholars International のプログラムの出願は10月末だったのですが、その面接が12月上旬にあり、そしてなんと12がつ半ばに合格をもらうことができました!
ただ、厳しいことに、二週間以内に入学の是非の返事をしなくてはいけないとも言われました。
たった今他の大学院に出願したばかりなのに......。
二週間めちゃくちゃ悩みました。
否定的な意見・肯定的な意見を様々な人からもらいました。
その一方、この頃私は数学の博士課程に進みたい意欲がどんどん高まってきていました。
しかし、今まで物理の研究しかしてこなく、実際に数学の学力は数学一本でやってきた人たちより格下でしょう。
数学科全落ちも避けられないかもしれない。
そこでこの Perimeter Scholars International への合格は朗報でした。
もし今年数学科に全落ちしても、この修士プログラムに行っている間に再受験すればいい。
本来、再受験する際は1年間ブランクが空いてしまい、大学院側に悪印象なのですが、このプログラムに入ればそのブランクなしで(修士課程に所属しているため)再受験することができるのです。
また、正直4年間ずっとマラソンをしてきたようなものなので、次の5年間またマラソンし続ける気力が残っていないのもありました。
そして、合否通知から10日後、私は Perimeter Scholars International への入学を決めました。
とは言ったものの、数週間前に他の大学院に出願したわけで。
出願料は全て払ってしまったため、合否通知を待つことにしました。
ここで周りから聞いたのが、「合格しても入学まで1年間ギャップイヤーをもらうことができる」ということです。
友達にもギャップイヤーを取る前提で受験している子もいたので、もしどこかいいところに受かったら、ギャップイヤーをとってその間に Perimeter Scholars International に行けばいいかなと考え始めていました。
さて、時は1月末。
昔いた化学科の友達はバンバン合格をもらっている中、私の方はプログラムから音沙汰もありませんでした。
もはや、Stanford なんかは、送ったはずの成績書が届いていないと出願フォームに記載され、問い合わせのメールをするも全く返信が来ず。
Stanford は第一志望でもあったので、絶望のどん底に落ちていました。
実は大学院受験には、
The Grad Cafe (https://www.thegradcafe.com/)
という、とても精神衛生に悪いサイトがあります。
というのも、このサイトでは、受験者で合否通知などをもらった人が、受けた学科・通知の日時・合否などを載せていくのです。
同じ学科受験者が合否をもらったかどうかがわかるサイトです。
つまり、「他の人が合格をもらっているのに自分には全く連絡が来ない」という状況が分かるのです。
前にも説明しました通り、アメリカの大学院受験は基本受かった順に合格通知が来ます。
周りも全く音沙汰がないのなら希望はありますが、周りが受かっている中で自分がまだ受かっていないということは、合格する確率がどんどん低くなっていることに値するのです。
1月末はそこまで合格は出ないのですが、それでも数学科の早いところは通知が出始める頃なので、このサイトを毎日確認しながらそわそわしていました。
そして、1月28日。
数学科で受けた Northwestern University から、電話がしたいというメールが届きました。
一緒に受験した友達も同じような連絡をもらっていて合格通知だったとのことで、ワクワクしながら教授に電話。
合格をもらうことができました!
