E安藤スタイル(シニシズム)
問題提起…シニシズムとは、世界はどうにもならないと、悲観的になり世の中を冷笑する立場と、そうではなくて社会を良くする方向に向けていこうとする活動とに分かれているといわれる。複雑な人間関係の改善にこれを用いることは現代性である家族の多様化と古代性である雄弁術つまりレトリックが投げかけるのは、例えば会社の管理職などの救済措置とは異なり、人間のすばらしさや良い社会の実現に向けた問いを。
建築にどう落とし込むか…広島は市内中心部でも土地価はそんなびっくりするくらい高くはないのだけれど、ビルと隣の建物の間など住宅が建つのだろうかといった変な間にもし建てたらどうなるか。答えはもちろん前向きにYESだけれども、1LDKを50㎡で計画しバルコニーを広々とさせる一方で、近隣から見え隠れする曖昧な庇を設けた。延床面積の小ささの一方で、快適なバルコニーの広さの両義性をもつ。
どうつなげていくか…いわゆる豊かな建築の内外の関係とは一般的な住宅街では無理なので、都市に猫の額でも良いから小さくても自分の家が欲しいとの夢をかなえる、ハウスメーカー/工務店/アトリエ事務所 およそ孤立した感覚作用をもつにすぎないほかのすべての感覚を共通の世界に適合させていたものである。ところがこの共通感覚が、いまや、世界と何も関係のない内部能力になったのである(ハンナ・アーレント)。一神教は、以前は人々のコミュニティの場であったが、科学的客観性の発達した今では差別の対象にもなるような、変わってしまったのである。
共通感覚は古代のものとは異なり現代では単に内的感覚なのでこのことは様々な問題を生み出す。この内的・精神的秩序が規範や範型として客観化され、取り出されたもの、それが、あるいは<型>といわれ、あるいは<様式>と呼ばれるものにほかならない。シンプルな箱のモダニズムとして本住宅は建つ。共通感覚が働くことは変わらないでいるのである。