正直、数学科で受けた院は手応えがないと思っていたので、めちゃくちゃ嬉しかったです。
自分を認められた感じがしました。
続いて2月。
物理で受験した University of Coloardo, Boulder からウェブサイトで合格通知が。
友達とラーメンを食べている時に判明しました。
ここは滑り止め感覚で受けていたので、踊り出すほどではないですが、それでもほっとしました。
(合格通知の例)
その後、他の大学院からも合格通知が。
残念なことに、Harvard を含めた複数の大学院には不合格となりました。
正直物理で Harvard に落ちるとは思っていなかったのですが、 Harvard にいる上級生の話によると、今年は理論物性の生徒をあまり取らなかったそうです(上の学年でMITから3-4人理論物性にいったからでしょうか)。
(不合格通知の例)
ちなみに、UCLAからはいまだに(7月現在)合否通知が来ていません。
金取ったならその通知くらい送ってくれって感じですよね😠
【オープンハウス(3〜4月)】
合格が揃い始めたところで、オープンハウスです。
今年は新型コロナウイルスの影響で、私が参加する予定だったオープンハウスは全てキャンセルかオンラインとなりました。
オープンハウスは、その学科や環境の色が出ていて興味深かったです。
例えば、Princetonの物理科は、一見オープンな感じですが、生徒たちはほぼ白人で、オープンハウスに参加するだけで少し居心地が悪くなりました。
逆にStony Brookというニューヨークの公立大学の数学科は、アジア系の学生が多く、また他の大学と比べて大学からの経済支援が乏しいため、生活苦といった感じが滲み出ていました。
更に、オープンハウスでは教授と話すことができるのですが、これもとても面白かったです。
めちゃくちゃ話したがりやな先生がいたり(こちらとしてはありがたい)、逆に沈黙が続いてすぐ会話が終わるような先生もいたりしました。
自分が知らない分野について解説してくれる先生もいたりして、有意義な時間を過ごせました。
ところで、オープンハウスですべきことは、「合格した他の大学院に関する意見を聞くこと」です。
プログラム側としては、自分たちが欲しいと思って合格通知を出した人材をなるべく自分のプログラムに取り入れたいと思っているのですが、ここで、具体的に敵対する他の大学院の名前を出して、相手のことをどう思うかを聞くと、とても面白いです。
実験屋はまた違うかもしれませんが、理論屋に関しては、特に教授陣は生徒のためを思って発言してくれることが多いので、他のプログラム候補が自分のところより良さそうであれば、そう提言してくれます。
例えば、私が Northwestern の教授と話した時に、「もし Stanford に受かったのなら迷わずそっちに行け」と背中を押してくれたり(この時は受かっていませんが)、「学問的にはうちよりも Stony Brook の方があなたに合っているだろうけれど、過ごす環境としては Northwestern がおすすめだよ」と言ってくれたりしました。
こうしてオープンハウスに参加する中で、自分の中では数学科の Stony Brook University に惹かれていきました。
Stony Brook は、マンハッタンから電車で2時間くらいのところにある、公立大学です。
Simons Center for Geometry and Physicsが隣接しており、物理と数学が融合している、私にとても合っている大学院です。
生徒たちもめちゃくちゃ Stony Brook に満足しているようで、PhDを過ごすには良さそうな環境でした。
しかし、上に述べたように大学院からの経済的支援がとても乏しく(年間 $20,000 ほど)、反対に家賃は高いため(給料の半分を占めるらしい)、夏の間は専ら働かなくてはいけないらしく、学問に集中できるか微妙なところでもありました。
逆に、Northwesternは年間 $40,000 ほど、しかも夏期間の給料も保証されていて、勉強するには全く問題ない環境が整っていました。
しかし、学科自体が小さいため、教授の興味と自分の興味がバッチリ一致するわけではありませんでした。
学問をとるか、生活環境をとるか。
時は4月上旬。二週間後には全ての大学院に入学の是非の連絡を入れなくてはいけません。
こう悩んでいる中、一通メールが届きました。
成績証明書が届いていない件で何の返信もくれなかった Stanford からです。
「 Waitlist を作る予定だけど、まだうちのプログラムに興味はあるかい?」
とのことでした。
そもそも第一志望だったので、すぐさまYesと返信をしました。
すると、4月3日頃になって、
なんと!
Waitlist から合格させてもらえました!
Waitlist からの合格者は、私が最後だったそうです笑
そもそも、Harvard や Columbia など、
この後、急遽個別に教授や大学院生と連絡を取り合って Zoom で学科の様子などを聞くことができました。
もともと一番行きたかったプログラム。
そして、給料も年間 $40,000 ほどもらえ、学科は小さいながら教授陣の興味はドンピシャで一緒なので、 Stanford に進学することを決めました。
半年間かかった大学院受験。
それは日本のような一発試験のストレスとはまた違った、自分の人生を何回も考え直すような慢性的な不安・緊張感でいっぱいでした。
結果的に、自分が一番望んだ方向に進むことができてよかったです。
同じMIT生の様子を見ていると、理論物理ではほとんどが苦戦していて、二校から合格が来ればいい方、と言った感じでした。
全落ちの人もちらほらみかけました。
逆に、化学や実験物理ではほとんどの人が圧勝していました。
理論屋としてやってくる留学生が競争率を上げているのでしょうか。
MITの名があっても苦戦するほどなので、特に理論屋として大学院受験に臨む人は自分の能力を過信せず、滑り止めから Dream School まで満遍なく受けましょう。




